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頑張れ、受験生!

作者: げっすー

これは、作者が大学受験の時、実際に体験した出来事を記載しています。

これから受験を行う学生達には一度読んで貰えると幸いです。



◆◆◆◆◆◆



「あ~、受験だりぃ……」


試験会場を前にし、僕は一際大きな声でぼやいた。


今日はセンター試験当日。

周りを見ると、皆緊張の面持ちで足取り重く会場へと歩みを進めている。

目元にはクマが出来ている人もいる……満足に寝ることも出来なかったのだろうか。

一方の僕は実家から最寄の会場まで10分ということもあり、ぐっすりと睡眠を取る事ができた。


「おーおー緊張しちゃって……人生かかってますもんねぇ」


僕の言葉に、皆耳を貸すことはない。

それだけプレッシャーを感じているということだろう。


そんな中僕は、余裕の表情で闊歩している。

僕だって皆と状況は同じ……なぜここまで差があるのか。


人一倍勉強したから……違う。

緊張しないタイプだから……違う。

正解は……“何とかなると考えているから”である。


僕が在学する高校は、県内でもそこそこの進学校である。

その高校に入学が決まった時点で、僕は既に調子に乗っていた。


“自分は人より勉強ができる、頭がいいんだ!”


いつしかそう考えるようになり、勉強する事自体を放棄したのである。

当然学校での成績はボロボロ……だが、何故か心は自信に満ち溢れていた。

“本気出せばすぐにできるさ、何とかなる何とかなる……”


そうこうしているうちに、あっという間に時間は過ぎ去り……受験シーズンが到来。

ここでも僕は一人で余裕を気取っていた。

周りが受験モードになる中、一人勉強しているフリをしながらゲームや漫画三昧の日々を過ごしていたのだ。


やった勉強と言えば、センター試験数日前に1年分の過去問を解いただけ……しかも採点はしなかった。

このように、完全に受験を舐めきっていたのである。



会場の席に着き、用紙が配られている間も、余裕の笑みがこぼれる。

どこからこんなに自信が沸いてくるのか、ここまで来ると自分でも分からない。

ただ、心の奥底に“なんとかなる”という太い幹がある為、その自信が揺らぐことはなかった。



「それでは、始めてください」


試験管の掛け声で開始が合図されると、室内中に紙を捲る音が響く。


今しがた始まった科目は国語……最初は現代文の“漢字の読み書き”に関する問題であった。

僕は一問一問解答を進める度に、笑いが堪えられなくなった。

全く勉強をしていない僕が、8割以上解答できたのである。


ふふふ……必死になって漢字を覚えていた奴ら、ざまぁ見ろっ!

どれだけ時間と労力を費やしたか分からないけど、満点だったとしても僕と2~3点ほどしか変わらないんだぞっ!

いやーホント、滑稽だな。

受験なんてこんなもんでしょ、よゆーよゆーっ!


僕は、元々大得意な科目である【地理】と、【現代文】の二つだけで受けられる大学に出願を行っていた。

ちなみになぜ現代文かというと、日本人なんだから勉強なんてしなくても大体分かるだろ……という安易な考えからである。


先ほど受けた地理に関しても、上々の出来であった。

この現代文でも幸先良いスタートを切れた時点で、僕の心の中で受験は既に“終わったもの”として考えるようにまでなっていた。


その後の問題についても、予想以上に簡単なモノばかりであった。

ざっと一通り解答をし終え、時計を見やる。

まだ30分ほど時間は残っていた。


「ふふ……」


小さく声が漏れてしまうほど、僕はほくそ笑んでいた。

勝った……僕は“受験”という大きなイベントを、”無勉”というスキルで乗り切ることができたっ!


僕は意気揚々としながら冊子を閉じようとした……その瞬間、妙な違和感を感じた。


「……ん?」


一度閉じかけた冊子を、再度開く……。

そして僕は、冊子の右上に記載されている文字に注目した。


「……え」


そこには、【国語Ⅰ】……確かにそう記載されていた。


【国語Ⅰ】……今の受験生は、知らないであろう。

これは2005年までに実施されていた制度で、当時の国語は【国語Ⅰ】と、【国語Ⅰ・Ⅱ】という形で、2パターンに分かれていたのだ。

なぜ分けていたのかは知らないが、内容的に難しいのは【国語Ⅰ・Ⅱ】の方で、ほとんどの大学は後者の内容を受験科目として採用している状況だった。


当然、僕が申し込んでいたのも【国語Ⅰ・Ⅱ】の方。

つまり僕は、やるべき科目を間違えていた……という事である。


こんなの受験勉強を散々やってきた人たちであれば当たり前に知っている事だったのだが、

ろくに準備をしてこなかった僕は、その事をよく理解していなかったのである。

同じ冊子内の前半部分に“国語Ⅰ”が用意されており、受けるべき【国語Ⅰ・Ⅱ】は後半部分に用意されているという事を……。


「……嘘でしょ」


それに気付いた瞬間……僕は背筋が凍るのを感じた。

額には冷や汗が吹き出し、指先が震える……。

馬鹿な……嘘だろ……どうする……。

頭の中を様々な考えが巡り、目の前の景色が歪んでいく。


しかしそんな事をしていても、どうしようもない。

手の甲を思い切り抓って我に返ると、冷静に現状の問題についての解決策を思慮する事にした。


僕に突きつけられてた、人生最大の選択肢は以下の二つ。

①今から【国語Ⅰ・Ⅱ】をやり直す

②このまま【国語Ⅰ】を続けて、事後出願で受験可能な大学がある事に賭ける


通常で考えれば、①を選択するのが無難であろう。

だが、残り時間は25分程度である。

果たしてまともに解くことができるのだろうか?


一方②については、ただでさえ【国語Ⅰ】を試験科目として採用している大学は少ないと聞く。

その上で【事後出願】が可能な大学はいくつ存在するだろうか……。

(事後出願とは、受験終了後に大学側が出願を受け入れるという制度。出来栄えの良し悪しで出願出来るというメリットがある一方、その制度を採用している大学は極々僅かである)

極めつけは、それを確認する手段は受験が終了した後でないと不可能であるという事だ。


どうする……どうする……どうする……っ!


舐めきっていた受験という場で、究極の選択を迫られる僕。

この選択を誤ると、今後の人生に大きな影響を与えるのは必至と言えよう。


うぉぉ……うぉおおおおおおおおっ!!!!


僕は心の中で、何度も何度も咆哮した……!




……結局。

僕は悩みに悩んだ挙句、②の方を選択した。

あの精神状態でやり直しても、焦ってロクに解答が出来ないだろうと踏んだからだ。


ここで試験官から終了の声がかかる。

皆一様に安堵のため息をついていたが、僕だけは未だ廃人の如く机の上に突っ伏していた……。



◆◆◆◆◆◆



その後僕はどうなったかというと……見事、志望する大学に進学を決めていた。


関東の大学内で、事後出願かつ【国語Ⅰ】の現代文を受験可能科目としていたのは、たったの2校であった。

そしてたまたまそのうちの1校が、僕が志望していた大学の志望していた学部だったのである。

さらに言うと、その年の国語Ⅰは例年以上に簡単な問題だったらしく、逆に【国語Ⅰ・Ⅱ】の問題は難しかったようで、かなり平均点も低かったらしい。

試しに【国語Ⅰ・Ⅱ】の問題を解いてみたが、採点をしてみた所、志望校の合格点に達していないという結果となった。


……つまり、僕は奇跡に近い強運でこの受験を乗り切ったのだ!


しかしもう僕は他人を馬鹿にするような考えが浮かぶことはなかった。

むしろ過去の行動を戒め、これを機に心を入れ替えて大学生活を送ろうと誓ったのである……。



そんな僕から、皆に伝えられる事は以下の通り。

油断はするな……そして頑張れっ!

皆さんの健闘を祈っています!

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