理不尽にゃ
おじいさんのありがた~い おはなし。
「で、いつまで待たせるの?」
「もういいわ。行きましょう。」
反対側の障子の向こうにいたど〇ぎつねたちは、出てくることにした。
「待たせたわね!」
「よひょう!うなぎ」
「そうだ、おらのチャーシューとさんまも。」
食べる方が大事なつうと又八は、こちらの方が気になるようだ。
「そりゃ、まあこの猫たちの餌ってとこだな。」
「ああ、自分で餌が取れないこの子たちに取ってきたり、取り方教えたりでな。」
よひょうは、姿だけでなく、困った人を放っておけない、やさしい母の心まで写していたんだと気が付いた。あの魔法はイメージを形にするんだった……。
「わたしのうなぎ!」
「ああ、なんかこの体になってから、無性にうなぎが食べたくなってのう。」
死ぬ前にうなぎを食べさせたかったという よひょうの気持ちまでもが宿っていたようだ。みんながしんみりとした雰囲気になっているところで、しっかりもののさくらが
「それでも、毎回おかずを盗られては困ります。」
「そりゃ、そうだな。奉行所は、いい迷惑だ。」
「金さん、なんで奉行所だぁ。」
「毎日、苦情、陳情、賠償ってやつさ。」
「何で知ってるだ?」
「そりゃ、聞くだけ野暮よ。」
「野暮って奴から聞いたんか。」
まだ、金さんの正体に気付かない又八が変な納得をしたところで、奥の方から妙に陽気な音楽が流れてくる。
「そこ、もっと肩の力を抜いて!」
「リズムに合わせて体を揺らすの。」
「笑顔!笑顔!」
「しっぽもかわいく揺らすのよ。」
「悪霊退散!」
なんと、踊っていた猫たちにど〇きつねたちが、ダンスの指導をしていた。
「これなら、バックダンサーとして使えるわ。」
「応援団も帰りましたし、雇用するのもありですね。」
「せっかくだから、かわいい格好もさせましょう。」
「金ぴかしょうぐんに衣装代と食費お願いするね。」
「悪霊退散!」
猫の食糧問題と、町のノラ猫問題が一気に解決したそうな。
「これにて、一件落着!」
と金さんが、にこやかに笑ったが、老婆が口をはさんだ。
「いや、まだじゃ。」
「まさか、かたき討ちが残っているのか?」
「ああ、そうじゃ。」
「仕事人が仕損じたのか?」
「いや、直接の敵は討ったんじゃが、黒幕がまだじゃ。」
よひょうが尋ねているのを、金さんが真顔で聞いて、考え込んだ。
「そりゃ、大名ってことかい?」
「ああ、そうじゃ。また頼んだんじゃが……。」
「仕事人でも大名屋敷にいる殿さまは無理だろう。」
「それに後継問題や、下手すりゃ取りつぶしの問題も起こるな。」
金さんとよひょうは考え込んでしまった。
「大名家の問題には口は出せねぇなぁ……。」
「理不尽にゃ、討ち入りだにゃ!」
突然、老婆のそばにいた化け猫の内蔵助が、叫んだ。
「大名屋敷に猫47匹で討ち入りするてえのか?」
「それ、全滅するぞ。」
「覚悟の上だにゃ。」
「全滅したら、敵は討てねえぞ。」
「よひょう!仕事人」
「ああ、待ってな……ん?仕事人?」
だまって、あめ玉をなめていたつうが、ごはん以外の言葉を言ったので、よひょうはおどろいた。
「仕事人が、仕事しやすいようにすりゃいいわけかい。」
「それならなんとかなるかもな。でも大名死んだら問題だぞ。」
「それは、新さんに相談してみるさ。」
「新さん?」
「ああ、居候の新さんさ。」
居候の新さん?