霧野カナタ
万華鏡の城が、崩れていく。
カナタは城の外で、それを見守っていた。
「……ねこのけんしさん!!」
「ああ」
「あの人たちは――?」
彼は静かに首を振った。
「どの道、ここが消えれば」
「そう、なんだ……」
カナタはそっと、視線を伏せた。
「……どうやって、私を助けに?」
「ボクじゃないよ」
「え?」
「だれかの心が、ボクを呼んだ」
その時。
カナタは口を抑えた。
見えてはならない、何かが見えていた。
「これからも、ボクは君の心の中に。——そして、見守ってくれるはずさ」
それが最後だった。
気づくと、夕暮れの石段に、カナタはいた。
「……父さん……」
涙が溢れる。
喉を鳴らして、あの猫がすり寄って来た。
カナタは、
彼をそっと抱きしめた。
しばらくして。
校内、下駄箱前。
「おはよ!」
「いっ……!?き、霧野?」
「霧野が挨拶してきたぜ……」
「あぁ。俺ら、幻でも見てるのか?」
「にしても……いや」
「だな」
彼らは照れくさそうに、顔を見合った。
***
石段を登りながら。
スカートが風を含み、一歩、また一歩。
息を吸って、吐く。
鞄の黒猫と白い兎のキーホルダーが
小さく音を立てていた。
「……ありがとう」
黒い髪が、風になびく。
遠くには、朱に染まる海が広がっていた。
万華鏡は、明日を映さない。
でも、私は、歩いていける。
きっと、一人じゃないから——
少女の笑顔が、夕陽に咲いていた。
「ふにゃー」




