第7話:魔導都市セレオスと、奴隷市場の少女
――魔導都市セレオス。
それは、人間、獣人、魔族までもが共存し、あらゆる魔法技術と商業が交差する巨大な都市国家。
だが、煌びやかな外観の裏には、“闇”が息を潜めていた。
都市の西側――“アンダーベイ”と呼ばれる貧民層と奴隷売買の街。
覚とラーナは、身を隠しつつ、そこへ足を踏み入れていた。
「……気分が悪い。人間が、魂を“物”として扱う場所だ」
ラーナの声は鋭かった。
「……ん?」
覚が足を止める。
何かに導かれるように、視線がある一角の檻へと向かう。
そこにいたのは――
ボロボロの布をまとい、首輪をつけられ、床に膝をついてうつむく一人の少女だった。
年の頃は十歳前後。
金色の髪に、透き通るような碧い瞳。
だがその目には、生気がなかった。
《記憶の共鳴:牙の意識に接続》
……光景が一瞬でフラッシュバックする。
──過去。
牙がまだ“聖騎士団”の一員だった頃。
《村が魔物に襲われているとの報告です!》
《遅すぎたか……! 皆……皆死んでる……!》
焼かれた村。その中に――ただ一人生き残っていた少女。
震えながら、牙のマントを握りしめた。
「お兄ちゃん、置いてかないで……」
——リリィ。
あの時、牙が命を懸けて守った少女。
だが……牙は、その後、任務の圧力で彼女を都市の“孤児院”に預けたまま、再会できなかった。
「……リリィ、だったな。間違いねぇ……!」
覚の声が震える。
「どうする、牙?」
ラーナの問いに、覚は拳を握りしめる。
「決まってる。今度こそ……救う。何があってもだ」
──その瞬間、競売人の声が響き渡る。
「次の出品は! 魔力反応値:上級クラス!
金髪の美少女奴隷! 開始価格は1,000セレドから!!」
ガヤガヤ……と会場がざわめく。
貴族風の男たちが、興奮気味に入札を始めた。
「1200!」「1500!」「2000!!」
覚の拳がプルプルと震えた。
「……金なんか、持ってねぇのに……ッ!」
ラーナが肩に手を置く。
「なら、強行手段しかない。――牙、暴れる?」
「……ああ。誰にも、渡さねぇ」
《スキル発動:鳳凰変生・中位式》
《覚醒率45%を突破。羽根状の炎が展開開始》
炎が、会場に走った。
爆発と共に、壇上が吹き飛ぶ。
人々が逃げ惑う中、覚はリリィのもとに駆け寄る。
「大丈夫か!? リリィ!」
少女の瞳が、震える。
「……っ、牙……お兄……ちゃん?」
再会は、炎の中で。
あの日、守れなかった命を――
今、取り戻すために。