話し合いの始まり
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「僕の不徳により君を傷つけた。……申開きもない、シャルロット」
「殿下……お顔をお上げください……」
あれから数時間。殿下と私が落ち着くまで時間を置いたの。
と言うか、私は落ち着くどころか身繕いに走り回ったわ。
家でも遜色ない、でもキチンとして気品のあるドレス……家なら兎も角、旅先にそんなもの持ってきてないってのよ!
「あああどうしましょう。傷心旅行と言いながら、浮かれたバカンスドレスしか持ってきてないわ……。きちんと感が死んでいるじゃないの……。何なのこの派手などぎつい花柄……!」
「こ、交易都市に来られる方は、バカンス目的も多いですから……間違いではないですよ?」
因みにさっき殿下の前に出た時には、古着でしょ。一番地味なのは此処に来て衝動買いした惣菜を挟んだパン柄刺繍ドレスかしら。凄く大きなフルーツ柄染めドレスは滅茶苦茶明るい黄色とオレンジだし……。
古着は緩くて大変着心地が良かったのだけれど……こ、侯爵令嬢としての威厳は……ゼロよね。
「落ち着いた色が、全くないわあっ!」
「はわわ、シャルロット様は顔立ちがはっきりされてるから、華やかな南国のお色味がお似合いですよお……」
「殿下もドレスなんて見ておられませんよ」
「ナキア!」
……とまあ、熟考の上……一番地味なパン柄ドレスで、殿下を再度お迎えしたのよ。
……ジェイルはボロボロになっていたわね。後で慰労金でも考えなきゃかしら。しかし、今の落ち着かれた何時もの殿下の仕業だとはとても思えない……。でもこのパン柄、可愛いわよね。
「本当に申し訳ない」
「ですが殿下は……あの……」
……ナキアの視線が痛い……。堂々巡りよね。でも、どう言えばいいのかしら……。
殿下の行いのせいで、傷付きました、と……言っていいものなのかしら? 侯爵令嬢ともあろうものがどーんと構えていなかった、狭量ではなくて?
「あの……畏れながら申し上げます。
先程から、私が同席させて頂いて宜しいんでしょうか……」
因みに、私の心の清涼剤としてメロ嬢に手を繋いで貰っていたのよね……。可憐な声だわ……。私もこんなに可愛らしいなら……。いや、それでも婚約者には恵まれなかったものね……。上手く行かないものよね……。
「……君は?」
「さっきも説明したでしょーが、フォーセット。
チッチャー男爵令嬢メェロリー嬢。シャルロットお嬢様の此方で得られた得難いお友達」
「うっ……。私のせいで、王都では遠巻きにされていたものな……」
「そんな……。私にお友達が居なかったのは、その……殿下のせいでは……」
……確かに、王子殿下の婚約者ってだけで避けられた空気も有ったけれど……。単に私の気性のせいも有るような無いような……。駄目だわ、滅茶苦茶マイナス思考に陥ってくる……。眼の前に殿下が居られるのに……。
「丁度いい。君も聞いてくれ。私の過ちを」
「はわっ!?」
「おい、フォーセット。他人様を巻き込むのは宜しくないでしょーが」
「お、お聞きしても宜しいのでしょうか……? シャルロット様?」
「お、お聞きしてくれるかしら……」
「は、はい……」
お話を、お聞きして。心を整理しなきゃ。
そして、殿下への気持ちを……。
「我が国に以前から成人前の教育機関を設立する話があったんだが、この前設立をしたのだ」
「はわわ……」
「1年だけ、私も様子見で通うことになり……其処で勉学に励むことになったのだが奇妙なことが起こり始めてな。シャルロットとの交流が緩やかに遮断され始めたのだ」
「緩やかに、遮断ですか」
「え?」
緩やかに、遮断?
殿下がお忙しくて、学友との交友に重きを置かれた訳では無かったの?
パン柄ドレスは食事系パン柄系です。それでもシリアスめに進んでおります。




