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ショートショート3月〜3回目

ドア

作者: たかさば
掲載日:2023/03/05

 仕事を終え、コンビニでメシを買って帰宅しようとした俺は、おかしなことに気が付いた。


 いつも歩き慣れている、歩道のど真ん中に……、ドアがある。


 ……なんだ、これは。


 アスファルトの上に、ドアだけが立っている。

 ……テレビ番組の収録か?

 辺りを見回すも…誰もいない。


 とりあえず…避けるか。


 ドアの横を通り、前に進む。

 なんだ、スルーできるんじゃん…と思って、前を向くと。


 ……少し離れた場所に、ドアがある。


 ちょっと待て、ドアが…移動した?

 後ろを振り返ると、ドアがない……。


 ぞわぞわする気持ちを押さえて、歩みを進める。


 ……ドアが、目の前にきた。


 なんだ、これは。

 あれか?今はやりの、ループ現象ってやつか?

 なんか、こういうの、ショートショートで読んだような。


 とりあえず…避けるか。


 ドアの横を通り、前に進む。

 今度は、地面ではなく…ドアをにらみつけて進むことにする。


 真横を通ったあたりで、ドアが透けはじめ、背中を見せたあたりで、完全に消えた。

 なんなんだ…と思って、前を向くと。


 ……少し離れた場所に、ドアがある。


 よく見ると…ドア以外の景色が、変わっていない。

 住宅の並ぶ、横道のない歩道は、通常であれば3分も有れば抜けられるはずなのに。


 ずっと…マンション横を歩いている。

 いつまでたっても…交差点にある100円自販機にたどり着けない。


 ……ドアを開けないと、抜け出せないパターンか。


 いや……、今来た道を戻るという手もあるな。

 多少遠回りになるが、面倒なことからおさらばできるならそれでもいいか。


 俺は、ドアに近づくことをやめ、くるりと後ろを向いて……。


 ……少し離れた場所に、ドアがある。


 なんなんだ、これは。

 ホント…無駄なことをするなあ。

 こんなごく普通の一般人を巻き込んで、何が面白いんだ。


 ……ドアを開けないと、抜け出せないパターンなのか。


 ……クソ、開けるしか、無さそうだ。


 ドアノブに手をかけ、引いてみる。

 ……開かないじゃないか。


 押すのか?

 ドアノブに手をかけ、押してみる。

 ……開かないじゃないか。


 もしかしてこのドアは…このデザインでまさかの引き戸か?

 ドアノブに手をかけ、右に動かして引みる。

 ……開かないじゃないか。


 もしかして…センサー式か?

 ドアノブから手を離し、振ってみる。

 ……開かないじゃないか!


 自動ドアかもと思い、足元を踏んでみるもやっぱり開かない。


 なんだ、このドアは!

 なんなんだ、このドアは!


 おいおい…いい加減にしてくれよ!


 俺は暇じゃねえんだぞ?!

 コッチは色々と忙しいのに!


 コン、コンコンコン!


 苛つく気持ちを抑えきれず、ドアを叩く。


 ばん、ばんばんばん!


 腹立たしい気持ちをドアにぶつける。


 ガッ…、ドカッ!!


 つか、マジでなんなんだ?

 ふざけんなよ?

 せっかくのカツカレーが冷めるだろうが!


 怒り心頭で、渾身の一撃をお見舞いしようと右足を後ろに引いた、その時。


 ……ガチャ。


 ドアが、開いて……


『うっせえなあ!もうちょっと静かにできねえのかよ!』


 うわ!!

 なんかめちゃめちゃ怖そうなおっさんが、出てキタ━━━━(゜∀゜;)━━━━!!


『おまえね、マジ礼儀がなってない!そんなんでいいと思ってんの?いい大人のくせに怒り任せにさあ!』


 ちょっと待て、なんで俺が怒られる?!


「そ、そっちが勝手に出てきたんだろ?!何回も何回も目の前に現れやがって!」

『ぬあんだと?!俺はな、てめぇが呼ぶから来てやったんだぞ?!』


 俺が呼んだ?

 ……いつ、どこで!!


「呼んでねぇし!!つか、カレーが冷めるんだよ!早くここから出せっての!」

『ああ?なんだ、お前はカレーが食べたいのか?!』


 ああ、食いたいね!

 今すぐこのおかしな空間を抜け出して、いつも通りの代わり映えしない日常に戻りたいんだよ!


『……ふん!』


 ドアがバタンと閉められて、存在感が薄くなっていく……。


 いつも通りの風景が、目の前に広がっている。


 俺は、100円自販機の横を通り、アパートの階段をのぼり、自分の部屋に入った。


 少し冷えたカツカレーを食べて、風呂に入って、ゲームをしながら寝落ちして、目覚ましアラームの音で目を覚まし、会社に行って働いて、コンビニでカツカレーを買って、100円自販機の横を通り、アパートの階段をのぼり、自分の部屋に入った。


 少し冷えたカツカレーを食べて、風呂に入って、ゲームをしながら寝落ちして、目覚ましアラームの音で目を覚まし、会社に行って働いて、コンビニでカツカレーを買って、100円自販機の横を通り、アパートの階段をのぼり、自分の部屋に入った。


 少し冷えたカツカレーを食べて、風呂に入って、ゲームをしながら寝落ちして、目覚ましアラームの音で目を覚まし、会社に行って働いて、コンビニでカツカレーを買って、100円自販機の横を通り、アパートの階段をのぼり、自分の部屋に入った。


 代わり映えのしない毎日がつまらない。


 何ひとつ変わらない日常から抜け出したい。


 ……みんな、こういう不満を抱えながら、生きているんだろうな。


 ……くさっているのは、俺だけじゃない。


 少し冷えたカツカレーを食べながら、ぼんやりと…思う。


 風呂に入って、ゲームをしながら、ぼんやりと…思う。


 いつの間にか寝落ちして、目覚ましアラームの音で目を覚ました俺は、いつも通りに会社に行って働いて、コンビニでカツカレーを買って、100円自販機の横を通り、アパートの階段をのぼり、自分の部屋に入った。


 少し冷えたカツカレーを食べて、風呂に入って、ゲームをしながら寝落ちして、目覚ましアラームの音で目を覚まし、会社に行って働いて、コンビニでカツカレーを買って、100円自販機の横を通り、アパートの階段をのぼり、自分の部屋に入った。


 少し冷えたカツカレーを食べて、風呂に入って、ゲームをしながら寝落ちして、目覚ましアラームの音で目を覚まし、会社に行って働いて、コンビニでカツカレーを買って、100円自販機の横を通り、アパートの階段をのぼり、自分の部屋に入った。


 ……なんだか、いつも、同じような日常を繰り返している気がする。


 ああ、刺激がほしい。彼女がほしい。金がほしい。夢がほしい。きっかけがほしい。チャンスがほしい。


 ……何かが、変わってほしい。


 いつも通りに、少し冷えたカツカレーを食べて、風呂に入って、ゲームをしながら寝落ちして、目覚ましアラームの音で目を覚まし、会社に行って仕事を終え、コンビニでメシを買って帰宅しようとした俺は、おかしなことに気が付いた。


 いつも歩き慣れている、歩道のど真ん中に……、ドアがある。


 ……なんだ、これは。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ぽつんとドアが立っているという光景で「どこでもドア」を思い浮かべました。 しかしながら、入っていたのは謎のおっさん…。 ドアは日常を繰り返す主人公の心がもたらした「非日常」なのかな、となん…
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