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醜い嫉妬は偽物です  作者: 宇和マチカ


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15/15

嫉妬は正しく美しく

お読み頂き有難う御座います。

語り手が変わります。

前回よりかなり暗いです。お気を付けの程を。

 高貴な方のお付きって、同性の事が多い。有事には、何処までもお供することになるから。

 だけど。

 私メイカと兄ジェイルは、異性に仕えることになる。

 逆に有事の際、敵を欺く為。


 ミーナン子爵家の歴史は浅い。前王がバカンスで浮かれた……いえ、落花狼藉の結果の娘が私の母。


 そしてその狼藉者(ぜんおう)の拵えた別の娘、現女王は騎士階級の子息を真実の愛として重用とした。

 第三王子フォーセット様は、隣国より来た王配の息子。それなのに蔑まれて生まれてきた。

 だから、『真の愛騎士製』の兄達に疎まれてくだらない嫌がらせや嫉妬をぶつけられて来たよ。

 殿下は、まあ歪んだんだよね。

 初めて会った時なんて、滅茶苦茶泣き喚いていた。子爵家に滞在して、ちょっと牙を剥くのを隠すようになったくらい。


 見事に歪んだ息子を3人も生産した女王は、国を揺るがすのが趣味かと思う程だったなー。

 あ、勿論今も『真の愛騎士』と、もうすぐ崩れる砂上の城でクルクル踊っているよ。ダンスが趣味なんだって。その割に3種類しか踊れないらしいよ。

 因みに女王の愛する『真の愛騎士』に騎士爵は無いんだって。

筆記試験に3度、実技試験に6度落ちた上に試験官を愚弄して審議拒否を喰らったかららしいよ。詐称だね。


「砂にゴミを被せた城を継ぐ気はないから、シャルロットと暮らす館は新たに建てるしかないな」


 城を出る前に殿下は、派手に改築中の王宮を見て呟いていた。

 殿下を、準備不足でハリボテの学校の監視役として送り出したのも、歪み合う息子達に辟易したからだとか。一応アレでも正統な王位継承権第一位なのに。

 怖いけど、激情と権利はたっぷり持ってるのに。


 ハリボテ学校滞在中の護衛に()()()()()()()、無能、おべっか、パワハラな騎士もどき。それと安っぽい文官。


「庶子子爵の小娘は、すっこんでいろ」


 そう言えば、身分だけのパワハラもどきは聞こえよがしに何か吠えていたかな。

 えーと、1番目か2番目の腰巾着らしいのか何なのかだったと思う。多分1番目と2番目の『真の愛騎士(ちちおや)』の差し金だろう。


「おかしいね……。何かおかしい」

「はっはっは、何がおかしいんですか、殿下」

「いや……なんでもない」


 基本、殿下は猫かぶりが物凄く上手いから、気弱な王子を演じていた。

 笑いを堪えるのが大変だったわ。


「私の行いは本物で正しい美しい想いだ。何故彼女はあんな能無し王子に……」


 愚痴を言うなら、聞こえないように言えっての。

 そんな護衛もどきに教師が何も言わないのは、殿下の差し金。シャルロット様からの手紙が届かないのには、ブチギレていらしたけど。

 護衛もどきのせいで水をかぶる羽目になっても、キレてらっしゃらなかったのに。


 あ、そうだ。

 他所の国の留学生もどきがいたね。

 パワハラもどきが籠絡されてたアレ。


 殿下、シャルロット様と身内以外には滅茶苦茶潔癖症だからなあ。

 手が触れた服は王族にしては安価な物だったけど、焼却処分させてたよ。孤児院に寄付すりゃいいのに、と思ったけどあんな派手な服、生活するのに向かないか。


 ストーカーされてるのを嫌だったってシャルロット様に泣いて言ってたけど。多分、シャルロット様を雑に模倣したような見た目だったから、かなり癇に障ったみたい。


 意図的に弱々しくされてたから、男爵階級の子息に

 義侠心を抱いた者がいて。

 まあ、殿下がそう仕向けたんだけど。

 図書館に騎士を呼んでこさせたのは、護衛もどきが驚いてたなー。

 ごめんなさい、仕込みは私がやりました。

 異性は常にお側にいれないから、常に裏で立ち回ってるんです。


「殿下ぁー。何読んでるんですかあー? お買い物行きませんかあー? あたし、欲しい髪留めが」

「……婚約者でもないのに、近寄らないでくれないか」


 ボソボソ声が怖かったなー。


「え? なに聞こえ……! ごっ……」


 それより、殿下が寄ってきた留学生もどきの喉をブッ叩いて蹴り倒したのが驚いたけど。きれいに飛んだなー。滅茶苦茶イレギュラー過ぎてガチギレじゃん。

 殺すと面倒なんだけどなー。あー、それとあれがぶつかった本が痛むのが申し訳ないかもー。


「殿下! ご、御婦人に対して」

「私は忠告したよ? 婚約者以外の痴れ者は近寄るな。さもなくばどうなってもいいと取るぞ痴女、って」

「で……」


 気弱でボソボソ声の殿下に慣れてるから、混乱してるバカ面が面白かったなー。

 コレでも猫被ったままだって知るべくもないけど。


「君達も私を蔑んでいるんだよね? 私は婚約者からの手紙を楽しみにしていたのに……」

「ちがっ……違います! 殿下への手紙は……そうだ、あの、子爵家の侍女が……なあ」

「えっ、あ……そ、そうです!?」


 文官もちゃんと演技出来てなくて、連携の取れてなさがウケたなあ……。やっぱり、脅しって信頼関係構築に有害だね。いいアドリブ効かせてくれるのって、大体信頼してるからだもん。悪だくみ利用も有るけど。


「嘘を付くな。

全て分かっているぞ神妙にしろ、護衛共!」


 残念でした。

 騎士団と一緒に派手に登場する私は、ちゃーんと殿下に信頼されてるんですー。


 とまあ、大体上手く行ったけど……シャルロット様が失踪してるのが困ったなあ。滅茶苦茶ドン引きレベルで泣き喚いてたんだもん。

 シャルロット様のお父様を筆頭に、居並ぶおエライさんが殿下が心を壊したかって心配する位に。


 でもあの時の殿下のメンタルヤバかったなー。

 説得が失敗した時の心中用に、着火草まで送りつけて。

 本当にフォーセット様は、困った王子様。

 あの後、無事着火草は夕食のパン焼きかまどの焚き付けになりました。……まあ、1週間ずっとパン焼きかまどを燃やしてたけどね。怖いよ殿下。



 で、色々懐かしく思い出した所で。

 ちゃーんとお仕事しなきゃなー。

 しっかし、牢屋って何処でも雰囲気一緒だよね。ジケッとして空気が悪いと言うか。あ、週に1回空っぽになる時に空気の入れ替えするの? それは良いね。

 それでも溜まるんだ。牢番さんって大変だねー。

 此処かー。昨日までは煩かったんだって。元気いっぱいだね。


「あ、いたいた。こんにちはー。ちょっとだけ親愛なる皆さーん。子爵家の小娘が、素敵な未来をお届けに参りました」


 少しだけ蠢く気配がする。

 んん? たすへて? よく聞こえないなー。

 殿下の声も聞こえなかったみたいだし、まあいいか。子爵家の小娘の私が聞いた所で、意味ないしね。


「医療の礎になって貰う、平民の娯楽になって貰う……なんて殿下との穏やかなお話し合いの際色々出ましたけど、温情が出ましたよー」


 やった、助かる……。なんて色々楽しそう。

 元気が出たみたいで、私もとっても嬉しいな。


「厳正なるクジの結果!

 皆さん5人は仲良しなので!

 大河の川砂の中に留学して、異文化交流して貰う事になりましたー」


 勿論、元気に生きたまま。だって死人に留学は出来ないもんね。

 殿下への嫌がらせの為だけに大河の水を態々汲みに行くみたいだし、大河が滅茶苦茶好きなんだろ?

 そんなノリで書いたお兄のアイデアだよ。ナイカのアイデアよりずっと……まあ、おんなじか。


 うん、頑張ってね。

 殿下より真実の愛を選んだ道だもんね。権力ある割に冷遇されてる殿下に女が言い寄るから、本当に嫉妬したんだよね? 本物の嫉妬だー。

 

 


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