第十八話 巫女様
「なあ、ソウイ…お前、金持ってるか?」
「いや?ポルカちゃんは?」
「カード払い…のためのカードがない。兄貴が持っていったからな」
バス停にて、男子一人、女子二人が待ちぼうけしていた。
バスに乗ろうにも、お金がない。
どうすることもない僕らは、これからどうするか決めようともせずに、すぐ近くにあったマスクドナルドでお世話になっていた。
「んーと…、これは…???」
別にメニューを見せられたわけではない。
そこにあったのは、白い紙に、ぎっしりと描かれたチラシ。
描かれていたのは、 アルバイト募集 という記事。
どうも、アユラはこれに参加しないか?ということらしい。
…チラシの下あたりには、小さく 女の子大募集!!! の怪しい項目というか…。
しかし、これ以外にすることがないため、僕たちは一度行ってみることにした。
マスクドナルドでお世話になった水よ、そしてテーブルよ、イスよまた会おう…!!!
マスクドナルドの店員さんは、ニコリとしかし少し困った顔で僕らを見送った。
謝罪の言葉もないです。はい。
「えっと、それはどこにあるのだ?」
「ここからそう遠くない、1kmもないくらいだから、バスも使わなくて済みそうだ。」
使ったら、ある意味犯罪の方向へ行くだろうな。
なんて、言葉にできない…。
言ったら殺される…。うん。
「だ、そうだどうする?アユラ」
「もっちろんおしおきが必要だよなぁ?」
「ひっひぃいいいおっお助けぇええ!」
「やめなさい!」
そこへ、救世主かそれともただの通りすがりの風紀委員か…それを止めにかかる一人の…
「みっ巫女!?」
「フフフ、少しは骨のある人…よねぇ?私弱い奴は嫌いなの、たっぷりと楽しませてよねぇ?」
どういうわけか、巫女姿のまさに美少女とも言える人が前に出た。
髪型は、金髪にポニーテール、目はクリクリとしてまるで小悪魔のよう。
…発言からして、僕を助けてくれるわけではないようだ。
「だ、そうだ…それで、その場所へはここから1kmもないんだよな?」
「ああ…ソウイには残念だが、ここで落ちてもらおうか」
「ちょっと待てよ!二人とも、それはあんまりじゃないかな!?」
「ヤヲ街、寡占色神社…第七当主、上野 光由いざ参ります!」
そういうと、彼女は僕の前から一瞬で姿を消すと、アユラとポルカちゃんの目の前まで1秒もかからなかったのではないかと思われるぐらいに早く到着していた。
まるで…幻想だ。
彼女が見せる、固有結界にでも入らされたようだ。
固有結界…?
そうだ、なぜ彼女は巫女の姿をしている…!?
それに彼女の持つあの何か描かれた札…怪しいな。
物は試し…、彼女の動きを僕のロックで固定してみよう。
「ロック!」
そう僕が言った直後、バキンッ!と大きな音を立てて、僕の右手がまるで…まるでガラスのように割れた。血はなく、痛みもない。
が、精神的に…痛い…。
「うっうぁああああああ!なっなんだ、こっこれぇえええ!?」
そして、僕が狙いを定めた彼女は、逃走するアユラとポルカちゃんを追撃する。
間に合わない…。
ロックをもう一度使えば、完全にこのガラスは割れてしまう…。
どうする…どうすれば…。
「そこまでだ、ミツ!」
どこから飛んできたかは知らないが、僕の真上を天狗姿の爺さんが通る。
年齢は…60歳と言ったところ。
白髪の爺さんは、僕でも飛び越えることができないだろうという岸壁をもろともせずに飛ぶ。
流石は天狗…とも思えた。
その直後に、彼女の…巫女さんの動きも止まる。
「今日は大事なお客様が来られるんだ、いつまで外で遊んでる気だ!」
(((そっそっちですかっ)))
皆同時にそう思っただろう。
いや、そう思わざる得なかった。
まったく…この人たちは…。
「成程、君たちがそのお客さまだったんだな、失敬失敬…ワシは、ここで補佐としてこのミツを育てとる、山爺じゃ」
「いやいや、山爺と名乗られても、そこのチラシに本名が上野 山太郎って書かれてますけど…」
僕が突っ込む。
それと同時に、アユラとポルカちゃんはお世話になりますのような形でお茶を飲む。
なんかおかしくないか?それ
「先程は失礼いたしました。お詫びに…そうですね、この高級そうなカビンの片手平手割を…」
「やっやめてくれ、それは去年死んだばあさんが大事にしろと言って、ワシに下さった…」
「去年って、それは一体何人目の不倫相手です?というか、どうせ店から取ったものでしょ?」
「むぅ…、そんなことはない!」
僕らは…本当にやっていけるのかなと心配になりつつも、目的地であった寡占色神社へとたどりついたのであった。