12 母
「母さん、ここはどこなの?」
一通り現状を理解したところでスグルは聞いた。
「ここはあなたの心の中って言うのが一番正しいかもしれないわね」
「心の中?」
「そう、彼と私はスグルと別れる前私たちの魔力をあなたに入れ込んだのよ」
「あれか」
スグルは額に人差し指を二人に当てられていたのを思い出した。
「そう、あなたの魔力に反応して発動するようにしておいたの」
「でも、前にも風の魔法を使ったよ?」
「あれはこっちの世界に来るときに与えられた能力でしょ。あなたと別れる前あなたを人間の姿にしたのをみたでしょ?」
スグルは頷く。
「あの時魔力も使えないようにいたのよ。でも、今の戦いで使えないようにしていた魔力があなたの爆発した感情で少し反応したのよ。あなたの本来持つ魔力が」
「俺はいったい・・・・・・」
「ごめんね、スグル。私達が掟を破ってしまったばっかりに」
「どういうこと?」
「わたしは天使、そして、あなたのお父さんは堕天使なの。本来、天使と堕天使は交わってはいけないという掟が私たちのところにはあったの」
「堕天使っことは魔族?」
「そうね。天界と魔界」
「なんで・・・・・・」
「私は一度謝って魔界に迷い込んでしまったことがあるの。魔界の住民に見つかり追い回されたわ。でも、ある森に入ったときその森に住んでいた堕天使に助けてもらったのよ」
「それが俺の父さん?」
「そうよ、とても優しくしてくれたわ。天界では魔族はみんな悪い奴って教育なんだけれどそうじゃなかった」
「それでどうしたの?」
「私は彼の家に二週間ほどかくまってもらったわ。その二週間で私は本当に彼を好きになっていたわ」
「へえ」
スグルは恋バナに思わずにやけていた。
「そして、私は天界に帰るのだけれど私はその当時、天界と魔界を自由に行き来できる秘密のルートを見つけてしまったの」
「どうせ必死に探していたくせに~」
スグルはからかう。
図星のようだ。
ヘレナは顔を赤らめる。
「それから私は頻繁に彼に会いに行くようになったの。会うにつれて彼も私を好きになってくれた」
ヘレナは懐かしそうな目をした。
「ある日、彼から気持ちを伝えてくれたわ。その日の夜、私たちは契りを交わしたわ」
「それで、俺が生まれたのか」
「ええ、でも魔界の者にばれてしまった。そこからはあの映像の通りよ」
「そっか」
「ホントにごめんね。お父さんもお母さんもそばにいてやれなくて」
「大丈夫」
「もう、あなたは本来の自分の魔力を使えるようになってるわ。ちなみに、あの世界は異世界委員会が創ったものではないわ。私たちが生きていた世界なの」
「え・・・・・・?」
「私達のあの行いが天界と魔界の戦争を生んでしまったの。戦争で生き残った者は天界と魔界合わせてもほんの数人らしいの。その一人がスグルあなた」
スグルは黙り込む。
「だから、あのゲームだと言っているのは嘘。そのリングも。すべてカモフラージュのための細工」
「・・・・・・」
「だからホントに現実世界と一緒、死んだら終わりなの」
「・・・・・・そっか」
小さな声でスグルは呟いた。
「もう・・・・・・時間みたい」
悲し気にヘレナは言う。
周りが光の粒になり空へ消えていく。
「スグル。本当にごめんね。私達が・・・・・・」
「わかってっから!!」
「スグル・・・・・・」
「俺はこの年まで一人で孤独だった。辛かった。でも今ちゃんと親に愛されてたんだなって感じてすげー嬉しいんだ」
ヘレナの目に涙が溢れてきた。
「俺はまだまだ全然弱いけど。ちゃんと仲間もいる。守りたいやつができた」
「そうね」
ヘレナは笑顔で泣いている。
色んな感情が溢れてきた。
「だから、大丈夫!後悔なんてしないでよ。俺を生んでくれてありがとう。後は任せろ!母ちゃん達がこの世界ぶっ壊してしまったなら俺が創り直してやるから」
その言葉にヘレナはどれほど救われたことだろう。
ヘレナはスグルに抱きつく。
「ありがとう。生まれてきてくれてありがとう」
「ああ!空の上から見ててくれ」
「うん!!」
そう言ってヘレナは消えていった。
この空間も消え、再び身体に激痛が戻ってきた。
しかし、もうスグルは覚悟は決まっている。
拳を強く握りしめ目を開けた。




