第七話 advance judgement
…さて、とりあえず…。
「誰でもいいから、あの人をどうにかできないのでしょうか?」
「さぁ?」
未だに店内を見続ける彼らを哀れと思う僕らとストーカーと思う通りがかりの人と通行の邪魔だと思う野良犬がいた。
「…どうするよ、アイツなんかもう止めにくい…。」
「ある意味での繊細な人だしね…まぎれもない純白な心の持ち主なんだけども…ね…」
アユラもアユラで困っていた。
僕も勿論だが、あれはあれで困る。
デルタさんにとっての重大な物は、僕らにとっての価値など殆ない物に近いだろう。
…というか、思う。
「…僕らって、傍から見るとどう思われるんでしょう?」
「主従関係?」
詳しく言うと、カフェの向かいにあるマクOナルドにて、お食事中。
もうとっくに12時は過ぎたさあ、君もいらっしゃいと声をかけたのだが、返事もなかった。
無論、そんな事は、口に出していない。以心伝心ができると信じていたからだ。
ちなみに、なぜ僕がこんなことを言ったかというと、なぜか鎖を左手の手首につけられて、自由を奪っていたからだ。
それを主従関係というとは…この人、やはり怖い。
「兎に角…ハンバーガーを食べようっか はい、あーん」
アユラは、言葉をした後に、それを口にくわえて、あーんとまるで鳥の親が雛にエサをやるような事をしてきた。
「食えるかー!」
「あらら、ざーんねん」
「何を…」
「なーんにも」
とりあえず、回避。なぜ彼女はこんな事をするのか、僕としては理解しがたい。
…まあ、それはいいとして…だ。
ガラス越しから見ていても、何の変化もないかと思われていたカフェ内の二人が動き出した。
二人は、店内で笑いながらリーさんはレジで会計を済ませると、妹さんと店内から出た。
先に出たのはリーさん、後に続いて妹さんが出るのだが、そこに兄の姿を見つける。
兄デルタさんは、ハッとして二人を睨み、リーさんを指さして突っ込む。
右、左、右、左と一歩一歩歩きだしては走る。
その速さは、中々と言っていいほどでもあるが、ここからではあまり早いとも言えない。
五分五分ともいうかもしれない。
「な~にしてんだか…」
顎に右手を置いて、アユラもいい加減につまらないという目で彼らを見る。
僕も実際そういう気持ちだ。シスコン兄の暴走を見届けていても、僕らは何の利益もない。
…いや、むしろこんな依頼に何の意味があるのだろうか?とよくよく考えさせられるものでもある。
ちなみに言うと、僕らは心の裁判所と題して困った人を助けているが、それが室内だけとは限らない。
なぜなら、‘事務所がなくとも自由に動く裁判所を持っている‘からである。
「ん、もしかしてクソ親仁の審判が出るか?」
アユラの言うリーさんの審判…。
心審判と心裁判。
読みが同じであるが、それぞれが異なる。
今回は審判のようだ。
僕らは、彼らの元へ行くために、一度マクOナルドを後にした。
次回、ようやくリーの審判解禁!