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錬金術師は人間観察がお好き  作者: 猫田 トド
三章 消えた虎児
30/85

閑話

どなたか評価をしてくださった方がいらっしゃる!

ブクマをしてくださっている方々もいらっしゃった!!

今の今まで見てませんでしたorz

というか、そういう機能があることを忘れていました……orz

大変申し訳ございません><;

ありがとうございます!!



 うめき声と共に一人の男が頭を掻きむしる。白い手が銀の髪をぐしゃぐしゃに乱す姿を、女は壁際で見つめていた。そして、そうさせる原因の一つに己の失態がある事を知っていて、俯く。


 クソが、と幾度も繰り返される言葉。その合間に紡がれる呪いの言葉。そして、あああ、と意味のない怒りの咆哮が迸った。


 かれこれ何時間が経過したのだろうかと、ふと考え、そっと目を伏せる。


「申し訳ありません、御主人様(マイロード)。私があの男の暗殺を失敗したばかりに……この失態、私の命で贖います」

「……ダメだよ……」


 男が何時間かぶりに女を見た。


 美しい菫色の瞳はガラス玉のように透き通っていて、どんな宝石より価値がある、と女は思う。


「ダメだよ」


 男はもう一度拒否の言葉を紡いだ。


「君とアレクは失えない。君たち程の優秀な者は百年に一度、出会えるかわからない。僕には君たちが必要だ」

「マイロード……」

「大体君は悪くない。今回は少々予想外の事が重なっただけなんだ。計画は完璧だったが、イレギュラーはどんな時だってある」


 そうだろうか、と女は考える。


 既に何度失敗したのだろうか、と記憶をたどった。


 始まりは女が男に勧誘されるより前だったらしいので、割愛するが、女が組織に入ってから、既に七年。その間、失敗した回数は両手に余る。一度失敗したらしばらく間を開け、一つ一つを繋ぎ合わせないようにする手腕は見事だが、それでも、それだけの回数を失敗しているのに、何故、男がああも固執するのか理解できなかった。


 そもそも数年前、魔人をぶつけて失敗した時点で手を引くべきだったのではないのだろうか。


 力こそが全て。力を極めた化け物のような男だった。闘う事は本能で、それなくしては生きられない。そんな思考のまま極め、魔人となった男。その強さは誰も敵わない。例え、この国一と言われるカインが魔人となったところで、差は歴然だった。そう言えるような男。それが、錬金術師とハンターの二人に敗れ、命を落とした。


 信じられない。


 有り得ない。


 もうこの時点で諦めるべきだった、と女は思う。


「次はどういたしますか?」

「しばらくは手を引くよ。ああもう! この僕がわざわざ髪の色も目の色も変えたのに……クソが……まさかアイツの精神を破壊するなんて……」


 爪を噛み、再び怒りの世界に入った主人を見る。


 女の脳裏には牢屋で自身を失い、ぶつぶつと呟き続ける男の姿があった。血走った目の焦点は合わず、ただひたすらに「神よ、何故。私を知らないなど」と呟く男の姿が。


「あの役立たずが……僕の錬金術の腕があるのに、必要とされるわけないだろうがっ! 錬金術の腕が役に立たないんだから、せめて擦り付けるのくらいはこなしてみせろよ! そしたら牢にぐらい顔をみせてやったのに! 僕直々に壊してやったのに!」


 男は苛立たしそうに壁を殴りつけた。


 白い手が傷つく。


 慌てて女は薬を手に男に駆け寄り、手を取った。握られた拳を開き、丁寧に手当てをする。男は手を振り払うことなく、大人しく任せていた。


「あの錬金術師がレドフォードを壊したのでしょうか?」

「ああ、そうさ。それも僕がやろうとしていた方法でね!」


 忌々しい、そう吐き捨てると、男は女を寝台へと誘い、押し倒した。女はそれに身を任せる。


「クソが。僕にアレがないからあの人は僕を捨てた。僕じゃあの人の役に立てない。アイツはあの人に選ばれたのに逃げ出して、それでも縋り付いているなんて許せるはずもない! 逃げ出したのなら、捨ててしまえばいい! 僕ならあの人の為に全てを差し出せたんだ!」


 乱暴な行為。


 繰り返され、慣れた女は衝撃も痛みも上手にやり過ごす。


 指先が男の背を撫でるように滑り落ちた。


「ああ、美しいよ。愛している」


 微笑む男を見上げる。


 女は己の目元を隠す布越しに、男をじっくりと見つめた。


 美しい顔を歪め、微笑むその男はけして女を見ていない。彼の賛辞も、愛の言葉も、全ては誰かの為。それでもいい、そう思った。何しろ、今男の腕の中にいるのは自分なのだから。どれほど男が自身を誤魔化そうとも、男が自分を抱いているという事実に変わりはない。だから、それでいい。そう思った。


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