バチクソ最強伝説の幕開け
「俺が21世紀の世紀末覇者になる!」
「ノブの兄貴、まだ2024年ですけど」
「ミツ、カッコいい言い方優先だ」
周知の通り、21世紀に入り、日本は崩壊した。
日本政府は滅び、警察も自衛隊も機能不全に陥り、無法地帯になった。
誰もが自治をしなければならなくなり、強い者が成り上がった。
そうして日本は、400年来の天下再統一の時代を迎えているのだ。
ダオ・ノブこと俺は、バチクソ軍団を率いている。
俺たちと競い合う勢力は複数、存在する。
忍者王タンゲが率いる忍者軍団。
海賊王クロヒゲーラ率いる黒髭海賊団。
極道王ヒロサカが率いる広坂連合。
山賊王ザキヤマが率いる山賊軍団。
スポーツ王フシムロが率いる熱血連合会。
宗教王アース率いる神ノ国。
成金王ミリオ率いる虎ノ棲家
拳法王華霊綿率いる拳法王国
みんな、天下統一の世紀末覇者を狙っている。
「兄貴、世紀初頭です」
「言い方優先!」
他には天下統一を狙う勢力は数知れずある。
だが、多くが自らの野心に従う輩であり、真の平和を目指していない。
俺たちバチクソ軍団こそが、日本を平和にできるのだ。
「おい、クソども」
俺とミツが荒廃した街を巡回していると、三人の極道が現れた。
「バチクソ軍団だ!」
「クソには変わらねえだろうが。たった二人で自衛ごっこをやりやがって。ここは俺たちのシマだ。勝手なことしてんじゃねえぞ」
「これからデカくしていくんだよ」
俺とミツの身長は、日本人の平均以下。対してこいつらは巨躯な体だ。なので頭に乗るのも当然だろう。
一人が俺の襟首を掴んできた。
「ぐげえええ」
そいつは悲鳴を上げてうずくまった。
「てめえ、何をやりやがった」
兄貴風の奴が慄いた。
俺が手を離すと、うずくまった奴の手首は折れ曲がっていた。
これが俺の武器だ。
体の小さい俺はかつて苦渋を舐め、何か圧倒的に秀でた武器を手にしてやろうと考えた。
来る日も来る日も、ひたすら握力を鍛え続け、オラウータンに勝てるほどの握力を手に入れた。
「来いよ」
極道どもは何をされたかわかっていない様子で、後退りしていく。
「ビビってんじゃねえよ」
俺がせせら笑ってやったら、さすがに極道はムキになって突っ込んできた。
俺の体が小さいから、敵は接近戦なら勝てると思う。それが罠なのだ。
俺は相手の長いリーチをかいくぐる。懐に入れば勝ちだ。
どこを掴もうが握り潰す。相手が膝蹴りを放ってきたが、掴んで関節を外してやった。
悲鳴をあげる二人の極道を置いて、残った一人は逃げていった。
「薄情だな。おい、おまえらは人々から吸い上げてばかりで、世のためになってねえ。このシマは俺が自治していくからな」
「ほざけ。俺たちは所詮、下っ端だ。広坂連合の三枚看板が動きだしたら、貴様など二秒でお陀仏だぞ」
「憶えておくよ」
俺の伝説はまだ始まったばかりだ。