ガン&ブレット 君との初勝利
この作品は、ただいま連載中の作品である「人生が余りにもクソだったので、とりあえずネット小説を書いてみた」の息抜きで書いた作品となりますので、クオリティはそこまで高くないと思いますが、楽しんで頂ければ嬉しいです。
ガン&ブレット 君との初勝利
『各ペア、所定の位置に着いたか?』
教官の声が左耳に付けているイヤホンから聞こえてくる。
「和原颯人、佐々野玲奈。共に配置完了しました」
俺ー和原颯人は、愛銃である40口径のXD拳銃の安全装置を外しながら、そう教官ー立川教官に返した。
『水原、藤乃宮ペアも配置完了か。これより、ランクアップ試験を開始する。各ペアは全力を持って敵を排除しろ』
「「「「はい!」」」」」
4人の声が重なり、試験が始まった。
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「おい、佐々野。今日こそはチームプレイをして、絶対にあいつらに勝ちに行くぞ!
」
俺はそう意気込んで振り向くが、そこにはもう佐々野玲奈の姿はなかった。
「話してるそばからもういねぇし!」
実をいうと、俺と佐々野はこの試験をすでに4回も落ちていた。そして、本日の試験で通算5回目となるのだが、これまでの敗因は、この佐々野の個人プレイによるものだった。
佐々野は俺との連携は愚か、コミュニケーションも取れないために、毎度のことながら、完全なる敗北をきっしていた。
この惨状を見て、友人からはものすごく憐れまれ、ペアを解消した方がと本気で言われたものだ。
そして、今回の試験は俺らにとっては最後のチャンスだった。
さすがの教官も、俺らの成績を見て呆れ、今回の試験で勝利を掴めなければ、退学も余儀なくとの忠告を俺は教官からもらっていた。
それなのにだ! あいつはどうしてこうも勝手なのかね⁉
俺はため息を一つ吐くと、俺はXD拳銃を構え直し、校舎の中を探索していった。
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ここにもいないか。
俺は空き教室の中を探索し終えると、辺りを警戒しながら廊下を歩いていく。
今回の試験会場は、丸々校舎を使ったフィールドで行われている。そのため、屋上からの奇襲などに警戒して進んで行かないと、即失格もあり得るのだ。
ここまで、敵とのエンカウントは無しか。佐々野の奴もいねぇし。一体、どこにいるんだ?
この試験は、試験用に開発された専用のペイント弾を使って行われる。このペイント弾を相手の頭、心臓がある胸のあたり、もしくは、気を失った場合にその者は失格となることになっている。こうして、相手を先に失格させた方のペアの勝ちになる。
バン! バッバン!
「……っ!」
これは銃撃音! 音は部室棟の渡り廊下の方からか!
俺はダッシュで渡り廊下まで向かうと、そこで佐々野と今回の対戦相手である水原勇雄先輩との銃撃戦が始まっていた。
「佐々野!」
俺が佐々野の名前を呼ぶと、佐々野は俺のことをチラッと見ただけで、再び前にいる水原先輩と対峙していた。
佐々野が使用しているのは、SIGP226E2―シグザウエルとM9A1の2挺だ。いわゆるは2挺拳銃だ。対する水原先輩は、体格に合わせてか、デザートイーグルを使用している。
3年1組、水原勇雄先輩。名前の通り、筋骨隆々な体つきで、身長も180後半と高く、目つきも鋭いため、その鋭い視線で睨まれれば、誰しもが萎縮してしまうだろう。
そんな相手にでも、佐々野は萎縮することなく激戦を繰り広げている。
佐々野は個人戦においては、非常に優秀な成績を持っている。だけど、これはあくまでもチーム戦だ。個人戦で優秀でも、チーム戦では仲間との連携が鍵になる。だが、その連携が取れていなければ、チーム戦では致命的な欠点となる。
「悪いな、和原、佐々野。藤乃宮お嬢様のために、この勝負勝たせてもらおう!」
水原先輩は、己の得物を俺と佐々野に向けて乱射してきた。
ちょっ! その銃って反動がやばかったはずじゃ⁉
デザートイーグルは確かに強力な銃ではあるが、その分撃った時の反動もすごく、簡単に連射できるような物じゃないはずだ。
対して、佐々野は2挺のハンドガンを巧みに使い、その銃弾を撃ち落としていく。俺は俺で避けることしか出来ないでいた。
佐々野は迎撃しつつも、ハンドガンで反撃していく。しかし、さすがの水原先輩だ。佐々野の攻防自在の銃撃も回避や銃を使って防いでいく。
俺もXD拳銃を使って応戦するが、それさえも防がれてしまう。
「佐々野、ここは仕切り直そう。今のままじゃ分が悪すぎる」
「そんな時間なんて、与えるわけないじゃない!」
この声は藤乃宮亜希!
2年3組、藤乃宮亜希。俺と同じ2年で、藤乃宮グループのお嬢様だ。プライドが高く、自分が負けるとは微塵も思っていない態度を取っている。しかも、このお嬢様は極度に1年の佐々野玲奈に対して、敵対している節があるのだ。
「あんた達、わたしがいることを忘れてるんじゃないかしら!」
藤乃宮はM1911ガバメントを構えると、佐々野を照準する。
やばっ! つか忘れてねぇし!
「佐々野! 後ろ!」
「っ!」
俺の声は遅く、藤乃宮の撃った弾丸は佐々野のブレザーに着弾した。その瞬間、佐々野が着ていたブレザーは消滅する。
そう、この試験中は素肌以外の所つまり、服などに当たるとその部分が消滅するようになっているのだ。
「水原!」
「御意!」
今度は水原先輩のデザートイーグルが、佐々野のブラウスを消滅させ、淡い緑色のブラが露わになってしまう。
身ぐるみ剥がされてんじゃねぇか! 本当に、佐々野は2人以上の戦闘に慣れてねぇな!
「ほら! 今度はスカートよ!」
藤乃宮の奴、この状況を絶対に楽しんでやがる!
藤乃宮は宣言通りに、今度はスカートに着弾させて、スカートを消滅させた。それに従い、今度はブラと同じ色のパンツまでもが露わになっている。
さすがに恥じらいを感じているのか、佐々野の頬が朱に染まっている。
「くそっ!」
俺は藤乃宮と水原先輩に向けて、デタラメに銃弾をばらまくと、佐々野を抱きかかえてその場から離脱した。
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今は空き教室の一室に身を潜めていた。
隣にはあられのない格好をした佐々野も一緒にいる。
改めて見ると、佐々野ってスタイル結構良いんだな。胸もお手頃サイズでちょうど良さそうな感じだし。
俺がそんな感想を抱いていると、佐々野はいきなり俺に向かって目つぶしをしてきた。
「ああー! 目がぁー! 目がァァァァ!」
「先輩! いやらしい目つきでこっちを見ないでください! この変態!」
「いやいや、俺だって年頃の男子なんだよ! 健全な男子高校生なんだよ! 隣に下着姿の女子がいたらそりゃ見るだろ!」
「開き直るなド変態!」
「とりあえず……ご馳走様でしたぁぁぁぁ!」
「先輩のバカーー!」
今度は全力の平手打ちが飛んできたので、俺はそれを受け止めることしか出来なかった。
「それで一つ聞きたいんだけど良いか?」
「なんですか? 変態さん」
こちらを不審者を見るような目でこちらを見てくる佐々野を無視して、俺は佐々野に問いかける。
「えっとですね、どうして佐々野さんは、スポーツウェアを着ていないのかなと思いまして……」
そうなのだ。この試験は女子にはアレなため、女子はスポーツウェアを着用して臨むのが、女子の間では通例になっている。なのに、この佐々野はスポーツウェアを着用していなかった。それはなぜなのか、俺には分からなかった。
「先輩……また殴られたいんですか?」
佐々野はドスの効いた声で言葉を発し、こちらをゴミを見るような目で見ていた。
「だっだから、最初に聞いたろ? 一つ聞いていいかって?」
「だって、こんな質問だなんて思わないじゃないですか!」
「だって気になるじゃん!」
「先輩はバカなんですか? 死ぬんですか? それともドアホなんですか? でもまあ、それが先輩ですけど」
「それって褒めてんの?」
「これを褒めていると先輩が感じるのであれば、先輩は飛んだドMですね」
「あの~~いつも以上に言葉に棘があると思うんですけど……」
確かにデリカシーのない質問だったとは思うけど。
俺は少し反省してから、話を元に戻すことにした。
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「それで、奴らを倒す方法だけどなにか考えはあるか?」
俺は腫れた頬をおさえながら、佐々野にそう問いかけた。
先ほど遠慮なく殴られたせいで、頬がヒリヒリとしていて、ものすごく痛かった。
「私1人であの2人を倒します。変態な先輩と一緒になんて戦えません!」
「あのさ、お前最初から一緒に戦うつもりなんてなかっただろ! それにさっき1人で戦って負けかかってただろうが!」
「あっあれは、ちょっと油断しただけです! 油断しただけです!」
「超嘘付け! まぁ、いい加減これ着とけって」
俺はそう言って、佐々野に自身が着ていたワイシャツとブレザーを差し出した。
「ありがとう……ございます」
佐々野は素直に俺からワイシャツとブレザーを受け取った。
しかし、下着の上からワイシャツとブレザーと言うシチュエーションも、それはそれでそそられるものがあるな。
「先輩、また目つぶしされたいんですか?」
「待て待て、確かにそんな格好だからそそられるとは思ったけど、決してやましい気持ちを抱いたわけでは……」
「先輩、死んでください」
佐々野はこっちにM9A1を向けてくる。
ちょっ! ここで撃たれたら潜伏してるのがバレるっしょ!
俺は慌てて佐々野を止めるため、佐々野のことを押し倒してしまう。必然的に俺は佐々野に覆い被さる状態になってしまう。
「こんな所で押し倒すなんて、本当に先輩は変態です」
「それは佐々野が銃を撃とうとするからだろう」
「だからと言って、女の子を押し倒して良いなんっ……」
俺は慌てて佐々野の口を手で押さえた。もう片方の手の人差し指を立たせ、口元に持っていく。
佐々野は初めは不思議そうな顔をしていたが、次第に聞こえてきた足音を聞いて、納得と言った顔をしている。
「水原、奴らは見つけた?」
「いえ、まだ発見には至っていません。亜希お嬢様」
「まったく、どこに隠れたのですか? 相変わらず逃げ足は速いんだから。水原、あなたはあっちをお願い。わたしはこっちを探すわ」
「御意」
足音が完全に去って行くのを待って、俺と佐々野は離れた。
「えっと咄嗟にとは言え、すまん」
「いえ、こちらこそありがとうございます。あのまま、私が騒いでいれば見つかったのは確定ですから」
ほんとだな。てか、藤乃宮がアホで良かった。この中を探索されたら一発アウトだった。
「とにかく、こっちも反撃する手段をなにか考えねぇとな。佐々野はなにが思い付いたか?」
「私はなにも。先輩の方はどうですか?」
「俺も実はなに……」
もっと言いかけて止まってしまう。
本当にそうか? 俺はなにか見落としているんじゃないのか? 佐々野玲奈。個人戦ではSランクの実力を有している実力者。しかし、チーム戦では連携が取れずに、Fランクまで落ちてしまう。
だけど、そもそも佐々野のポテンシャルってどこにある? 俺は大事ななにかを忘れているんじゃないのか?
「あっ!」
「どうしたんですか? 先輩」
「佐々野、あるわ奴らを倒す方法!」
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俺は廊下を疾駆していた。あの後、佐々野と今日限りの協力を取り付けて、俺が考えた作戦を実行しているところだった。
大丈夫、きっと上手くいく。
俺は壁に隠れて、渡り廊下の様子をうかがう。そこには、辺りを警戒して歩みを進めている水原先輩の姿があった。
一気に勝負を決める!
俺は腰から手榴弾を抜くと、渡り廊下の中央に向けて投げ込んだ。
地面に落ちた瞬間に爆発。大量の煙幕が渡り廊下を包み込んでいく。
「っ! これは和原か!」
俺も全力でダッシュ。水原先輩がいるであろう所に、回し蹴りを一つ放った。
「ぐっ……」
小さなうめき声が漏れる。確かな手ごたえはあった。
続けて上段蹴りを放つが、逆にその足を掴まれてしまう。
見えたのか? この中で⁉
「オラァァァァッ!」
俺は片足を掴まれたまま振り回され、宙に投げ出されてしまう。
「見つけたぞ! 和原! 今度こそお前を仕留めてくれようぞ!」
デザートイーグルの銃口がこちらに向いている。こちらもXDの銃口を向けていた。
2つの銃口炎が上がったのは同時だった。俺の弾丸は水原先輩の弾丸は、ぶつかり合い、俺の銃弾は粉砕されてはしまうが、軌道を反らすことは出来たようで、俺の真横をすり抜けていった。
俺は着地すると同時に、後ろへ大きく飛んだ。コンマ5秒ぐらいの差で、デザートイーグルの弾丸が地面を穿った。
俺も負けじと弾を、撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ。しかし、水原先輩は、そんな弾丸の嵐に動じた様子もなくそこに立っていた。
「甘いな和原。こんなんじゃ、ちっとも響かんぞ!」
水原先輩は反撃とばかりに、デザートイーグルを乱射してくる。
俺は廊下の角に身を潜めて、その攻撃を凌ぐが、こんなの時間稼ぎにすらならなかった。
くそっ! 佐々野はまだなのか! とっとにかく時間を稼がないと!
俺は腰からもう1丁のXD拳銃を抜き去った。付け焼刃ではあるもののどうにか使えるだろう。
しかし、あの手の銃は撃った時の反動がすごくて、扱い難いって聞いたことがあるのに、それをなんの苦もなく扱っているところを見ると、相当な実力者であることがうかがえる。
俺が相手の出方を見ていると、足元に手榴弾が転がってくる。
これは衝撃手榴弾! まずいッ!
俺は前に飛んで逃げようとするが、あまりの衝撃で7、8メートルぶっ飛ばされてしまう。
「ぐっ……」
あくまで試験用に用意された手榴弾のため、威力は抑えてあるのだがそれでもものすごい威力だった。
俺は受け身を取ってダメージを殺すと、起き上がると同時に走り出す。
ぶっちゃけ、体は滅茶苦茶痛むが、後もう少し辛抱だ。きっと、佐々野がやってくれる。
「和原、終わりだ」
銃口がこっちに向いているが、俺は銃口の向き、高さ、そして、何よりも水原先輩の視線を辿り、着弾予測をしてそれをかわしていく。
「まだ、終わりません!」
俺も負けじと2つの銃を使って、応戦していく。
俺も水原先輩も身体中、インクだらけにはなっていたが、頭にも心臓にもヒットはしていなかった。
「それが逃げていた者の実力とはな。驚きだよ、和原」
「水原先輩こそ、その体に対して身軽すぎる」
俺は腰から予備の弾倉を取ろうとするが、なくなっていることに気が付く。
しまった! 弾が無い!
ここで付け焼刃でやった2挺拳銃の裏目が出てしまう。
2挺拳銃は強力ではあるのだが、弾の消耗がその分激しい。俺は普段から1丁しか使わない為、そこまでの予備弾倉を用意していなかったのだ。
「だけど、そこまでみたいだな。弾が無いお前なんて、ただの的に過ぎんな」
確かにそうかもしれないな。 だけど……俺の大元はこっちだ。
俺は銃を投げ捨てると、腰を落として全力ダッシュ! 一気に間合いを詰めていく。水原先輩は、次から次へと乱発してくるが、俺はそれを避けていく。
足の鞘からコンバットナイフを抜き放つと、斬りあげる。それは水原先輩が持っていたデザートイーグルを斬り飛ばした。俺はがら空きになった水原先輩の脇腹に向けて、蹴りを放つ。
「ぐっ……図に乗るなよ! このFランがァァァァッ!」
殴りかかろうとしてくるが、俺はそれを宙返りでそれを避ける。その際に、顎に蹴りを入れることも忘れない。
顎を抑えて後退する水原先輩。
これなら行ける!
ここで一気に勝負をかけようとした、だけど、背後に違和感を感じて俺は立ち止まった。
「チェックメイトよ、和原君」
「藤乃宮か。チッ、お前は佐々野の方に行ってるとばかりに思ってたのに、こっちに来てたのか」
「あんな子なら、あんたを退場させてから、ゆっくりと狩れば良い。本気を出したらあんたの方が厄介だからね」
「だから、こっちに来たと……それは少し買いかぶり過ぎじゃあございません?」
「そっそんなことないわよ!」
はっきりと断言する藤乃宮。しかし、俺はそんな藤乃宮に笑うことしか出来なかった。
「何がおかしいの?」
「いや、本当の脅威ってのは、後から分かるもんなんだなって思っただけだよ」
「負け惜しみも大概にしなさい! この状況で和原君が勝てる見込みは皆無じゃない!」
藤乃宮がこっちを照準しているのが、肌で感じ取れる。
「確かにそうかもな。だけど、本当の勝者っていうのは、例え勝機が1パーセントに満たなくても、勝ちを掴むのが本当の勝者なんだよ!」
タイミング良く、スマホがメッセージを受信する。
「チェックメイトはそっちだよ、藤乃宮」
「だから、負け惜しみはやめなさい! もう良いわ、せめて一瞬で終わらせてあげる!」
藤乃宮はそう言って銃の引き金に手を添えるが、藤乃宮がそれを引き絞るよりも早く銃声が響き渡った。そして、俺の目の前で立っていた水原先輩が倒れる。
「えっ?」
藤乃宮の口から困惑の声が漏れた。
「みっ水原! 水原!」
藤乃宮は頻りに水原先輩の名を呼んでいるが、返ってくる言葉はなかった。
意識の消失つまあり気絶したということなので、水原先輩は失格と言うことになる。
「あなた何をしたの?」
藤乃宮はこちらを睨みながらそう問い質してくる。
「別に何もしてないですよ。俺らはルールに則ってこの試験を全力でこなしただけです」
「ふざけないで!」
藤乃宮が俺に歩み寄ろうとした瞬間、藤乃宮のブラウスとスカートが消失し、ピンク色のエロい感じの下着が露わになった。
突然のことに俺も藤乃宮も困惑してしまうが、すぐに藤乃宮の悲鳴が響き渡る。
「みみみ見るなバカ!」
いやいや、そこで俺は問いたい。なぜスポーツウェアを着用してないのと。そして、なぜにエロ下着⁉ マジでご馳走様です! 貧乳だったけど!
俺の考えが伝わったのか、藤乃宮は俺に向けて銃を撃とうとするが、その前に銃声が響き渡り藤乃宮も意識を失ってしまう。そして、
『勝負あり! 勝者、和原・佐々野ペア!』
教官が試験終了を告げる声を上げた。
「藤乃宮、お前たちは満身し過ぎたんだよ。そして、佐々野を舐めすぎた」
俺は部室棟の屋上にいるであろう佐々野に向けて、手を挙げた。
こちらの様子に気づいた佐々野も、こちらに手を振り返してくれる。
そう、俺たちはルールに則って全力で試験をこなしたのだ。佐々野の長所を生かす形で。
佐々野の長所は、個人戦での実力もそうだが、もう一つ最大の長所があった。それは、全ての銃を扱えるということだった。そして、その中でも1番得意の銃がライフルだった。
だから、俺が囮となってあいつらを佐々野の狙撃ポイントまで誘いだしたのだ。しかも、あいつらの戦い方は、止めは必ず藤乃宮が差していた。あいつらの場合、2人は固まっていないようで、固まって行動していることが多かったので、それを逆手に取ったのだ。
俺は未だに屋上に立っている佐々野に向けて、笑いかけてやる。
佐々野も笑いかけてくれる。
そういや、佐々野が笑ってるのって初めて見たかもしれないな。
俺がぼんやりとそんなことを思っていると、外で風が吹いたのか、着ていたワイシャツがめくれ上がり、再び淡い緑色のパンツが露わになっていた。
俺は慌てて視線をそらすが、時すでに遅く、佐々野の目が据わっているような気がした。
やばっ! てか、今のはどう考えても不可抗力だろ!
俺は全力で逃げるが、佐々野もライフルで俺のことを狙い撃ちしてくる。
まぁ、何はともあれ、俺たちは初勝利を掴んだのだった。
END.
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