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第4話:獣人の少女と、傷だらけの契約



 


森は、静かだった。


ダンジョンの出口から抜け出し、全身を焼けるような痛みと疲労に包まれながら、覚は歩き続けた。

いや、もはや“這う”に近かった。


「……クソッ……体、限界かよ……」


スキルの再生力も、エネルギーが尽きれば機能しない。


木々の合間を抜け、朽ちた倒木の影に身を隠す。

意識が落ちかけた、そのとき――


 


——ガサリ。


 


「っ……誰だ……?」


 


ゆっくりと、影の中から姿を現したのは――獣の耳と尾を持つ、少女だった。


 


白銀の髪。片方の耳には傷跡。

その瞳は琥珀色に輝き、人間のものとは違う、鋭く、それでいてどこか……寂しげだった。


「……生きてるんだね。あんな所から、這い出してきたなんて」


少女は覚をじっと見下ろしていた。


 


「お前……人間じゃ、ないのか」


「私は“ラーナ”。獣人の末裔。……そして、もうすぐ“死ぬ”存在」


 


彼女の左腕は、黒く腐食していた。

呪い。あるいは毒。何かに蝕まれている。


「……お前も、捨てられたのか?」


覚の問いに、ラーナは微かに笑った。


「……捨てられた? 違う。“商品として売られた”だけだよ。仲間にね」


 


言葉の奥に、深い闇があった。

けれど、どこか他人とは思えない。似ている。

“信じた者に裏切られた”という点で――


 


「だったら、組もうぜ」


「……は?」


「お前が死にたいなら止めない。でも、お前が“生きたい”って思うなら、力を貸してくれ」


 


覚の手が差し出される。

その手の中に、ほんの少しの炎が宿った。


 


「俺も……お前と同じだ。

誰かを信じて、裏切られて、全部を失った。

でも、諦めたくない。もう一度、生き直したいんだよ」


 


ラーナはしばらく黙っていた。

そして、ゆっくりと……その手を取った。


「……じゃあ、契約する? 傷だらけの、どうしようもない者同士で」


 


 


《新たな同盟が結ばれました:“契約の焔”発動》

《一時スキル共有:再生/嗅覚強化/共鳴》

《副作用:記憶感応(夢を通じて互いの過去が流れ込む)》


 


「ようこそ、俺の地獄へ。ラーナ」


「そっちこそ……私の呪いにようこそ。牙」


 


森の奥で、小さな炎が灯った。


世界の片隅で、また一つ、物語が始まろうとしていた。



---


キャラクター紹介(新登場)


◆ラーナ・ウィルヴェルト(獣人の少女)


年齢:見た目14~16歳(実年齢不明)


特徴:狼耳と尾、右目がわずかに光る。左腕に呪詛の痕跡


性格:冷静で無感情に見えるが、根は優しい


スキル:「獣感覚(嗅覚/気配探知)」「呪印の爪(毒付与)」


背景:旅の仲間に“神の供物”として売られ、奴隷市で呪われた




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