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夏のあいま

作者: 松岸煉歌

夏休み。僕は朝から宿題をやろうと思っていたのだが、どうにも気が乗らなかった。1度外へ出て気分転換でもしよう。玄関のドアを開けると、目の前に幼馴染の少女、エミが立っていた。

「久しぶりだね!」

僕は混乱した。エミは当然のようにそこに立っているが、僕はエミを家に呼んだ覚えはない。それに僕に用があるとも思えなかった。

「エミ…だよね?」

「そうだよ、どうかした?」

「あのさ…なんでここにいるの?」

すると、エミは急にしどろもどろになった。

「えっとお…なんていうか…通りかかったから寄った…的な?」

「通りかかったって言うけど、どこに用事があったの?」

「うーん…それはその…どこだろう?」

こちらに聞かれても困る。多分暇そうな僕のところにたまたま来ただけなんだろう、と思ったので、

「暇なら、これから僕とどこかに行かない?」

と聞いてみた。

「どこかってどこ?」

「まだ決めてない」

「そっかー、でも何だか面白そうだから行く!」

何を面白そうだと思ったのかはわからないが、とりあえず一緒に出かけることになった。


当てもなくぶらぶら歩いていると、散歩中の犬とすれ違った。犬は何かを察したのかこちらに向かって必死の形相で吠えてきた。飼い主が

「ほら、あのお兄さんは泥棒じゃないんだから吠えるのやめなさい」

と言ってもまったく言うことを聞く気配がない。僕とエミは思わず笑ってしまった。

コンビニの近くを通りかかるとエミが言った。

「ねえ、私は平気だけど、あなたはこんな炎天下を歩いて大丈夫なの?」

「ちょっと喉が渇いたかも」

「それじゃあ、あのコンビニで飲み物買おうよ!お店の中は涼しいし」

そう言われたのでコンビニに入った。飲み物を手に取りレジに向かおうとすると、すかさずエミが言った。

「ついでにプリンも買って行こう!」

「エミは食べられないだろ」

「ああ、それもそうだね。じゃああなたが食べてよ」

「僕が甘い物好きじゃないのはエミも知ってるじゃん、それにプリン溶けるし」

「えー、美味しいと思うんだけどなあ」

なんてことを話していると、店員が怪訝な顔でこちらを見ているのに気がついた。騒ぎ過ぎただろうか。このままレジに行くのも気まずいし、横でエミもうるさく言うので、結局プリンも買うことにした。


コンビニをでてバス停のところまで行くと、急にエミが深刻そうな顔をした。

「エミ?どうしたの?」

「ねえ、あなたは何で今日私と普通に喋ってくれたの?」

そんなの当然だろ、幼馴染なんだから。本当はそう言いたかった。そう言うべきだろうとも思った。だが口では違うことを言っていた。


「認めたくなかったんだ。エミが死んだなんて」


1週間前にエミは死んだ。今朝会ったときは驚いたが、幽霊になったのかなんて聞いたらエミの死を認めてしまうことになりそうで、何も聞けなかったのだ。

エミは優しく笑って言った。

「そっか。私てっきり忘れてるのかと思ってた」

「そんなわけないだろ、僕はそんなに薄情じゃないよ」

僕がそう言い返すとエミは

「ふふっ、あなたならそう言ってくれるかもって思ってた。良かった、最後に会えて」

と言う。

「最後って?」

エミはその問いには答えてくれなかった。

「本当に楽しかった、ありがとう」

それだけ言って、あっさり消えてしまった。僕は1人取り残された。


エミはプリンが好きだった。先程買ったプリン、仏前に供えたら喜ぶだろうか。僕は彼女の家に向かって歩きだした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後まで読むと、良い意味で切ない気持ちになりました。 もういなくなってしまったエミちゃんと、過ごせる時間を大切に、そして、楽しもうとする 僕 が、とにかく切ないです。 一緒に楽しい時間を過…
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