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走る

作者: 雪猫
掲載日:2026/09/22


チーターは地平線の彼方へ目を向けた


100m5秒95


世界一の壁の向こうを見つめていた



2012年に記録された世界一の記録


それを初めて知った時


驚嘆と共に、胸の高鳴りを覚えた


いつか、その先へ


子どもだったチーターは


夢の中で誰よりも速い自分を夢見た



チーターは自身を鍛え上げ


仲間の全力疾走の限界が500mであるのを


大幅に超え、1km全力で走り続けられる体力を得た



現在の速度は100m6.8秒


まだ遠い


チーター自身の身体能力的には


5秒95の壁を超えるのは可能のように思える


トップスピードは100m3.2秒なのだから


スタートから2秒で時速70kmに達するのが


動物界の中で驚異的だとしても、


それをさらに短縮し、0.1秒でも早く


トップスピードに到達することが出来れば


理論上、さらに速くなることは可能なはずだ



来る日も来る日もスタートを練習した



「それに何の意味があるんだ?」


仲間が尋ねる


その答えはまだ自分の中にはなかった


でも、走るのを止めなかった



日頃からなぜか目の敵にしてきた同族達が


囲み、本気で脚を食い千切ろうと、襲ってきた



囲みの隙間を縫って走った


鍛え方が違う


追いつける者は誰もいなかった




晴れた日だった


100m先に木があった


息を大きく吸い込み、止めた



走った



全てが後方へ飛んで行く



太陽が眩しく顔を照らす



目指す木の


葉の一枚一枚が、夢のようにあまりにもゆっくりと


風で揺れていた




その時、知った



「意味があるから走るんじゃない



今、ここで


意味が生まれるんだ」





木を越えた




100m5秒94





止まり


後ろを振り返ると


太陽の光で


来た道が、眩しく輝いていた






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