弱虫のヒーロー
どこを見ても光が見えない。真っ暗な世界で私は息をして「助けて」と失いそうな声を微かにあげる。
でも、その私の心の声は誰にも届かない。口に出したくても出せない言葉。言わないと伝わらない厳しい世界。過去のトラウマを忘れることも出来ないまま、希望のある未来を想像出来ずに、ため息ばかりついてしまう。
今の私にとってこの世界は、怖くて仕方がなかった。けれど、こんな私でも唯一、少しだけ自信を持てたのが好きなことだった。
イラストを描いているときは集中できて、調子が良いとスラスラ描けて楽しかった。本を読んでいる時は、静かな気持ちで読んでいると、落ち着くことができるし、本の世界に入り込めて、色々な話があって面白い。この二つのことだけは、自信を持てた。
その自信も周りの目や言葉を気にしていたら、いつかは消えてしまうかもしれない。そんなネガティブな事ばかり考えている私に彼は優しさをくれた。




