白昼夢を疑って
お読み頂き有難う御座います。
眼の前の光景は……何?
確かに……殿下は偶には嫉妬してくれないかなー。クールさも素敵だけど……なんて思いもしたけれど。でも、冷静沈着な殿下がデフォルトでええと……本当に、これは本物の光景?
「ちょ、フォーセット! 兎に角、今はお嬢様も動揺してるから」
「嫌だ嫌だ嫌だああっ! シャルロットに捨てられたら僕は死ぬううう!」
……な、なにこれ……。
何故、私は……フォーセット殿下に縋りつかれて号泣されているの……。引っ張られる腕やら服やらの感覚が滅茶苦茶リアルだわ。
え。夢? 都合のいいように見せられた、夢……?
「おお、神よ……。わたくし、今即座に死んでも良くてよ……」
「うわああ! 死なないでくれえええ! 僕が不注意だったあああ!」
「落ち着きなさいませ!」
「はわわあ……」
もうね……。
夢とはいえ、こんな大騒ぎ経験したことが……有るような無いような。
「国でも有数の高貴な殿下と侯爵令嬢でしょう! お気を確かに!」
「知ったことかあああ! シャルロット、この愚かな僕を思う存分罵ってくれ! あんな痴女を寄せ付けた下々の下賤とか! 下劣な外道とか! 僕の処理を命じてくれ!」
「いや殿下……罵り文句が何時も通り過ぎる。フォーセット!」
「いやだわ、殿下がそんなことを仰る都合のいい空耳が……」
「ほらお嬢様が現実逃避してる! だから、素を見せろとあれ程!」
ああ、こういう時に失神したいわ……。最近めっきり丈夫な己が憎い……。
いえ、夢だったかしら。きっとそうよね……。
「はわわ……。か、隔離しましょう……。兎に角、お二方を落ち着かせることが肝要です!」
「ナイスアイデアです、メロ様。殿下は任せましたよジェイル」
「ええー!? 何で殿下に誰も付いてきて無いんだよ!? 役立たずの護衛騎士どもとメイカはどうしたよ!?」
あ、メイカは殿下の侍女でジェイルの妹よ。あの子、おとなしいけどズケズケしてるのよねえ。何時も付き添ってるけど、何処行ったのかしら。
……リアルねえ。
「シャルロット、君の赦しと哀れを乞う為なら何でもするからなあああ!!」
「煩えええ!」
……大きい声の白昼夢だったわ。
あら、カーテンが揺れてる……。海風が吹き始めたのね……。
「お嬢様、いい加減現実逃避はお止めください」
「はっ、お手紙が届いたんだったわね……。後、プヨンプヨンした袋!」
「そ、其処から逃避してらしたんですね……」
「恐らく、脳が処理を拒否したのでしょう。先程のお姿は近来稀な迄に見苦しかったですからね」
「殿下は見苦しくなんて無いわ!
……あら?」
……え。
この、ナキアとメロ嬢の気の毒そうな顔……。
「今、殿下は……本当に、いらしたの?」
「ええ、いらっしゃいました」
「……私、普段着だったわよ」
しかも、今日は屋敷から出るつもり無かったから、ちょっと古い楽々なドレス……。
「何時も、す、素敵な普段着ですよ?」
「いやああ……!!」
「ああ、本当に似通った婚約者同士ですね……」
何処が似通ってるのよ!?
で、でも……あの狼狽えていた方が本当に、殿下なの……?
そっくりさんを派遣されたのでは……。いや、何の為に……。
フォーセット殿下、実はこんな感じの人です。シャルロットもですが、滅茶苦茶猫を被ってました。




