第2話:死と再生、そして“牙”として
——熱い。
まるで全身が焼け焦げるような灼熱の中で、覚は目を覚ました。
正確には、牙の身体を通して、意識が再構築された。
「……ここ、どこだ……? ……クッ……!」
地面に両手をつく。
ザラついた石。染みついた血の匂い。獣のような唸り声。
周囲に転がる、腐った肉塊と、喰い散らかされた装備。
そして、自分の右腕。骨が剥き出しになっていたはずの腕が――
「……治ってる? 再生、してる……?」
《スキル【鳳凰転生】発動中:肉体の復元、記憶共有、魂再統合》
——スキル。まさか、ゲームじゃないんだ。これは……異世界か。
「……夢じゃねぇな。俺、ほんとに……生きてるのか? でも、これって――」
──ゴギャッ。
後ろから何かが飛びかかってきた。
その本能的な気配に、覚は即座に反応する。
「舐めんなよッ!」
身をひねって拳を叩き込む。
——ズバッッ!
拳が、ゴブリンの首を捻じ曲げた。
自分でも驚くほどのパワーだった。
「……嘘だろ、なんだこの力……。牙の体、戦闘職だったのか?」
その時、脳裏に“誰かの記憶”がフラッシュバックした。
裏切られた夜。
見捨てた仲間たち。
「置いていかれた……俺はただ……信じたかっただけなのに……」
——牙の記憶、感情が、覚に流れ込んでくる。
「……わかったよ、牙」
覚は、静かに立ち上がる。
背中には、まるで羽のような、赤く燃える“炎の残滓”がゆらめいていた。
「この世界、あいつら……全部ぶっ壊してやる」
「牙、俺が“お前の人生”やり直してやるよ」
ゴブリンの群れがまた吠えた。
だが覚はもう怯えない。
炎が、彼の拳に宿る。
「いくぞ……この命、燃え尽きるまで!」
——復讐と転生の物語は、いま始まったばかりだ。