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哀しげに堂々と

お暑い中お読み頂き有難う御座います。


「おいグズメェロリー!」

「酷い、酷いですわターカル様! 私、傷つきましたぁー!」


 よしよし。

 目論見通りに潤んだ目で哀しげに立ち去るメロ嬢に狼狽して、呆然と突っ立っているわね。

 それにしても、あの堂々とした哀しげな演技に相応しくない、間抜けな男ねえ。


 取り敢えず、私達の立てたプランひとつめは、出会って即座に顔を伏せて哀しんだフリで、立ち去る。

 これだけ。

 シンプルよね。あまり複雑にするとやりづらいだろうから簡単にしたのよ。


 まあ、往来でこんな茶番が繰り広げられていたら、何が起こったのかと思うわよね。貴族でも平民でもどんな階級でもゴシップ好きは必ず存在するもの。私もとっても好きいえ、少々興味が有るものね。


 で、この前の理由分からない罵り劇場を観ていた通行人が僅かでもいれば、大体噂をバラ撒いてくれるのよ。

 相手が穏やかに詫びてきたなら次のプランへ移るところだけれど……。


「ふんっ、可愛げのない奴め!」


 何故か悦ってクズ発言をしていたから続行ね。まあ、簡単に詫びる位なら往来でご婦人を罵ったりしないわね。

 でも何故嬉しそうなのよ。罵られたいタイプなのかしら。嫌だわ、かなり歪んだ変な嗜好なのね。


「……あのクズの頭の中、廃棄物なのかしら」

「いやー、自分はご婦人にモテモテだと妄想しているんでしょうねー。

 下級貴族男子でも結構居ますよ、あーゆー勘違いタイプ」


 今回様子見に付いてきたのは、執事見習いのジェイル。子爵令息なのよね。五男だから、行儀見習いに来ていたの。フットワークが軽いからこの引っ越しにも付いてきたのよね。


「高位貴族ならもっと居るわ」

「あはは……。まあ、アレな嗜好は何処にでも居ますからね」

「嫉妬されて悦に入るなんて……気持ち悪いわ」

「お嬢様……」


 嫌だわ、暗い顔をしてたみたい。

 未だ忘れられないのね……。未練がましくも、あの方のことを。


「お嬢様、そんな切ないお顔をなさらないでください。あの方に知られれば、目撃した俺が干す前の布巾みたいに絞られます」

「何を言ってるのよ。あの方は私に嫉妬なさる訳無いわ。何せ、嫉妬がお嫌いなのよ」

「お嬢様、気分転換も程々に。お話し合いは大事ですよ。

 どんな感情でも、相手によって受け取り方が違うんですからね」


 分かっているのよ。

 あの方に相応しくない醜い嫉妬心を抱いてしまったから。

 ご兄弟から受ける醜い嫉妬なんてお嫌いだとあれ程仰っていたのに。苦しんでいらっしゃったのに。

 勉学に励む学友との仲睦まじさに嫉妬して……心折れてしまったって。


「帰りたくない……」

「まあ、殿下も学友ったって油断して、脇が甘かったですけどねえ」

「あの方の悪口を言わないでよ……」


 ああ、海風の前にはこんな悩みなんて吹っ飛ばされると思っていたのに……。雄大な風景に夢見過ぎだったのかしら。絵画に影響され過ぎたわね。でも、確かに海はあの絵よりも広かったわ。引っ越し当初からお天気がイマイチで、あんまり感動的な風景に出会えてないけれど……。


「シャルロットさまぁー、お待たせして……ど、どうされました!? はわっ、すわ反逆ですか!? 何でなんですジェイルさん!」

「どう見てそうなるんだよ!」


 ……メロ嬢が戻ってきたみたい。

 ジェイル相手だとビクビクオドオドしていない、新鮮な感情を出して笑顔も出せるのね。

 羨ましい……。いえ、虐げられていた方に私ったら何てことを思うのかしら。

 だから、あの方に相応しくなくて、そっと疎遠にされるのね……。それとも暇つぶしなんて言って、人の事情に首を突っ込む癖が呆れられたのかしら……。





センチメンタルになりながら、余所の婚約者に嫌がらせに力を注ぐシャルロットでした。

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