7 ギルド
ボウッ!!
炎が燃え上がる。
スグル達三人はそれを囲むように座っていた。
「もう旅を始めて三日よ」
レーヌが不機嫌そうに言う。
「目的がないとやってらんないわ、目的地は分かったわ!目的よ!目的!」
そう続けた。
無理もない。
三日間何もなかったのだ。
ただ歩くだけ。それだけだった。
途中の町に立ち寄ってみたものの軍隊の接近で逃げてしまったようだ。
よって、会話をするにもこの三人のみ。
新鮮味がない。
「俺はここ三日間で思ったことがあるよ」
炎を見つめながらそう言った。
「通ってきた町の住民は軍隊から避難してるのを見ただろ?おかしくないか?」
スグルの顔にはかすかに怒りの色がちらついていた。
「力のないものは力のあるものの陰にいなければいけないのか?強いものが大きく振舞って弱い者はこそこそしないといけない世界なんてダメだ!」
決心したような目つきで言った。
「俺は決めたぞ争いなんてない皆がのびのび暮らせる世界を作り上げてやる」
ザッ!!
スグルは立ち上がった。
「デカい勢力を敵に回してしまうかもしれない、だから、ここからは・・・・・・」
「バッカじゃないの!!一人でなんて行かせないわよ?」
レーヌが口を挟んできた。
「スグル一人じゃできることなんてたかが知れてるしね~」
アンも意地悪っぽく行ってきた。
スグルはいい仲間を持ったと思った。
ガサガサッ!!
突然、木の陰から人影が現れた。
夜だからよくわかる。
目が赤く光っている。
おそらく、獣の類の種族なのだろう。
スグル達は戦闘態勢に入った。
レーヌが真っ先に攻撃しようとした。
「ままま待ってください!!」
慌てたように言った。
攻撃されそうなのだから当たり前だ。
「レーヌ!!」
話だけでも聞こうと攻撃を止めるようにスグルは叫んだ。
「どうしてあんなところから出てきたの?」
アンは聞いた。
自分の感知能力で感知できなかったことにちょっぴり悔しそうに聞いた。
「森からずっとあなた達をつけて来たんです」
三人は驚く。
「じゃあ、あの軍隊の仲間?」
レーヌはすぐにでも技を繰り出せるような態勢で聞いた。
「いえいえ、僕はあの森の木の上に住んでいてたんです。軍隊が来てどうしようか迷っていたときにあなた達が森を通っているのを見かけて着いてきたんです」
炎の灯りで見えるようになったから種族が分かった。
エルフだ。
耳が横に長く尖がっている。
大人でもガキでもないって感じの見た目だ。
おそらく俺たちの中で一番年下だ。
そうスグルは考えていた。
「あなたたちの仲間に入れてほしいのです。先ほどの話も全部聞いていました。覚悟はできています。どうかあなたたちのギルドに」
「ギルド?」
「国レベルの団体ではなく、少人数の団体のことです。人数は1人の単独ギルドもあれば、100人以上いる大型ギルドもあります。ギルドは広い領地は持たず一つの建物などを拠点にします。もちろん、拠点を持たず世界を転々と旅するギルドもあります」
「ギルドってどうやって作るの?」
「あなた達のようなのがギルドなのでもう作られているも同然ですよ。ギルドは自由に作れます。勢力的に他の大きなギルドに吸収されてしまうこともありますが・・・・・・有名なギルドは『竜の翼 (ドラゴンウィング)』、『海の王 (シー・ゴッド)』、『王国の心臓 (キングダムハート)』あたりですね、ギルドは活動していればギルド名が有名になっていきます」
「なるほど、目的が似ている奴らを仲間にしていけるかもな。君の名前は?」
「コロンです。第2期で来ました」
「どうしてそんな情報を持っているんだ?」
ずっと気になっていた。
情報量が膨大すぎるのだ。
「僕、耳がいいんです」
「どういうこと?」
「森でに軍隊が入ってきたとき多くの兵たちが喋っていたのが聞こえたんです。夜中いったんあの軍隊は森の中で休憩しているんですけどそのときに一気に情報が来ましたね。100メートルくらいの範囲ならはっきり聞こえます」
「レーヌ、アン、仲間にしてもいいか?俺こいつ仲間にしたいんだけど」
「賛成よ」
アンは言った。
「まあ、いんじゃない?」
攻撃態勢をやっと解きながらレーヌも渋々許してくれた。
「ありがとうございます!!」
コロンは深々とお辞儀した。
「裏切ったりしたら殺すわよ」
レーヌは冗談なのか冗談じゃないのかわからないトーンで言った。
たぶん本気だ。
スグルはそう感じた。
「んじゃ、折角だしギルド名考えよう!」
「『希望の光 (エルピスオール)』」
アンがつぶやいた。
「長いかしら?」
「いや、すごくいい」
「そうね」
「素晴らしいと思います!」
結構、すぐに決まった。
これから、希望の光 (エルピスオール)として旅が始まる。