第6話:炎と鉄と、裏切りの再会
「久しぶりだな、牙」
ゴゴゴ……と、大地が鳴るような重厚な足音。
その主、ガレムは身の丈を超える鉄鎧を身に纏い、巨大なウォーハンマーを肩に担いでいた。
「……覚、あいつは何も知らねぇのか」
ガレムは、ラーナを一瞥したのち、冷たく言い放つ。
「牙の中身が“別物”だって、わかってる奴もいるんだよ」
覚の拳が、静かに燃え上がる。
「……だったらどうした?」
「お前が俺の中に牙を感じるなら、それで十分だ」
《スキル共鳴:鳳凰爪牙 × 野生直感(ラーナ由来)》
《複合スキル発動:“爆爪の構え”》
ゴッ!!
爆音とともに、炎を纏った拳が地面を砕く。
その勢いのまま、覚は突っ込んだ。
「ほう……真正面から来るとはなァ!」
ガレムが鉄槌を振りかぶる。
——ガガガッ!!!
拳と鉄槌が激突。周囲の木々が衝撃波で吹き飛ぶ。
覚は飛ばされ、木に背中を打ちつけた。
「く……っ、くそっ……重すぎる……!」
「当たり前だ。これは“オルド鉱鋼製”だ。お前の拳など、通じるかよ!!」
《警告:筋力ステータス差:重大》
《再生スキル自動発動中》
「ちっ……力だけなら確かに、奴のほうが上か……!」
ラーナの声が飛ぶ。
「“重い奴”には、重さで勝とうとするな! 牙!」
覚の目が光る。
「そうか……そういうことか……!」
《スキル再編中:炎属性 → 衝撃分散 → 収束》
《新技構築:鳳凰一閃》
「これは“牙”と“覚”の技だ――!」
――ヒュッ!!
次の瞬間、覚の炎が“消えた”。
ガレムが一瞬、動きを止めた。
「……何だ? 気配が……?」
その時――
「後ろだ」
バァァン!!!
拳が、背後からガレムの鉄鎧の継ぎ目を打ち砕いた。
爆裂のような衝撃が響き渡る。
「ぐあああああああああッ!!」
ガレムはよろめき、崩れ落ちる。
「な、なんで……俺の“背後”を……!」
「ラーナの“気配遮断”スキルを、少し借りたんだよ」
覚の拳からは、まだ煙が立ち上っていた。
「これが、“牙”と“俺”の合わせ技だ」
ガレムは、血を吐きながら笑った。
「……へへ、やるじゃねえか……牙……」
「お前も、“復讐者”になれたかもな……」
その言葉を最後に、ガレムの意識は途切れた。
森は静寂に包まれる。
覚は拳を見つめながら、ラーナに聞いた。
「……これが、俺の道なんだろうか?」
ラーナは言った。
「道なんて、後からわかるものだよ。
今は……“進むしかない”だけ」
二人は、再び歩き出した。
この世界にある「牙の過去」と、「覚の未来」を探して――