第8話:試算
始まったな……
ああぁ……
上海への渡航は毎月に近かった。
いま上海事務所は人数を減らし、重要となる人物との会議が行われていた。
「所長スタッフが足らないアルね!」
「人材を入れるアルね!」
至極当然な意見である。
技術面は日本人スタッフが応援に来てはいるが、人が足らないのは事実だ。
「君たちの言う事はもっともだが現状仕事も減っている。短期的には日本からの応援も来ているから何とかしのいでくれ」
その言葉に誰も異論が言えなくなる。
仕事は減っている。
日本から技術面では支援が来ている。
「大丈夫ですよ、通訳もスマホの自動翻訳機能で何とかなってますしこの苦しい時期を過ぎればきっと良くなりますよ」
現地スタッフをなだめながら支援部隊である私たちが翻訳機を使って中国語で言うと現地スタッフは渋々大人しくなる。
実はもう辞めた陳さん(仮名)から教わった方法で、残った重要人物たちは自分の派閥や手ごまとなる人員が減少して社内勢力の低下を恐れているとの事だった。
まぁ、日本でもそういった面はあるがこちらの上海ではそれはさらに顕著で、場合によっては利害が一致すると対立する派閥でさえ徒党を組むらしい。
曰く、中国は未だ三国志の時代と変わっていないとの事である。
ならばさんざんパソコンでやった三国志のゲームを思い出だし、策を練る。
「大丈夫ですよ、どんなに困難でも『背水の陣』の気持ちで対応すれば何とかなりますよ。それに『困難あり、便法あり、希望あり』ですよ」
三国志の物語と毛沢東の名言を混ぜながら言うと現地スタッフは黙ってしまう。
こうして会議は終わり、残った人員で対応すると言う事で話は終わる。
そして春節が来る前に更に数名が辞表を出してきた。
「見事ださいとう君。これで想定以上の人員削減になったぞ」
「まだまだ油断はできませんよ。お客さんには何かあったら日本からのサポートもあるという宣伝もしましょう。そうすれば問題があっても対処はできるというアピールは出来ますから」
策士策に溺れぬように自分を戒めながらその時を待つ。
実に運命の日まで残り3か月と迫っていたのだった。
<次回:「反日感情」お前を信じるお前を信じろ!>
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