5 侵略
「あの地域はまだどの国の領土ではないはずだ」
「最近、どの国も領土を拡大している」
「すぐにでも」
「同意」
「我らキャンベラ王国のために全力を尽くせ!!」
「「「「「はっ!!」」」」」
スグルがこの世界に来る五日前とある国でこのような議論が行われていた。
『あの地域』は今まさにスグル達三人がいるところであった。
そして、今まさにその森の入り口に辿り着いた。
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そのころスグル達は猛特訓中。
「だからそうじゃないってば!!何回言ったらわかんのよ!!」
「しょうがないだろ!能力とかそういう類の使うの今日が初めてなんだからさ!!」
「まあまあ二人とも落ち着けって」
スグルとレーヌの言い合いにアンが仲裁に入る。
「いい加減威力の調整くらいはしなさいよね」
「強いのにこしたことはねーだろーがよ」
「屁理屈!あんたのこと今日から屁理屈マンって呼ぶわ!」
「好きにしろ!このわからずやが!」
ゴチッ!!
額と額をぶつけてにらみ合う。
「お前ら~」
命の危険を感じたので一旦争いを止めた。
アンには逆らえない二人は心からそう感じた。
「じゃあ、今日はこのくらいにして帰ろうか」
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そのころ異世界委員会本部では最高幹部10人が集まり話し合っていた。
「第四期を投入しておもしろくなってきそうだな」
「この計画の真の目的に気づく者はいるのか、楽しみだ」
「そうすれば素晴らし世界の完成だ」
本部には無数のモニターが設置されておりスグル達のいる世界を見ていた。
「まあ、ここからだ。面白くなるのは」
この一人の何気ない発言が後に大きな大事件と大きく関わってくることを残りの9人は予測すらできなかった。
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スグルは家に帰っても能力を扱おうと椅子に座って人差し指をくるくる回していた。
小さな空気の球が一つ指の上に出来ていた。
「よし」
スグルは悪そうな顔をしてレーヌの方を見た。
「なによ」
レーヌは怪訝そうにスグルを見た。
ひゅっ!!
スグルは空気の球をレーヌの方へ飛ばした。
加減できたと思ったからだ。
レーヌもなめたようにそれが身体に当たるのを避けようとしなかった。
ビリっ!ビリビリビリ・・・・・・
予想外の効果だ。
なぜなら、レーヌの服を切り刻んだからだ。
レーヌにはダメージはなかった。
ファサッ・・・・・・
服がすべて床に落ちた。
レーヌの生まれたままの姿をガン見してしまった。
慌てて顔を下げる。
「わりっ!!」
そう誤りながらも胸の大きさ、形、くびれ、スタイル、足の綺麗さ・・・・・・
スグルの頭の思考が止まらなかった。
もう一度見たくなった。
男ってなんて生き物だと思った。
欲を抑えられず顔を上げる。
同時に顔面にパンチを喰らった。
後ろからもドロップキックが飛んできた。
女って怖い。
そう思ったスグルであった。
その時、アンの耳がぴくんと動いた。
「まずいな、森からかなりの人数がこの地域に向かってきている」
「あと五キロしかないのはやばくない?」
レーヌが心配そうに聞く。
「いや、あの森だからまだ時間はある。それに日も暮れているしな」
真剣に考えるアン。
「歩いているようだし明け方までなら時間はある。旅立ちの準備だ」
そう言って三人は身支度を始めた。
何かの終わりは新しいことの始まり。
今がその時なのだろう。
窓から夜空を見上げてスグルはそう考えた。
次回 旅立ち