白く揺れる死神
私は、「筒」だった。
ただ――満たされるための形だけを持つ器。
「この死神が……、地獄に堕ちやがれ」
「あら。口が悪いわね」
「でも、"堕ちる"のは貴方の方よ」
私は裏切り者に、筒を向けた。
「■■■■■」
彼は薄汚い言葉を吐き捨て、私を罵った。
それが、最後の声だった。
筒が少しだけ、色を帯びた。
"私の万華鏡"は、断面を切り取るためのものじゃない。
彼に歯向かうモノを閉じ込め、
断罪する為の檻。
皮肉な話だ。
私の心の形は、それだった。私が最も忌み嫌った言葉は、今では私を肯定し、彼の求める形として、顕現していた。
悪が悪を裁く、歪な循環。
私はもう、違和感を覚えることすらできない。
「よくやった」
背後から、彼の声。
そして、そっと抱きしめられる。
都合のいい男だ。
私を労わっているわけじゃない。
便利な「道具」として、見ているだけだ。
無垢な恋に溺れた時期も、確かにあった。
でも、この男は明確な悪だ。
少なくとも、
私の人生を狂わせたのは、間違いなく彼だった。
殺してやろうと、
何度思ったか分からない。
……でも。
白い影が、ゆらりと揺れていた。
古い木が軋む音が、規則正しく続いていた。
いつまでも、同じリズムで。
それでも。
私に理由を問わず、存在を許してくれたのは、彼だけだった。
あの日の涙は、
もう、私の身体の奥に――溶けたのだ。
あぁ……、私は幸せだ。
ここから出たいなんて、もう思わない。
星になれずとも。
その日まで。
ギシッ……
私が人の姿を保てているのは、偶然じゃない。
ここに来て、器が、満ちたのだ。
私は、心を持たない空洞だった。
触れられるたび、
満たされるふりをするだけの存在。
でも今は違う。
筒が満ちる。
彼に満たされる。
そして私は、
彼の器となる。
それだけで、いい。
私の名は、ラナ・ルーヴァ。
偽りの星。




