表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

討ち入り

おじいさんのありがた~い おはなし。

 その日は夕方から雪が降り始めていた。

 あたりが暗くなり始めたころ、フード付きのグランドコートを着た20数名の集団が音もなく、雪道を進んでいた。先頭は陣太鼓を持ち、その後ろに続く者たちは、大きな箱のようなものを運んでいた。


 大名屋敷では最近、化け猫騒ぎが続いており、猫よけに屋敷のあちこちに柑橘系の汁や、ハッカや香辛料が撒かれていた。また、寒くなってきたので屋敷の外側にコタツを置き、内側に入ってこないよう厳重な警戒をしていたそうな。ただ、その日は雪が降っていることもあり、猫は来ないと屋敷の者たちは油断していた。



 内蔵助は屋敷の前に着くと、陣太鼓を一つ鳴らした。これを合図に先に屋敷に侵入している猫たちが門を開けることになっていた。しかし、いつまでたっても開かない。

「どうしたんだ!」

「これは、失敗か?」

「捕まったんじゃないか?」

 メンバーが動揺する中、内蔵助は落ち着いて、2匹の老猫を両隣の屋敷に向かわせた。


 一番の老猫、弥兵衛は人の姿に化けると、右隣の屋敷の門をたたいた。すると、待っていたかのように戸が開いた。

「ダンスパーティですね。話は、聞いております。ご安心ください。」

左隣の屋敷に向かった喜兵衛も同じような返事をもらって帰ってきた。

 気が付くと、両隣の屋敷から、大名屋敷に向けて温風ヒーターが十数台フル回転を始めた。すると、屋敷の門が静かに空いた。

「遅れてすまないにゃ。」

「寒くてコタツから出られなかったんにゃ。」


 内蔵助の合図で、そっと予定の位置にスピーカーを設置し、メンバーは予定の立ち位置に向かった。事前に情報をつかんでいたので猫よけ対策に付け鼻をど〇ぎつねが用意してくれていた。


 内蔵助がまた一つ陣太鼓を叩くと、メンバーは一斉にグランドコートを脱ぎ捨てた。すると、隣に立っていた安兵衛が、陣太鼓を奪い取ると、

「1・2・3・4!」

 タランタンタン~

 いきなり両隣から明るい七色のライトが

「あいらぶゆー♪」

 いきなり大音量でへびーな曲が始まった。


 大名屋敷の人たちは驚いて出てくると、大騒ぎ、屋敷の中の人も両隣の人も集まって騒いでいる。いきなり一曲目から大盛り上がりであった。

 内蔵助は、屋敷の者たちがほとんど出てきているのを確認すると、安兵衛が投げ捨てた陣太鼓を拾い、リズムを取り始めた。

「きつねダンス?」

「いや、猫踊りだ!」

 猫たちは一糸乱れぬ見事なだんすで、屋敷は大盛り上がり、屋敷の者たちもいっしょになって踊り始めた。


「本番はこれからよ!」

 いきなり、ど〇ぎつねが乱入してきた。

「愛と正義の美少女ど〇きつね戦士 どんムーン。月に代わって……。」

「愛と知の美少女ど〇きつね戦士!どんマーキュリー、水星に代わって……。」

「愛と情熱の美少女ど〇きつね戦士!どんマーズ、火星に代わって……。」

「愛と勇気の美少女ど〇ぎつね戦士!どんジュピター、木星に代わって……。」

 いつものように、くいぎみに次々に名乗りを上げると、急に屋敷の屋根の上から、

「またせたわね。愛と美の美少女ど〇ぎつね戦士!ヴィーナス、金星に代わって……盛り上がっていくわよ!」


 いきなりのど〇きつねの登場に、大歓声が巻き起こる。

 そして、いつのまにかやってきた金ぴかの着物と、金ぴかのきつね耳、金ぴかのしっぽをつけた男がやってきて歌い始める。

ふぁっ、だず ざ きゃっつ せい? ♪

「ニャー!」

猫たちが一斉に答える。会場はさらに大盛り上がりとなった。しかしその中に内蔵助たちの姿はなかった。



「外が何やら騒がしいが何があったんだ?」

 大名は外の騒ぎに目を覚まし、部屋の警護の者に声をかけた。しかし、返事がない。部屋のふすまを開けると、警護の者は天井からつり下がっていた。大名は慌てて部屋にもどると、ふすまを閉めた。

「誰か!誰かおらぬのか?」

 その声は、大音量の音楽にかき消されて届かない。ふと右側の障子に目をやると、大きな猫の影が映し出されている。行燈のあぶらをなめているようだ。大名は驚いて左側のふすまを開いて隣の部屋に入ると、その部屋にいたはずの警護の男も倒れていた。首筋を何かで刺されたらしい。そして、その部屋の障子にも猫の影が……。

 大名は、化け猫から逃げているうちに屋敷の裏手まで、出てしまった。

 明るく照らされた表門とは違い、裏門は薄暗いままだった。

「誰か!誰かおらぬのか? わしを助けよ!」

 屋敷の者たちは表門付近で大盛り上がり、大名の声は聞こえない。大名はみんなのいる方へ逃げようと屋敷の横に回ろうとしたが、薄暗がりの中に光る二つの目が……。

 大名は裏門付近まで戻ると、今度は正面に大きな猫が……。

「しっぽが2本? ワァー!」

 大名は慌てて裏門の外に出て駆け出したが、薄暗い雪道のため屋敷の脇を流れる浅堀にすべり落ちてしまった。

「猫またが出た!猫またよやよや!」


 なんだか、もの悲しい メロディーが流れてくる。


「このようなところで、いかがなさいました?」

 ずぶぬれになった大名がやっとのことで、立ち上がると、町役人が助け出してくれた。

「おお、役人か。猫またが出た。なんとかしろ!」

「わかりました。」

 主水の脇差が 大名の心臓を貫いていた。



めでたし めでたし。


よやよやはお約束w

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ