第三十八話 終世
いよいよ、ソウイとオーヴァンの最終決戦です。
「稗雷鳥!」
突如として、周囲の空気がゾッとする。
地響きにも感じるこの感じは…紛れもなく、地球が脅えているに違いないと感じる程だ。
相手の掌には、青き小さな鳥…雷鳥が足をピンと立てて、凛と立っている。
その雷鳥は、電撃を身にまとい、そのまま翼を開くと電撃は周囲へとジグザグ走行する。
一撃でも当たれば…死ぬか、良くて感電の麻痺状態…つまり、仮死になるかもしれない。
そう、心臓が止まると考えたのだ。
電気ショック。それが、一番いい言葉だ。
心臓に電気ショックを与えるのは、よく医療の中にある話だが、それは必要以上に与えると体に悪いのだ。
そして、この電撃は…よくよく見ると、二重いや、三重。
同じジグザグ走行をする二つの電撃が重なって、そう見えるのだろう…。
…終世…。
それが、今のこの世の状況に相応しい。
天は暗黒に染まり、そして聳え立つ七色の太陽がその雲を割いている。
「行くぞ…」
俺は、手をそっと前に、そして一瞬を確実に…手を大きく振る。
‐‐‐ 1時間前 ‐‐‐
輪を探して、彷徨い続けるソウイとアユラ…そして、セツナの三人は、激しい戦いを目の当たりにする。
二重固有結界が開かれていた場所から離れてはいるが、今の宛てがあるのは、そこしかないと踏んだのだ。
だから、そこを目指そうとした。
ただし、目指すにも時間はかかる。
急いでも、中々辿り着けなかった。
どうすれば…と考えるよりも、足が動く。
絶対に…助けるという気持ちがあったから。
たどり着くまでは、時間すら長く感じていた。
町並みを辿るにつれて、彼らは…たどり着いた。
丁度…二重固有結界がガラスのように割れて行く様をただ見て…。
輪が、白い灰となるのを見届けてしまった…。
「り…ん…」
セツナは、力なく地面に膝をついて、肩を落とす。
アユラは、ソウイの顔を見る。
ソウイは…涙ながらに刃を噛み締めて、怒りを抑えつつ漏らしていた。
そして、灰になってゆく輪の姿を見届けるとき、その前にいた赤面のギルガメッシュとオーヴァンをソウイは見て…。
「ころ…す…ブッ殺す!」
風が刃の如く鋭く、威圧はそれを圧倒するが如く大きかった。
ソウイは、もう頭に血が上りきってしまった。
一歩、移動速度は通常の何十倍。
一瞬で、相手の懐についている。
そして、そのまま攻撃の動作をする。
右ストレート。
だが、それをひらりとオーヴァンはかわすと、横からギルガメッシュの手が襲いかかる。
それを、セツナが止めに入った。
そして、それをアユラが占めたとばかりに襲いかかるが…。
何かに吹き飛ばされてしまう。
「ああ…紹介が遅れたな…出てこい…カリナ」
赤き一陣の風は、ソウイたちを吹き飛ばす。
ソウイは、その目でもう一度彼らを見ると、そこにいたもう一人の黒のマントを付けた少女…
「ポ・・・ルカちゃん…?」
その姿は、先程まで一緒に行動し逸れてしまった仲間…ポルカの姿であった。
「そう…か、そうか…」
「やれ、ソウイ…ここは俺たちに任せな…行くぞ、セツナ」
「言ってくれるわね、貴方こそ合わせてよねアユラ…」
「ふん、行くぞ…轆轤」
アユラの体に疾風が現れては、それが螺旋の広がる。
「稗雷鳥!」
一方、セツナは己の拳を高く挙げて、空からの暗雲から雷を落とさせる。
そして、その拳に電撃がとどまると形を変化させて行き、鳳凰の形へと変化した。
羽を大きく広げて電撃を放出させる。
その電撃は螺旋状に広がって行き、それぞれの行きあたる壁へと当たっていき、その壁もまた壊し始めた。
固有結界。
いや、固有結界を自分の場所から移動させて異次元を作り出して、稗雷鳥に轆轤を合わせているのだろう。
まるで、嵐である。
そして、その固有結界は恐らくソウイの固有結界。
走って、三人の中にいるオーヴァンに突撃する。他の二人は他の二人を叩くために、飛び出す。
オーヴァンは、ソウイの一撃をヒラリと払い落すと、そのままソウイの胸倉に一撃を与える。
すでに腰を曲げたままのソウイにその攻撃が諸に入ってしまう。
思わずソウイの口からは汚物が吐きだされ、そのまま投げ飛ばされる。
力は、相当の物である。
ソウイは、数メートル先にある出店の木箱に体を落とした。
頭を強く打ち、思うように体が動かない。
ソウイは、歯をむき出しにして、オーヴァンを見る。
憎々しい相手に、牙をむく獣…いや、猛獣。
例えるのならば、それが相応しい。
ソウイは、ただ猛獣のように睨みつける事しかできなかった。
オーヴァンは無言、無表情でソウイに最後の一撃を向ける。
もう、終わりか…と、光を失いかけた。
その時である。
オーヴァンを一閃が襲う。
それは、貫通してソウイの元へとたどり着くと、ソウイの掌で消えた。
すると、ソウイの体が急に光り始めた。
「黒太陽を破壊した…だと!?」
ソウイ自身、それが何かはわからない。
だが、その一閃は天からのものだととらえる事は出来た。
その時に黒太陽という物が破壊され、ソウイの所まで来たと考えても良いだろう。
そして、ソウイの体の光は、黄金というよりも、七色。
また、その光は太陽の如く眩しい。
「クソッ…奴め、最後の最後に、こんな小細工をぉぉぉ!」
オーヴァンは目を覆う。
いや、それどころか段々と体の皮膚が焼けていくではないか。
ジワジワ…と、皮膚が焼き焦げては落ち、焼き焦げては落ちて…そして、全身は真っ赤に染まっていた。
つまり、むき出しだと言う事だ。
さらに、そのむき出した皮膚から白い固体…骨までもが見える。
それも、段々と溶かしてゆく。
「まさか…輪さんが…?」
そうしていくうちに、ソウイは落ち着きを取り戻す。
どうやら、正気に戻ったようである。
それどころか、先程の傷すらも治って行く。
そんなソウイに、頭を通して脳内に声が響き渡る。
それは、聞きなれた輪の声であった。
{ソウイ、後はお前に…天厨を託そう。それと店もちゃんとついでくれ…これは、俺からできる最後の事だ。尾形 空を倒せ…}
「輪…さん…」
その時、空から稗雷鳥の電撃が降り注ぐ。
二人は…?
オーヴァンは、只管に苦しんでいる。
今しか止めのチャンスはない。
「死ね、永久に…奈落の底、地獄に落ちろぉぉぉ!!! 天輪・葬送歌!」
ただの右ストレート。
だが、その一撃は渾身の一撃。
光が一か所に、先程の眩しい光輝く太陽の拳が、オーヴァンの腹部を襲う。
確実に…体を貫いた。
そして、そこから段々と黒い灰と化して、地面にパラパラと落ちてゆく。
完全消滅だ。
「今行くぞ、アユラ、セツナさん!」
ソウイは、二人の元へと急いだ。
一輪の花が、螺旋のように天へと昇り…そして、桜のように散って行った…。
―――輪さん、さようなら―――。
いやぁ…ひどかったですよ。
編集だけで、インターネットが三回も閉じられて(強制終了)、同じ文章を淡々と描き続けていましたからねぇ…。
では、次回 最終話 未来の虹です。