第14話:再定義者《ノヴァ》の誕生と、魂が響く瞬間(とき)
──ズドォンッ……ッ!!
天が割れる。
崩壊した神格中枢、その空間に、紅蓮の柱が垂直に立ち上る。
空は逆巻き、虚無の海が渦を巻く。
「……っ、何だ……!?これは……!?」
覚が天を仰いだ瞬間、
ズギャァァアアン――ッ!!!
高周波の振動とともに、空間が砕け散る。
裂けた空から、ひとりの少女が“落ちて”きた。
光も、音も、すべて彼女の登場に“遅れた”。
「リリィィィ――!!」
覚が叫んだ瞬間、
彼女の身体を包む光が形を変える。
バチッ……バチバチバチ……ッ!!
電撃のようなエネルギー波が身体から奔り、地面を焼く。
《CODE変換開始──》
《対象:リリィ》
《再定義進行率:73%……88%……95%──完了》
ボウッ……!!
白金の光が一気に爆発し、
少女の姿が“再構築”される。
──その名は、
【リリィ=アメリア・ノヴァ】
魂因子:牙の妹・アメリア
形態:再定義者
特徴:魂の共鳴により、過去と現在を同時に観測する存在
リリィがゆっくりと目を開けた。
その眼は、まるで星の核のように煌めいていた。
「……わたし、思い出した。
お兄ちゃんを……置いていかれた日のことも……」
覚は、リリィの名を呼ぼうとして──一歩、引いた。
(これは……もう、ただのリリィじゃない……!)
ギュゥゥン……ッ!!
次の瞬間、リリィの手から、
純白と黒が交錯する“重力波”が炸裂。
地面がえぐれ、虚空が引き寄せられる。
《新スキル発動:次元干渉術式「ノヴァ=ドライヴ」》
→ あらゆる“選択”の未来を同時に発動し、もっとも有効な1つへ強制収束させる
「お兄ちゃんを殺したこの世界に……選ばせるつもりは、もうない」
「私は、“決める”。終わらせるの。全部」
──ゴゴゴゴゴゴッ……!!
神格システムの残骸が震え出す。
それは、リリィの存在がこの世界にとって
**“管理できない存在”**であることを意味していた。
「待て、リリィ……!」
覚が手を伸ばした瞬間、
バキィッ!!
彼女の掌から放たれた重力弾が、空間そのものを裂いた。
「このままじゃ……この世界、崩れる!!」
牙の声が覚の中で響く。
『……ダメだ、抑えられねぇ。
リリィの魂が、アメリアだった時の“死の因果”を……一気に噴き出してる!』
「じゃあ、止めるしかねぇだろッ!!」
ズドォッ!!
覚が地を蹴り、リリィの前へ飛び込む。
彼の右腕が真紅に燃え上がる。
《スキル連結:焔の再起 × 魂継 × 鎮魂撃》
→ 死を超えた想いを、魂の核に叩き込む最終融合技
「リリィ、今度は……守らせてくれ!!」
──ドガァアァァン!!!
爆光。咆哮。振動。
空間が反転し、
鳳凰の炎が、ノヴァの重力核を包み込む。
……時間が、止まったかのようだった。
リリィが、ゆっくりと倒れ込む。
覚がその身体を抱き止めた。
「リリィ……!戻ってこい……!リリィッ!!」
彼女が、小さく口を開く。
「……さとる、くん……」
「わたし、……今度は……忘れないよ」
《再定義者ノヴァ:安定化》
《全次元衝突エネルギー、鎮静化》
《システム残留因子:消失》
《覚、世界再定義権限を獲得しました》
──静寂。
すべてが、終わったかに思えた……その時。
──ピッ。
小さな音が、世界の中心から響いた。
その瞬間、空間の裏から、低い声が鳴る。
「世界の再定義、確認」
「管理者権限:起動」
「──ようこそ、“次の世界”へ」




