古いお堂
不思議な出来事は続く
「よう、最近どうだい。景気よさそうじゃねえか。」
又八がとんこつラーメン、ねぎ、チャーシュー、油ましましを食べていると、ちょんまげをななめにした遊び人の金さんが、桜吹雪をちらちら見せながら話しかけてきた。
「ぜいたくできないように お奉行様から毎月もらってるだ。」
「いいおふくろさんじゃねえか。」
「なんで、母ちゃんがお奉行様に頼んだの知ってんのか?」
「あっ! ……まあな。」
あいかわらず天然な又八は、金さんの桜吹雪に気づいていないようだ。
「ん?金さん、おらのチャーシュー喰ったか?」
「又八こそ、おいらのチャーシュー喰ったか。これじゃ味噌チャーシューがただの味噌じゃねえか。」
「ん?油も減ってるだ。これじゃねぎらーめんだ。」
「こりゃ、最近よくもめてるやつだな。」
「チャーシューでもめてんのか?」
「チャーシューだけじゃねぇ。肉魚が消えるんてんだ。」
「おっ、こないだ、さんま取られただ。」
「焼いてるさんまか、最近増えてるなぁ。」
「さくらが追いかけたら、猫がいただ。」
「猫か、だったらわかりそうなもんだな。」
「さくらはわんちゃんだから鼻がいいだ。」
「わんちゃん?あっ、そうか!最近、確かにノラ猫が増えているんだ。」
「塀にも、屋根にもいっぱい、いただ。」
「ふん、そいつぁ調べてみなきゃいけねえな。」
と言うと、遊び人の金さんは、桜吹雪をちらちらみせながら 店を出て行ったそうな。
「だんな!お代がまだですぜ!だんな!」
又八は、今度も二人分のラーメン代を払うことになったそうな。
「やり残した奴がいるのか?」
町はずれの古いお堂で、もんどは頭に手拭いをかぶった老婆と話していた。
「相手は大物だぜ。」
老婆は黙って、小判を3枚並べた。
「ん、誰か来た。」
「待って!」
「私のごはん!」
さくらの鼻を頼りに、よひょうとつうは猫たちを追いかけていた。
「おい、ここは?」
3人は古いお堂に飛び込んでいった。中には猫たちに囲まれ、頭に手拭いをがぶって顔をかくした老婆が一人いた。
「ん、あんたこの猫たちの飼い主か?」
「私のごはん!」
「いや、ここに住み着いている野良猫たちだよ。私は知らないね。」
老婆が三味線を弾きながら、出て行くと、よひょうは刀に手をかけた。
「たけぞうさん!」
「うん、そこにいるだろ。何者だ。」
主水は姿を現すと
「いや、猫を追ってたら、ここまで来ましてね。」
「同心が猫を追ってるのか。」
「お奉行様の命令でね。最近ノラ猫が増えてるって」
と、いうと主水はお堂を出て行った。
「ここね。」
「誰かいるわよ。」
入れ違いに大えびに発信器を仕掛けていたど〇きつねたちが飛び込んできた。
「あっ、しっぽ娘!」
「あっ、あなたたち、どうしたの。」
「さくらさん、この子たちは?」
「きつねしっぽの人たち。」
「いたずらものの ごんぎつね!私のごはんかえち………イタっ」
まだ、つうには長いセリフは無理があった。
「ど〇きつねよ。『ごん』ではないわ。」
「ん、ど〇きつね?」
よひょうは思い出したようだった。
「あの時は、お買い上げありがとうございました。」
「もしかして、あなたたちも猫を追って?」
「あれは、猫じゃありません。」
「どうみてもここにいるのは猫だぞ。」
「マーキュリー分析できる?」
「今やってる。……猫ね。それに色もしっぽも違う。」
「しっぽ?」
「これを見て。」
ムーンは一枚の写真を取り出すと、さくらがのぞきこんだ。
「しっぽが2本?」
「それは……。猫またっていう妖怪……。まさかなぁ。」
よひょうは写真を見て首をひねった。
「猫またって?」
「ああ、長年生きた猫がしっぽが2本になって、2本足で歩いたり、人の姿になったりするそうだけど」
「たけぞうさん!さっきのおばあさん。」
「おばあさん?」
「おじさんが出ていくのは見たけど?」
ど〇きつねたちは首をかしげている。
「手拭いで顔を隠した、三味線を持ったおばあさんよ。」
怪談っぽくなってきましたw