第13話:創定主 vs 鳳凰継承者──異界の記憶が火花を散らすとき
空が砕ける。
神の箱庭・ティア=ゼルの中心核、**虚空の戦域“アイン=ガルド”**にて。
“始祖”・一ノ瀬 惟明が神格を纏い、翼を広げる。
一方、覚の背中にも“焔”の翼が現れた。
牙の魂が完全に同化し、彼の内に眠る力が解き放たれる。
「来い、異界の後継者。
この世界の運命、その手で選べるか試してやる」
「上等だよ、“先駆者”。
アンタが背負ったもんごと、終わらせてやる!!」
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【スキル開示】
覚/牙融合体:フェニクスフォーム
鳳凰の火:《焔の再起》
→ 一度倒されても、魂が再起し、肉体を再構築する
魂継:《ソウルリンク・アクト》
→ 牙の記憶・感情を任意のタイミングで投影・強化
神破撃:《アトラク=ブレイク》
→ 神格存在に対し、防御無視の魂干渉ダメージを与える
一ノ瀬 惟明(始祖)/創定主
世界定義:《コード=オーバーライト》
→ 対象のステータスやスキルを“書き換える”
召喚記憶:《メモリー・レプリカ》
→ かつての転生者たちの力を一時的に自分に付加
抹消因子:《エレイザー・ライン》
→ 敵の存在を“記録”から消し、再生不可能にする
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バトルは熾烈を極めた。
想像そのものを具現化する始祖に対し、
不死鳥のように蘇る覚は、あらゆる技を喰らいながら前進する。
始祖の周囲に現れたのは、
かつて異世界転生し、そして敗れ、吸収された者たち。
槍使いの少年《神楽 修》
天才魔法少女《真白 紗夜》
未来予知を操る賢者……。
彼らの力をコピーし、融合した始祖は、もはや“神”そのものだった。
だが——
「お前、それでも“人間”だったのかよ!!」
覚の中の牙が、叫ぶ。
「一ノ瀬……お前は、自分の過ちを魂ごと上書きしてるだけだ!」
「その記憶、感情、絶望——
全部、他人のせいにして、世界をリセットし続けたんだろ!」
一瞬、始祖の手が止まる。
「……それが、いけないのか?」
「当たり前だろ。
俺は、お前と違って“忘れたくない”んだよ」
その瞬間、覚の身体から、赤く輝く羽が広がった。
《禁断スキル:魂焦がし(ソウル・バーン)》
→ 魂の寿命を削り、対象の“核心”に干渉する
「牙、お前の想い、全部俺がぶつけてやる……!」
「リリィ……! 俺はもう、誰も失わねぇ!」
拳が、始祖の“胸”を貫く。
始祖の視界に、かつて自分が守れなかった少女の姿が浮かぶ。
(……ああ。俺は……誰も救えなかった……)
《神格崩壊──創定主システム、シャットダウン開始》
《コード再定義権限、継承候補:覚/牙 合体体へ移行中……》
始祖の力が、崩れていく。
だがその瞳は、どこか安堵していた。
「ようやく……終わるんだな……俺の、長すぎた責任が」
——その時、空間が割れた。
崩壊した神格システムの空白に、
“新たな因子”が侵入してくる。
その声は、どこか覚えのある少女の声だった。
「……お兄ちゃん……?」
「リリィ!?」
彼女の中に、牙の“妹アメリア”の記憶が——完全に目覚めようとしていた。




