特に忍べてはいなかった
お読み頂き有難う御座います。
「えーと、仕切り直しますけど……フォーセット殿下がお嬢様の婚約者なんですけど、15歳にして浮気未遂? をしてしまいました」
「説明が雑よ!」
何なのよその適当な説明!
ジェイルは、本当に殿下に関してはやる気なさすぎよ! あんな素敵殿下に何の恨みが有るって言うのよ!
「う、浮気未遂!? こんなにキレイなシャルロット様を差し置いて、殿下は別のご婦人に愛を囁いたのですか!?」
「ほら、メロ嬢は寄り添ってくれてるわ! ジェイルには優しさが足りないのよ!」
「いや、シチュエーションからしてどっちもどっちじゃないですか……」
「傷付いたシャルロット様に酷いですよ、ジェイルさん!
お労しいシャルロット様! どんな酷いことをされたんですか!?」
「ほっらぁ!」
「お嬢様が調子に乗りますので、あまり煽らないでください、メロ様」
「ええっ!? あ、煽ってますか……?」
「直ぐにヒートアップなさるところが、お嬢様の良くも悪くもあるところで御座います」
ぐぅっ……。確かに、少し情熱的では有るけれど……。でも、高位貴族として舐められてはいけないっていうか!
「ですけど、激しやすいお嬢様が何で殿下に関しては、『浮気しただろ誠意見せろ』って乗り込まなかったんですかね」
「ふぇっ、それではチンピラではないですか!?」
「別の方には別件で乗り込みをされています」
「はわ……」
「ウチの妹のドレスをわざと踏んで転がせた挙げ句、笑い者にした輩が居たのよ!」
「そ、それは怒りますよ!」
「ですけど、結局相手は滅茶苦茶没落されましたし……相手方って伯爵から騎士爵になったんでしたっけ?」
「躾のなってない輩を放し飼いにしているからよ!」
「はわ……」
ひ、引かないで……。
「そ、それで……あの。殿下は何の浮気をなさったんですか」
「えーと、密室でお嬢様以外のご令嬢と隣り合っておられた件が15件でしたっけ」
「……それは……」
絶句するわよねえ……。普通に貴族が生活してて、密室に家族婚約者親戚以外と、ふたりきりご一緒しないわよねえ……。
「……ふふ、私なんて殿下と寄り添ったのなんて……5ヶ月も前だと言うのにね」
「め、目が……光を失ってます! しっかりなさってください、シャルロット様!」
「ねえ、メロ嬢……。貴族たる者……いえ、妙齢の婚約者持ちは、他の異性と密室に籠もるべきでは無いわよね……。でも、殿下は勉学の為に学友と……ぐぅっ……」
「ご、護衛は付いておられないのですか?」
「その護衛が積極的にその女を推してると言う話よ……。縛り首にしたいわあ……」
「そんな……」
今、王都ではその件のお話し合いしてる筈じゃないかしら。
「殿下からお手紙は無いんですか?」
「ふふっ、私対外的に行方をくらましてるもの……。届く訳が無いわ……」
「いえ、お嬢様。お嬢様が気楽に名乗られておられますから、かなり漏れております。その証拠に、さっきお手紙が届きました」
「え?」
何でよ。
殿下は、何故私にそんなご対応をしてくださるの……?
どっちかと言うと、温度差有った気がするわあ……。
「先程から合わせて18通届きましたが、如何なさいますか」
「ええ!?」
「お……多っ……!」
い、一体殿下に何が有ったって言うの……。
あの、冷静沈着かつ、ちょっと繊細なところもお有りになる殿下が……。
因みに交易都市トリアイは、王都から1週間程度掛かります。