定番仕様の婚約破棄、公爵令嬢デボラの場合それはひと味もふた味も違っていた。
人生2作目の投稿です、昨日初めて投稿して誤字報告いただいて驚きました、クリックで誤字が修正できるんです。ありがとうございました。
評価とかもとても嬉しいです。
よろしくお願いします。
主たる貴族が集まる王都学園卒業パーティ
私公爵令嬢デボラの両親は視察があって今日は不参加、それを狙っていたかのように断罪がはじまった。
「デボラ、お前が聖女オーロラに行った悪行を忘れたとは言わせない」
シリルのいかにも王子らしい緑の目は憤怒の様子を表している。
婚約者のシリル殿下がこう言い放った瞬間に思い出した。
悪行ではなく、この物語のストーリー的なのを思い出した。
前世の記憶が一気に流れ込んできたのだ。
愛らしいピンクブロンドのオーロラが怯えた表情でシリルにすがる。
「デボラ様、あやまってくれたらゆるします」
シリルの左手に胸があたっているではないか。
シリルのテンションが目に見えて上昇する。
「教科書を捨てる!服を破るなどに加えて!ギルドに殺害依頼を出したなぁ!!!」
あー全部やったわ、全部やった、むしろ他にもやってる。
前世の世界では『なれたら』って小説投稿サイトがあった。
このシーンは、短編小説『聖女オーロラのダスティス』の後半だ。
何で知ってるかって?
私が書いたからだよ。
ダスティスってどういう意味かって?
知らねーよ、ジャスティスと間違えたんだよ。
イイじゃん、中二だったし、バカだったし、ほぼ誰も読んでくれてなかったし、これ一作だけだったし。
小説の中でデボラは最後に殺人未遂で牢に入れられる。
牢から出ることをゆるされず、デボラの豊かで美しい金髪はもつれて、紫の瞳から光が消え、着たきりのドレスはボロボロで臭いを放ち、取り巻きの誰も助けに来なかった。
それでも最後まで反省することなく「オーロラ死ね死ね死ね・・・」と、ぶつぶつつぶやきながら暗いネズミの出る牢でみじめに死んでいく。
最後まで握りしめていた、シリルの目と同じ色のエメラルドの指輪と一緒に・・・
そーいう結末にした。
書いたときはそんな感じのお話が流行っていて、ざまぁがスカッとするのでそういう結末にした。
我ながらうまく書けたと思ったけど、だーれも評価とかブクマくれなくてそれだけで終わった。
ちょっとみじめになって右手を見る
パパが鉱山と引き換えに西の魔女から手に入れたでっかいエメラルドを指輪にしてくれてる。
シリルと同じ色の緑のエメラルド、これを見ると心が落ち着くんだ。
ん、ちょっと気持ちが収まってきた。
良く考えたら殺人未遂で家族にも会えないで死んでいくとか無くない?
殺してないんだよ?
ひどくない?
当事者になって考えてみてよ、ひどいよね。
死にたくない
シリルがまだ何か言ってる
「デボラ、公爵令嬢であり、私の婚約者という立場を利用しー」
オーロラが上目使いで見上げシリルの左腕をギュってする。
ますますテンションがあがるシリル
シリル殿下、イケメンだって思ってたけどね。
そーでもない気がする
なんかお坊ちゃん感がにじみ出ててタイプじゃないな。
男はもっとこうワイルドな感じがいいよね。
などと考えている場合じゃない。
このままだとみじめに牢で死んでいく。
この時代の価値観から言っても、いや、この時代の価値観だからこそおかしいよ結末。
私が書いたんだけどね。
オーロラって元平民で男爵の養女、聖女って言ってもこの国には何人かいるし。
一方こっちは筆頭公爵家の一人娘だよ。
おまけに次期王妃だよ。
牢で放置されて死ぬなんてありえない!
王家の婚姻はいたって政治的なもの、国の政治を安定させ国力を高め、諸外国をけん制すると言う意味もある。
恋とか愛じゃなく政治なんだよ。
なので何度も注意して、言う事聞かないので学園に通えないように手を尽くした。
それでも王家の婚姻を壊そうとした聖女オーロラ。
そんな女を殺るのって当たり前じゃん。
国益を損なっているんだよ。
王家がサッサと動いてしかるべきじゃん。
まあ、ほぼ嫉妬なのが本音だけどね。
・・・死にたくない!
ギルドの手配はパパがしてくれた、ん?って事はパパも死んじゃうのかな?
ママは?ママはどうなるんだろう?
弟は?まだ9歳なんだよ、どうなるんだろ?
ダメだ!死にたくない!
あと10秒ほどで決め台詞をシリルが言うだろう「許しがたい罪状の数々牢へ連れて行け!!!」って
もう出来ることは何もない、詰んだ。
せめて一矢報いたく―――
思いっきり跳躍すると
でっかいエメラルドの指輪をはめた拳をシリルの顔に叩き込んだ。
スナップをきかせて
放物線をえがいてキレイに後ろに倒れるシリル、吹出す鼻血
一瞬脳裏によぎる『これストレートってやつだわ前世のマンガで読んだわ』
続いて左手で、オーロラのピンクブロンドを引っ掴む
オーロラをぶざまにひき倒してやろうと、力任せにピンクブロンドを引っ張った。
「ギャーーーー」って悲鳴上げたのはあたし
「ギャーーーー」もげた?頭がもげた?
オーロラの頭がとれた!
怖い怖いこわい、ナニコレ怖い。
頭もげるって、こんなに簡単にもげるって聞いてない、やだもう。
手の中のピンクブロンドを悲鳴をあげて振り払う。
指に絡んでとれない、なんだぁ?
ん?
ヅラ?
ヅラじゃん、よかったぁ、頭もげてない
なんぼ何でも頭もげたら怖い、気持ち的に死ぬかと思った。
もうすぐ死ぬんだけどもね。
え!?ヅラ、理解が全然おいつかない、なんね?
オーロラが頭おさえて尻もちをついている・・・おとこ?男じゃん、なんかよくわからない?
ビックリしてたらオーロラが手を伸ばして立ち上がりながら、こっちに向かおうとしてきた。
やだ、怖い、こないで
怖いので、でっかいエメラルドの指輪の拳でオーロラの顔面を上から撃ち抜いた。
オーロラの起き上がる力と打ち下ろす力が合わさって、オーロラが泡吹いてダウンした。
再び脳裏によぎる『これカウンターってやつだわ前世のマンガで読んだわ』
足元でシリル殿下は鼻血を出してぶっ倒れている。
オーロラ?なんかな?これ?泡吹いてぶっ倒れている男、オーロラなん?
でも、なんかスッキリした。
牢で死ぬのは嫌だけどやれることはやった。
パパ、ママ、弟よ、姉ちゃんは一矢報いたよ。
右手がめっちゃ痛い。
矢でも鉄砲でも持ってきやがれ、やけくそになって周りを見渡すと何か様子がおかしい。
衛兵も騎士も、貴族たちもみな目をパチパチとしている。
右手が痛い、ずきずきする、頭も痛い、くらくらする、視野がゆっくりと狭くなる。
右手が痛くて目が覚めた、牢の中なんだろうな、目を開けたくないと思いながら
牢の中にしてはなんか明るい、こわごわと目を開ける。
「お嬢様が目を開けられた!」報告に走る執事のマーク、侍女のラーラがいる、パパとママと弟が部屋に入ってくる。
鼻にでっかい絆創膏をしたシリル殿下も入ってくる。
みんなズビズビ泣いているので、私もなんかわからんけど泣いた。泣きながら色々聞いた。
聖女オーロラって思っていたのは隣国の工作員。
ピンクブロンドのヅラは魔道具で、可愛く見える認識阻害の魔法と魅了の呪いを発動していた。
王家に騒動をおこそうと企んでいたとの事。
あのでっかいエメラルドには呪い返しとパンチマシマシの付与とか他にも色々とついていた。
鉱山と引き換えだったのも納得で、西の魔女は褒美を与えられた。
私の右手の甲は折れていた、名誉の負傷だな。
シリルと結婚した。
政略結婚で隣国へのけん制もあるし、政治的なものなので結婚するしかなかったのだけどね。
へへへ
シリルには体を鍛えてもらって、私好みになるように教育してていい感じに仕上がってきてる。
相変わらずエメラルドの指輪は身につけている。
オーロラの頭がもげたって思った時が一番の修羅場だった、あれは怖かった。
書いていて楽しかったです。
たくさんの中から選んでいただき、最後まで読んで下さってありがとうございます。
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