第12話:最初の転生者《始祖》と神格システムの核心
浮遊都市ティア=ゼルの最奥、
千層を超える光の階段を登りきった先にある空間。
そこは、重力も音も存在しない、無限に白いホールだった。
中央に浮かぶ、ひとりの少年。
彼はゆっくりとこちらに振り向いた。
「ようこそ。君が“観測外”の異物、覚くんだね」
その声は澄んでいるが、同時に“年齢不詳の疲労”を帯びていた。
「俺に名乗らせる気はないらしいな。お前が《始祖》か?」
「うん。正確には……この世界で“最初に異世界転生”してきた存在。
名は一ノ瀬 惟明。千年前、日本から来た」
覚の目が見開かれる。
「日本……だと!?」
始祖は静かに語り出す。
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異世界転生の真実
「もともとこの世界には、“転生”なんて概念はなかった。
でも、俺が墜ちてきたことで……世界の“定義”がバグったんだ」
「神格システムは、世界の秩序を維持するために作られた“意思なき装置”。
だが異界から来た俺の魂は、それを“上書き”した」
「最初の誤作動が、俺。
次の誤作動が、牙。
そして、3人目の誤作動が——お前だ、覚」
覚が拳を握りしめる。
「……じゃあ、俺たちはただの“バグ”か?」
「否。君たちは**再定義の種子**だ。
この世界を変えることができる“起動因子”。」
「だがそれは同時に、“滅びのトリガー”でもある。
神格システムは安定のために、異物を“受け入れる”か“排除する”しかない」
覚が言う。
「だったら俺は、壊す。
こんなくだらねぇシステムも、“神”ってやつもまとめてな」
始祖がうっすら微笑む。
「……そう思ってくれて、よかった」
彼が立ち上がる。
その背に、金と黒の翼が広がる。
《覚醒コード:Ω(オメガ)》
《最終存在変換:神格化・個体認定》
《一ノ瀬 惟明、神格“創定主”として再構築》
「君と戦う資格があるのは、同じ“観測外”の存在だけだ。
ここからは、言葉じゃなく——“魂”で語り合おう」
——天空の中心で、
異世界転生者どうしの、最終決戦が始まる。




