人は見た目で分からない
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「我がダオ家は……まあ、王都ではそれなりの家なの。以前に王家と交流が有って……」
「あ、新聞で見ました。シャルロット様の婚約者様って第三王子フォーセット殿下ですよね」
ば、バレてる……。言動も見た目もフワフワっとしてるのに、メロ嬢ったらなんてしっかりしているの……。
「……もしかして、皆知ってたの? 皆、私が婚約者から逃げ……身を引いて交易都市トリアイに滞在してるって……。あああ!」
「お嬢様……。そもそも初対面で家名を知られ、お嬢様自身がお名前を名乗られていますので……」
「……ぐぅっ……」
しまったわ、今の悲鳴? は令嬢らしくなかったわね。度重なって浴びた海風で喉を悪くしたかしら。ここ最近滅茶苦茶無風だけど、海があるだけで海風って常に吹いてそうなのだものね。培われた古来よりのイメージだから仕方ないわ。
「それで、シャルロット様と第三王子殿下はどのような仲違いを?」
「な、仲違いっていうか……。あの方は御歳の割に勉学熱心で落ち着いておられて素敵紳士でパーフェクトなプリンスだから、私の一方的なその……」
「シャルロット様……。殿下はそんなアイドルみたいなのじゃない結構し」
「煩いわねジェイル! 身内だからって貶さないで頂戴!」
「えっ……!? ジェイルさんって、王子様の御親戚なんですか!? きゃあいたた!」
あ、しまった。
滅茶苦茶驚いているわね、メロ嬢……。
だけど、驚き方が派手だわ。まさか椅子から飛び上がって足を打つとは……。あ、転げ落ちてるわ。ギャグ芝居以外で椅子から落ちる人初めて見たわね。絨毯が分厚いけど平気なのかしら。
「いやお嬢様……何で関係ないこと言うんです。メロ嬢大丈夫ですか? 驚いたでしょう」
「は、はわわわ……。す、すみません、私ったら、高貴な方に……」
……どうでもいいけれど、ジェイルとメロ嬢ってバランスがいいと言うか、本当に絵になるわね。身長差と性格の朗らかさなのかしら。
そう言えば私と殿下って、並んだら身長差的にもイマイチバランスが……ぐうっ! 私の身長が無駄に高いのが悪いの!? 好きで伸びたんじゃないのよ!
「いや、俺は子爵家の五男なんで。高貴でも何ともないんですけど」
「……いやまあ、隠してはないじゃない。だけど……まあ、悪かったわね」
「お嬢様が外聞の為とはいえ、謝られたことは慶事ですわね」
「ちょっとナキア!」
私が、普段謝りもせずふんぞり返ってるみたいな言い方!
「……コホン、悪かったわね」
「ダオ侯爵家は従者の方まで高貴なんですねえ……。ナキアさんも高貴なオーラ漂ってますし」
「メロ様。私は単なるお嬢様の侍女で、それ以上でも以下でも御座いません。お構いなく」
「はわ……その辺りも高貴です……」
「まあ、調べたら分かることだけど。俺は殿下の滅茶苦茶居る従兄弟のひとりだよ」
「はわわ……。でも、私も従姉妹が8人いて又従姉妹が5人いるので……」
「あ、そっちの方が多いな……。ウチは7人だ……」
何の張り合いなのよ。
「脱線しましたが、フォーセット殿下とお嬢様は婚約者なのです」
「……まあ、家のパワーバランスとかそういうのでね。それで、ええと。殿下は……ジェイル、殿下のプロフィールを!」
「えっ、俺が!?」
「だって、恥ずかしいのよ!
訳知り顔で婚約者……今も婚約者かどうかもう、婚約は破棄の話し合いのテーブルに載ってるかもしれないけれど!」
「……そんな馬鹿な……」
「あの、田舎貴族のウチと違ってシャルロット様のご婚約は色々高貴な方々の思惑と約定の上の婚約ですし、そう簡単に破棄は無いですよ」
ぐうっ、メロ嬢の晴れた空のような青い目の正論眩さが辛いわ!
「……ジェイル、メロ様に殿下のプロフィールのご説明を」
「えーと、フォーセット・ロジェ殿下は現国王陛下の三男で、お嬢様のひとつ下の15歳です」
「えっ、シャルロット様って歳下だったんですね。私、18歳です」
……18歳!! えっ、こんな小柄で若さに溢れる可愛らしいメロ嬢が!?
……歳下だと思っていたわ。黙ってよう。
「えっ……そうなの!? 歳上に偉そうにして悪かったかしら」
「そんな、お友達に年齢は関係ないですよ。それこそ身分の差が凄いのに、シャルロット様は私をお友達にしてくださったのに」
「……ナキア、此処に来て良かったわ……。
……それにしても何で誰もメロ嬢の歳に吃驚していないの? まさか知ってたの?」
「お嬢様のお友達に年齢は関係有りませんが、プロフィールを調べるのは当然かと」
「そ、そうね……」
……見た目では分からないことも多いわねぇ。
もしかして、殿下も……。いえ、殿下はパーフェクトな王子殿下だもの。見たままよね……。
老け顔いえ、歳上に見られがちなシャルロット。幼い……いえ、歳下に見られがちなメロです。