第二十五話 覚醒
「ククク…、残ってるのはお前だけだぜぇガキィ!」
「クッ…」
僕の隣で、倒れているアユラ。
まさか、僕を…庇うなんて。
「許さない…絶対に!!!」
ソウイの目が光る。
赤く、そして涙のように血を流す。
その血が、頬まで来ると円を描いて顔を舞う。
それぞれが光を帯びて…。
そして、全身にその光を浴びさせる。
「御前等は…僕が…倒す」
見えない剣、幻想剣を手にソウイは目の前にいる3人の男…。
芥川とシノンとベルゼを相手にする。
(--- 30分前 ---)
「はぁ…はぁ…く…」
「その程度か?」
「まさか…ここまでとわ…な」
もう、ボロボロであった。
体に力が入らない。
拳が地に向く。
「良い事を教えといてやる。あのソウイとか言う餓鬼が向かっている先は、ヘシータの家ではなく、俺たちの基地だ。」
「な…んだと…」
俺は、驚いた。
そう、あのルートはアギトが教えたルート。
つまり…誘われた。
「どういうつもりだ…」
「あぁん?言う気になれねぇな…つか、教える義務なんて…」
くっ来る…!?
体の体制を低くしたコイツは、一気に突っ込んでくる気だ…。
早く、動かないと…!!!
「ねぇんだよぉおおおおおおお!!!?!?」
来た…!!!
その時だ。
すぐ近くまで相手の拳が来た時、そこで何かを感じた。
何だ…、これ。
何かに包まれているような感覚。
まるで…それはスポンジ。
「なんだ、これはぁあああ!?」
青い風船のような半透明の丸い球が俺を包んでいた。
それは、相手の拳を跳ね返すと、変形しまるで反発したように尖った。
「つっ!なんだよ、これはぁああああ!!!」
思った以上に鋭かったらしく、また硬くそれは相手の頬を突くと相手は血を流す。
絶対防壁球。
絶対無敵の絶対防壁。
完璧なるその守りはどんな衝撃も返す。
「な…なんなんだ…これは…」
自分でも納得ができなかったが、これで…。
「く…これじゃあ近づけねぇな…」
俺は、敵を背中に走る。
ソウイの元へ…と。
ダッダッダッ...。
誰だ…。
僕の後ろから、誰かの走る音が多く聞こえる…。
まさか…追手!?
そう思うと、いっそう足が速くなる。
「はぁ…、はぁ…くっ」
もうすぐ、橋が近づく…。
もう少し…後…す…。
バンッ!
「!?」
一瞬の出来事。
何が起きたかのか理解が追いつかなかった…。
しかし、それは確かに今ここで鳴って、ここで終点した。
後ろを振り向くと、ドスンッと大きな音をたてて、ある女性が倒れて行く姿が映った。
「な…なんで…」
その後ろには、3人の男がいた。
一人は、銃を構えている。
どうやら、軽量の銃のようで、片手で持っている。
その銃口から煙が上がっているので、おそらく…撃ったのだと思う。
だとしたら、なんで…どうして…ここに…。
「あ…アユラァアアアアァァァアアアアァァアアアアアア!!!!」
目の焦点が合わない。
地震でも起きたかのように、視界が揺れる。
ぼやける。
一つの所に集中して注目できてない…。
何が起こっているのか…。
自分の中から、何かが溢れる…。
なんだ、この感覚は…。
怒り、憎しみ…負の感情が僕を浸食していく…やがてそれは 形 となって、確かにそこに出てきた。
見えない。
所有者にも…見えない…それは、僕の両手に握られた。
「ククク…、残ってるのはお前だけだぜぇガキィ!」
「クッ…」
僕の隣で、倒れているアユラ。
まさか、僕を…庇うなんて。
「許さない…絶対に!!!」
ソウイの目が光る。
赤く、そして涙のように血を流す。
その血が、頬まで来ると円を描いて顔を舞う。
それぞれが光を帯びて…。
そして、全身にその光を浴びさせる。
「御前等は…僕が…倒す」
見えない剣、幻想剣を手にソウイは目の前にいる3人の男を相手にする。
「馬鹿が、何にもかわんねぇよ!」
「どうかな」
ザクッ
鈍い音。
一歩もある気もせず、ただ片手に‘それ‘を持ち、相手に殺意を抱いただけ。
それなのに、相手は赤い体液を出す。
まるで、剣に突かれたかのように。
「ぐぅううぁああああぁあああ!!!くぐぅううぁあああ!!!貴様ぁああああぁあああ!!!」
幾度も幾度も、立ち上がっては、倒れる。
剣はその柔軟な体にスッと軽く入る程度の鋭さのようだ。
そうして、僕はそんな彼を見つつ、両手を天へ向け…振り下ろす。
すると、地面が地割れのようにひびが入り、また男の体を真っ二つにした。
「あの餓鬼…ばっ化けものか…!?」
「芥川、御苦労であった。」
血まみれの死体に手を合わせる男。
その後ろで体を震わせる男。
「あと二人…。絶対殺す」
ソウイの覚醒。
パーソナル
黒マントの男
この男たちは、元々リー率いる月心の中にいたリーに恨みを持つ者たち。
芥川
黒マントの男の一人で、アユラを撃った拳銃専門の男。