味方選びは難しい
お読み頂き有難う御座います。そして誤字報告、誠に有難う御座います!
「僕……私も王族だからな。公務を学ばねばならぬ身の上で、興味のあることだけ学ぶ訳には行かない。それに、婚約者であるシャルロットと疎遠になる可能性も有ったしな」
殿下の素の一人称って、僕なのかしら……。ちょっと幼気も見えて素敵だわ……。
……心から交流出来てなかったのかしら。確かに……私の方も格好を付けて、壁を作っていたのかもしれないわ。
「だが、監査役とはいえ勉学にのめり込めることは魅力的だった。
だから、護衛を厳選して他の生徒達から距離を取って過ごすつもりで入学したのだ」
「はわ、御立派です。勘違いして、殿下に不敬を働く学生も近寄りそうですし」
「そうでしたの……」
私、学生生活イッエーイとは行かないまでも、新天地でドキドキワクワクはっちゃけ生活されてるのかとばかり思っていたわ……。
と言うか、居るのね。そんなお芝居みたいなキャラクターの学生が、存在するとは……。メロ嬢は物識りだわ……。
「そう言えば。交易都市トリアイにも、学校が有るのだな」
「は、はい。私も少しだけ通っておりましたが……。高位貴族の子弟は、不審者が近寄らないよう護衛で身の回りを固められていました」
「私もそうあろうとしたのだが……」
ぐうっ、黒い睫毛を伏せて物憂げな殿下が麗しいわ。こんな表情も初めて見たわね……。
「奇異な学生が留学してきてな」
「出来たばかりの学校にですか? ……どのようなメリットが有って……あ、殿下へのハニトラ……」
「歯に虎?」
強そうね、それ。あ、遠い国に古生獣人がいたとか言うけどそれかしら。
「お嬢様。えーと、正式名称はハニートラップと言いましてね」
「え、まさか殿下は蜂に襲われ……!? ご無事でしたか!?」
「……はわ、ええと……。あの、女性を使った籠絡行為と言いますか……」
「ああ、そんな言い回しをするのね。理解したわ」
王宮でもその手の話はよく聞くわね。
へー、市井ではそういう言い方をするものなの。……それにしても、態々遠国から殿下を籠絡だなんて……。近隣に有能な方が居ないのか、本人が滅茶苦茶ダメなのか……。まあ、両方よねきっと!
「……シャルロットの、その初心なのか世間擦れしているのかそういう所が魅力的だと思う」
「あ、有難う御座います……?」
「で。話がズレましたけど、殿下の前に護衛が籠絡されてしまったんですよね」
「そのようだ……。あれ程真剣に選抜したのに、悔しい限りだが」
……やっぱり、殿下の護衛ともなるとあまり低位の貴族では……みたいな空気が有るからそれなりの身分の子弟だと聞いたけれど。
コネで入った騎士爵持ちのチャランポランな貴族令息、多いものね……。まあ、此処に来てから見た平民にも、チャランポランな方多いみたいだし……。其処は人によるのかもしれないわね。
「3月の5日。それから、その学生による付き纏いが始まったのだ……」
「5ヶ月前ですわね……」
そう言えば、その辺りから殿下とのお手紙や交流が途絶え始めていたわ。
あの時は……寒かったのね。お手紙来ないわー、とか考えつつ呑気にストレッチでもしていた気がするわね。
「ベターリ伯爵令嬢というその女は、私の行く先々に現れた……」
「急にホラー要素入れてくんなよ、フォーセット」
「ホラーではなく、迷惑行為だ」
でも、殿下のお顔は何時も通り苦悩に満ちているわ……。お労しい。とっても迷惑でいらしたのね。
「私は勿論初日から、排除命令を出した。爵位がどうであろうが、婚約者持ちに寄り添う輩に賭ける温情はないからな。
だが、護衛のひとりが厄介だった」
「ソイツのクビを切れば良かったじゃないか……」
「はわ……」
「……派閥の関係で簡単に切れる立場じゃ無かったから、様子見となったのだ……」
成程、様子見……。それで、その隙にベッタリとかいう他国の女が調子に乗ったのね……。
様子見を打ち切るのって、難しいですよね。




