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嫉妬されるような方ではなさそう

お読み頂き有難う御座います。まだまだ暑いですね。

 此処は交易都市トリアイ。

 頬を撫でる海風が気持ちいいわね。

 嘗ては、大国の動乱に何度も巻き込まれ、この海も赤く染まったというけれど……。

 今は平和に交易で財を成している者が多数生まれる、未来溢れる土地に……。


「煩い煩い! コレくらいで何だ! 醜い嫉妬だな!」

「ふ、ふぇぇ……」

「ま、喧しいわ。何かしら、痴話喧嘩かしら」

「お嬢様、身を乗り出さないでください」


 往来で、醜い嫉妬なんてアホなことを醜い顔で罵ってるアホが居たものだから、つい首を突っ込んでしまったわ。

 そもそも、アホが後ろに侍らしてる従者は他人事面して何をやってるの。

 口煩いけれど、ウチの侍女は未だ優秀ね。

 さて、このいい気分を害してくれて、どうしてくれようかしら。


「ねえ、何をしてらっしゃるの。我がお友達」

「ぴえっ!?」


 ま、このお嬢さんの脚力の強いこと。子供の身長くらい飛び上がったわ。どうなっているの。


「な、なん……あっ! ダオ侯爵令嬢!?」


 男の方は私を知っているみたいね。面倒だわ。まあいいかしら。どうせ大したことにはならないでしょうし。小さい内に報告はしておきましょう。


「あら、どちら様? 私のお友達に何か?」

「いえ、その……何でも有りません! おい、グズ」

「グズ?」

「め、メェロリー嬢、私は用事があるからちゃんと反省しておけよ! ダオ候爵令嬢、あの、チッケー河の土木工事の件で」

「この私がお友達と折角お会いしたのよ?

 殿方はご遠慮頂けないのかしら? なんて察しの悪い方」

「はひっ! も、申し訳ありません! ハハッ、ええと……失礼しました!」


 まあ、あの男ってば揉み手しながら後ろに下がっていったわ。変な奴過ぎておもしれー男枠でも狙っているのかしら。同じような顔の従者の顔も覚えておかなきゃね。


「あ、あの……」

「差し出口だったかしら?」


 見れば中々の可愛らしいお嬢さんじゃないの。オレンジの髪に、青い瞳がよく映えているわ。

 今は狼狽えているみたいだけれど。それに、矢鱈古めかしい服が気になるわね。洗いすぎて所々染料がまだらに取れているわ。


「と……とんでもない! あの、ありがとうございます! ダオ侯爵令嬢様! わたし、メェロリー・チッチャーって言います」

「チッチャー男爵のご令嬢ね」

「は、はい……。凄い、ええと。

 ウチみたいな田舎の男爵をご存知だなんて、光栄です」


 ちょっと変わってるけれど中々の礼儀正しいお嬢さんじゃないの。落ち着いていれば、下級貴族らしい慎ましい態度だし。

 さっきの嫉妬嫉妬煩いアホには勿体無いわね。でも、男爵令嬢ならもう少しランクの高いお忍び服を用意出来そうな物だけれど……。

 さっきのアホは、高そうな生地の割に仕立ての粗雑な去年の流行りを着ていたわね。


「お嬢様、そろそろお時間が」

「チェンバロのお稽古? そうだったわね」


 何で王都でも無いのに、チェンバロなんてお稽古する羽目になるのかしら…。もう誰かに聞かせるようなことも無いし、大した腕でも無いのに。


「あの……お引き止めしてすみませんでした。いずれ、御礼にお伺いしても宜しいでしょうか」

「構わなくてよ」

「ありがとうございます!」


 うん、いい暇つぶしが出来そうね。

 最近面白いゴシップが停滞気味だから、思い切って街に出て来て正解だったわ。


「……お嬢様、程々になさいませ。何故此方においでかお分かりに」

「なっていてよ」


 どんな状況でも楽しみたいじゃないの。

 私の名前はシャルロット・マリーザ・ダオ。

 とある事情で、三つの国の国境である交易都市に居る、お忍び令嬢よ。


 此処まで離れていれば、新聞のニュースも半年は遅れているでしょうからね。他国人の私のことなんて誰も気にしないかしら。それは素敵なことよね。



侯爵令嬢シャルロットは、どうやら引っ越してきたばかりのようです。

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