しっぽをつかんだ?
おじいさんのありがた~い おはなし。
よひょうは、隣の又八の家の戸をたたいた。
「又八さん、さくらさん借りるよ。」
「さくらはおらのもんだ。渡さないぞ。」
「あんたはちょっと黙ってな。またたび酒ができたんだね。」
お杉かあさんが、話がややこしくなる前に又八を止めて、さくらを呼んだ。
「準備ができたんだけど、仕掛ける前に盗られた。」
「またたび酒をかい?」
「気づいたら、仕込んだうなぎも またたび酒も消えていたんだ。」
よひょうたちが、消えたうなぎに気を取られているうちに、残りのまたたび酒もなくなっていたそうな。よひょうの後ろから金さんが顔を出した。
「さくらさん、あとを追っちゃくんねえかい。」
「あっ、金さん。わかりました。」
「金さん、おらもいくだ。」
そんなわけで、お杉母さんを残して、さくらを先頭に5人で後を追うことにしたそうな。
「こっちですね。」
さくらは細い路地に入ると足を止めた。
「あそこに誰かいます。」
暗い夜道の真ん中に誰かが倒れている。いや、またたび酒を抱えて転がっている。
「この人、あの時の?」
道に転がっていたのは、お堂にいた破れた手拭いを被った老婆だった。よひょうが手に持った灯りを落とした。
「おふくろ……。」
「よひょう、おふくろってごはん?」
「母さんってことだぜ。って、本当かい?」
「いや、おふくろは、もう6年も前に死んでいる。」
手拭いの破れたところから、角が見えていた。
「ん、もしかしてこれはあの時の……。」
「どういうことだい?」
「あっ、逃げただ。」
老婆はふらふらとしながら、すごいスピードで逃げて行った。しかし、あちらこちにぶつかりながら逃げていくので、今度は追いかけるのはたやすかった。そして、やはりあの古いお堂に入っていった。
「あのおふくろの姿をした婆さんは、猫だ。」
「猫?」
「魔法で女の姿に変えたんだが、その時はおふくろしか思い浮かばなかったんだ。」
「老婆になった猫ってわけか。」
「おら、珍しいしっぽ見たぞ。2本生えてただ。」
「又八さん、それは本当か?」
「ああ、ホントだ。」
「やっと、しっぽがつかめたようね。」
通りのむこうからど〇ぎつねたちが現れた。
「おら、まだしっぽはつかんでないぞ。」
「犯人のしっぽだよ!」
「おらがつかむのは、さくらのしっぽだけだ。」
「もう!猫またよ!」
「おら、さるまたは履いてるけど、猫または履かないぞ。」
又八のぼけに、いつまでもムーンが突っこんでいるのは、ほっておいて、よひょうはマーキュリーに話しかけた。
「なぜここが?」
「盗聴器と発信器つけさせてもらいました。ここに」
マーキュリーは、つうの髪からピンを抜いた。金さんはその様子を唖然と見ていた。
「なぁ、さくらさん。こいつらいったい何者だい。」
「あっ、金さんそれは言っちゃダメ、あーあ、はじまっちゃった。」
「愛と正義の美少女ど〇きつね戦士 どんムーン。月に代わって……。」
「愛と知の美少女ど〇きつね戦士!どんマーキュリー、水星に代わって……。」
「愛と情熱の美少女ど〇きつね戦士!どんマーズ、火星に代わって……。」
「愛と勇気の美少女ど〇ぎつね戦士!どんジュピター、木星に代わって……。」
なんかくいぎみに次々に名乗りを上げると、急に屋根の上から、
「またせたわね。愛と美の美少女ど〇ぎつね戦士!どんヴィーナス、金星に代わって……。」
「この人たち、自分で美少女っていうんですよ。」
「そいつぁ、どうかなぁ。」
「おらの、さくらの方がきれいだ。」
「つうのほうが、かわいいぞ。」
「よひょう、おなかへった。」
と、全員からいつものように盛大につっこまれたそうな。
「ねぇ、ムーン恥ずかしいからやめない?」
「これはお約束よ。」
「設定よ。設定!」
「私は美少女、私は美少女、私は……。」
「怨霊退散!」
と、こちらもいつもの反応であったそうな。
ど〇きつねと共闘?