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永遠の謎

作者: YokohamaMiddle

子供たちに夢と教訓を与えるような小説を書きたいと思い申し込みました。


残念ながら完ぺきとは言い難い神様や、決して高尚とは言えない王様や首相が、それでも一生懸命折り合いをつけて良い国を作ろうとしてます。


そんな彼らの姿を通して完璧じゃなくても一生懸命みんな頑張ってきた結果が今の世の中なのだと、子供たちが感じてくれればと思います。

昔々、ある国に楓、深雪、日向子、渚という名前の四人の意地悪な若い女が住んでいました。


四人はそれぞれに美しく、多くの男の子にモテて大変楽しく暮らしていました。



楓は秋が大好きな一番の年上のお姉さんです。少し大人っぽい女の子好きな男の子にモテました。


紅葉の季節に軽いセーターと長いスカートで歩くと、すれ違う男の子達がこっそり振り返るのが面白くてたまりません。


夏に可愛い男の子に目を付けて近付きます。夏の終わり頃に少し大人の女の子の魅力を見せると男の子は背伸びして大人のように告白してきます。


秋は男の子に奢ってもらってデートを繰り返し、冬の終わり頃に他に好きな人が出来たと言って別れるのです。


可愛い男の子が顔を真っ赤にして、涙をいっぱいためた目で楓を見つめながら、「なんで?」って言うのを聞くのが大好きでした。


春は大嫌いです。だって春は若葉の季節で、いくつになっても子供っぽい日向子ちゃんの方がモテるんですもの。


他の女の子の方がモテる季節なんて許せません。



深雪は冬が大好きなスノーボーダーでした。スキーやスケートで雪の中を遊びまわるのが好きな男の子にモテました。


スノーボードで宙を舞うように宙返りをすると、チューブの横から見ていた男の子達が「オオッ」と驚きの声を上げるのが面白くてたまりません。


秋に可愛い男の子に目を付けて近付きます。秋の終わり頃に新しいスノーボードを買ってニッコリ微笑みながら見せると、男の子たちもスノーボードを買ってきて一緒に遊ぼうと誘ってきます。


冬は男の子に運転してもらってスキー場に通い、春の終わり頃になると他に好きな人が出来たと言って別れるのです。


可愛い男の子が顔を真っ赤にして、涙をいっぱいためた目で深雪を見つめながら、「なんで?」って言うのを聞くのが大好きでした。


夏は大嫌いです。だって夏は太陽の季節で、背が高く締まった身体をしている色黒の渚の方がモテるんですもの。


他の女の子の方がモテる季節なんて許せません。



日向子は春が大好きな子供っぽい女の子でした。お転婆な妹のようにじゃれついてくる女の子が可愛いと思う男の子にモテました。


新緑に覆われた小川の土手で子犬のように跳ね回り赤ちゃん座りをして見上げると、妹が欲しかった男の子達が目を細めて見つめてくるのが面白くてたまりません。


冬に可愛い男の子に目を付けて近付きます。冬の終わり頃に「もうすぐ春だね」と微笑むと、男の子たちは暖かくなったら遊びに行こうと誘ってきます。


春は男の子と野原で思いっきり遊んで、夏の終わり頃になると他に好きな人が出来たと言って別れるのです。


可愛い男の子が顔を真っ赤にして、涙をいっぱいためた目で日向子を見つめながら、「なんで?」って言うのを聞くのが大好きでした。


秋は大嫌いです。だって秋は紅葉の季節で、落ち着いた大人の楓の方がモテるんですもの。


他の女の子の方がモテる季節なんて許せません。



渚は夏が大好きなビーチ・バレー選手でした。背が高く鍛えられたスリムなプロポーションの女の子がカッコいいと思う男の子にモテました。


真夏の太陽の下でタンクトップとビキニで鍛えられた身体に汗を流すと、男の子達が恥ずかしそうに眼をそらすのが面白くてたまりません。


春に可愛い男の子に目を付けて近付きます。春の終わり頃に新しい水着を買った話をすると、男の子たちは海に行こうと誘ってきます。


夏は男の子と砂浜で思いっきり遊んで、秋の終わり頃になると他に好きな人が出来たと言って別れるのです。


可愛い男の子が顔を真っ赤にして、涙をいっぱいためた目で日向子を見つめながら、「なんで?」って言うのを聞くのが大好きでした。


冬は大嫌いです。だって冬は厚着をして引き締まった身体を見せられないから、スキー・ウェアでボディ・ラインを誤魔化した深雪の方がモテるんですもの。


他の女の子の方がモテる季節なんて許せません。



彼女たちに振られた男の子達が、悲しみの中で神様に祈りました。


「僕は彼女を幸せにできなかった。神様、僕の代わりに彼女を幸せにしてあげて下さい」


 ◇


この国は沢山の神々に守られていました。

一番偉い神様は斎藤純一という名前でした。


男の子達の悲しみながら優しい祈りを捧げると、神様達はものすごく気分が悪くなります。


一人の若い神様が青い顔をして口を押さえながら斎藤さんに言いました。


「うっぷ・・・、今日は一段と厳しい。斎藤さん、なんとかしないとたまりません」


「うえっぷ、・・・確かにこれはたまらん。ちょっと、行ってくる」


斎藤さんはふらつきながら外套を羽織り王様に会いに行きました。



王様の名前は紺野恭平といいました。恭平はその夜開催される女性人権運動活動家のパーティーでのスピーチ原稿を暗記している最中でした。


「しかるに、全ての女性の人権が守られることが神の意志に沿うことであり、・・・」


王様は原稿が何を言ってるのかわかりません。ただ、宮内庁の爺やは「感情を込めなければゴブリンのように醜いオバサン達が騒ぎ出す」と言って王様を脅すのです。


正直、王国はかなり平等な国だと思ってます。批判されている一夫多妻制だって、戦争で主人を亡くした未亡人を子供と一緒に守ってやるために作った制度でした。


先週の日曜日だって、本当は近衛兵の友達と釣りに行きたかったのに、第一夫人から第十夫人まで順番に買い物を手伝うことになって、結局どこにも行けませんでした。


戦場で死んでしまった友達のことを思い出して王様は涙ぐみました。


「あいつらと一緒に死んでたら、今頃一緒に天国で英雄の宴の酒を飲んでいたのにな」


でも、どんなに一緒に死にたいと思っても、王様には生き残った部下を連れて帰る責任がありました。


それに親友達が死ぬときに言ったのです。


「恭平、妻を頼む」


「恭平、子供達を幸せにしてやってくれ」


だからどんなに悲しくても王様は死ぬことができないのです。王様は死んだ友達の最後の願い事を叶えてやりたいのです。


思いっ切り悲しみながら、心優しい王様は少年のような純心な祈りを神様に捧げました。


「神様、僕に皆を幸せにする勇気と力をお与え下さい。みんなが幸せになれば、僕はどうなってもいいんです」


「ウゲゲェ、エロエロエロ・・・」


神様がいきなり王様の前に現れて嘔吐しました。よく見ると昔会ったことのある斎藤という神様です。王様は驚きながらも声を掛けます。


「斎藤さんじゃないですか?大丈夫っすか?」


「おう、恭平。ちょっと邪魔するぜ。しかし、お前も神に祈りを捧げるなんて歳じゃなかろう?」


「いゃー、俺、結構信心深い方っすからねー」


流石に気持ち悪いから祈りを捧げるなとは、斎藤さんも神様という立場上言えません。


「まぁ、祈ってもいいんだがな。ほら、神頼みする前に自分で努力して欲しいと思ってるんだよ。合わせたその手で働けとかよく言うじゃないか。それになんだ、お前勇者だからなんでも出来るんじゃないか?」


「モンスターの討伐くらいならねぇ。それはそうと、今日はどういったご用向きで?」


「おう、ひとつお前に作ってもらいたい物があるんだ。こんな塔を作れないか?」


斎藤上級神(斎藤さんの正式な肩書です)は、一人で数か月籠れるような塔の設計図を恭平に渡しました。


「箱物っすか?今は政府の支出抑えるのにあっちゃんが苦労してるからなぁ。俺一人じゃ頼みずらいから、斎藤さんも一緒に来てくれませんかねぇ」


『あっちゃん』と王様が呼ぶのは総理大臣の安倍さんです。安倍首相は戦争で弱った国力を回復させるために必死に働いていました。


『あっちゃん』は、お坊ちゃま呼ばわりされることもありますが、なかなか筋の通った男でした。箱物と聞いてすこし嫌そうな顔をします。


しかし、野党の国会議員が舌なめずりしながら近づいてきました。


「首相、神様ご同伴の王様の願い事だ。無下には出来まい」


「そうそう、首相の手を煩わせずとも、ここは我々に任せてくれれば安心だ」


首相はため息をついて神様に聞きました。


「それで、その塔は何に使うのですか?」


神様は男の子達の心を慰めるためとか、意地悪な女の子を懲らしめるためとか、エネルギー効率化により地球温暖化を緩和するためとか、何かいっぱい話しますが、王様にも首相にも何を言ってるのかさっぱりわかりません。


王様は心配になってこっそり首相に聞きました。


「あ・・、あっちゃん。何言ってるのかわかるか?」


安倍首相も脂汗を浮かべてこっそり答えます。


「いや、わからねえ。何を言ってるのかさっぱりわかんねぇ」


しかし、いつの間にか現れた厚生労働省の役人だけは神様の言うことに頻りに頷いてました。


「わかります。神様の仰る通りです。それは一所懸命働いた労働者に是非使っていただきたい。エントランスは大理石を敷き詰めて威厳を持たせましょう」


首相は拙いと思いました。その役人は皆の老後の為と言って、鳥も通わぬ山奥に老人用温泉保養施設を建築したことがあります。


鳥も通わぬ山奥に老人が通えるわけがありません。


結局、その施設は潰れて皆のお金がなくなってしまいました。


首相は慌てて言いました。


「外資系監査機関と学者を中心にした監査チームを二つ作る。より価値のある指摘に成功した方に特別ボーナスを支給する。同じ内容ならボーナス無しだ」


しかし、役人達を味方に付けた野党国会議員は調子付いて首相に文句を言ってきます。


特に酷いのは、若い頃に航空会社のキャンペーン・ガールとして臍出してにやけていただけで何故か国会議員になったオバサンです。


「総理、貴方が神の意志に沿わないことで国民が塗炭を舐める苦しみを味わっていることがわからないのですか?」


そもそも国民が塗炭を舐めることとなったのは、ヘソ出しオバサンの政党が政権にあった時に、国の南の兵隊を引き上げてしまったからでした。


チャンスとばかりに攻め込んできた隣国の兵士に多くの国民が殺されたのです。


オバサンは助けを求める国民を見殺しにし、自分達の政党の議員だけ兵士に護衛させて逃げ回っていたのです。


政党が何も出来ないことが国民の目にも明らかになったので、安倍さんの政党が選挙で勝ったのでした。


でも、不思議なことに、国民の中には、あれだけ国民を裏切り続けたオバサンに国会議員を続けて欲しいと思う人が残っているのです。


オバサンの政党は選挙で大負けしましたが、何故かオバサンは当選して国会議員に残りました。


オバサンに投票した人達は、『頭が良さそうに見える』とか、『ズケズケ物が言えそう』なのがオバサンに投票した理由だと言います。


(国民にも真面目に考えてもらいたいんだよなぁ。又、子供達が殺されるなんて嫌なんだよなぁ)


安倍首相は神様に馴れ馴れしく近付いていくオバサン議員を見てイラッとしましたが、すぐにそんな感情を持ってはいけないと反省しました。


安倍首相は悲しみに暮れながらも優しい気持ちで祈りました。


(神様、どうか僕にこの国の皆の幸せを祈り続けられる強さと優しさをお与えて下さい。僕は皆の幸せの為に戦い続ける約束をしたのです)


「コパー・・」


斎藤さんはオバサン議員の顔に嘔吐しました。もはや胃の中に何も残って無かったようで、胃液をシンガポールのマーライオンのように吹き出してます。


ゲッソリとやつれた斎藤上級神が安倍首相を振り返って涙目になり言いました。


「なぁ、もういいだろ?頼むよ。塔を作ってくれよ。次の選挙も応援するからさぁ」


王様も首相も断ることは出来ませんでした。


  ◇


塔が出来上がると斎藤上級神はニヤリと笑い。この塔に魂を吹き込まなきゃならないと言い出しました。


何か話が違うような気がします。王様と首相が不安そうな顔をすると斎藤上級神が慌てて言いました。


「そんな顔するなよ。意地悪な女の子を懲らしめるためって言ったじゃないか。それに男の子たちの心を慰めるし、男の子たちが無駄なエネルギーを消費しなくなるから地球温暖化も緩和する」


王様と首相は何か騙されているような気分になりましたが、取り敢えず神様が何をするのか見守ることにしました。


すると、神様は楓、深雪、日向子、渚の4人を呼び出しました。



神様は4人の女の子たちに言いました。


「君たちのせいで悲しい気持ちになっている男の子たちがいる。君たちはそれを何とかしようとは思わないのか?」


女の子たちは口々に反論しました。


「私たちのせいじゃないです。あの子たちが勝手に私たちのことを好きになったんです」


「そうそう、ストーカーみたいなもんです。男なら振られたら潔く消え去るべきだと思います」


「大体、嫌いな季節まで男の子の相手はしてられないわ。嫌いな季節は部屋の中でじっとしてるのが一番ですもの」


「私達だっていつまでも若くないんだから、若い間だけは好きなように生きていたいのよ」


神様は女の子たちの自分勝手な望みを聞くのが大好きでした。だって、叶えてやる必要はないから気持ち悪くならないし、ちょっと厳しい罰を与えても後で心が痛んだりしませんからね。


神様は四人に言いました。


「なるほど。なら4人とも嫌いな季節はこの塔に籠ることにしたらどうだ?一年の間三ヶ月だけ籠っていれば、その間がお前たちの嫌いな季節になるようにしよう。そうすれば永遠の若さを与えてやってもいいぞ」


女の子たちの目の色が変わりました。永遠に若く美しくいられるというのは魅力的な話でした。


更に追い打ちをかけるように厚生労働省の役人が現れて塔の内装を自慢し始めます。いつの間にか敷き詰めた大理石の入り口と落ち着いたベッド・ルーム。ハロー・ワークで採用された労働者が部屋の清掃を行うので掃除する必要はありません。


更に農林水産省が農協と漁業組合に命じて肉・魚・野菜・米など新鮮な食材を用いた食事まで提供することになっていました。予算は既に計上されているので心配ないと言います。首相はこれでまた国民の負担が増えると思い悲しい気持ちになりました。


首相がまた祈りそうになったので、斎藤上級神は慌てて話を進めます。神様は女の子たちを見回し、どうするかと聞きました。


楓は忌々しい春の間、きれいな塔の中に籠って生活するだけで永遠に若く美しくなれるなら悪くない話だと思いました。


深雪も忌々しい夏の間、きれいな塔の中に籠って生活するだけで永遠に若く美しくなれるなら悪くない話だと思いました。


日向子も忌々しい秋の間、きれいな塔の中に籠って生活するだけで永遠に若く美しくなれるなら悪くない話だと思いました。


渚も忌々しい冬の間、きれいな塔の中に籠って生活するだけで永遠に若く美しくなれるなら悪くない話だと思いました。


四人の女の子はそれぞれの嫌いな季節の間、きれいな塔の中に籠って生活することを約束しました。


女の子たちが約束するのを聞いて、神様はそれぞれの女の子が塔に籠っている間に、それぞれの女の子が嫌いな季節が訪れる魔法をかけました。


そして、4人の女の子たちに言いました。


「一度塔に入ったら最低2カ月は塔の中に籠り続けなければならない。前の季節の女の子が塔から出て来たら、自動的に塔の中に閉じ込められてしまう。お前たちの嫌いな季節は、お前たちが塔に籠っている間だけ王国に訪れるようにしよう。今の季節は秋。早速、日向子が塔に籠りなさい。2カ月したら出てきてよろしい」


日向子は喜んで塔に籠りました。忌々しい秋の景色が見えない塔の中で、毎日ハローワークから紹介された労働者が部屋の中を掃除してくれて、ついでに農林水産省ご用達の美味しい食事を楽しんでます。


渚は次に塔に籠れるのを楽しみにしました。もう直ぐ忌々しい冬になります。大好きな夏をしのびながら、今のボーイフレンドをどうやって振ってやろうかと考えてます。


楓は大好きな秋の真っ最中です。永遠に美しくあり続けられる魔法を神様にかけてもらって上機嫌です。夏に見つけたボーイフレンドと取り敢えず遊びに行く予定です。


深雪はようやく忌々しい夏が終わったところで絶好調です。この冬を一緒に過ごすボーイフレンドを探しに街に行く予定です。


女の子達がいなくなると、斎藤上級神は素早く王様と首相に振り返り言いました。


「今夜、夢の中で国中の男の子達に特別教育をする。あの4人に付き合って悲しむ男の子達をこれ以上増やすわけにはいかない」


 ◇


夜、男の子たちが眠りにつくと斎藤上級神が夢の中に現れました。


「こんばんわ。斎藤上級神です。今日は君たちの人生の中で特に重要なことを教えます」


そう言うと斎藤上級神は楓、深雪、日向子、渚の四人の写真を示しました。


「え~、非常にかわいい女の子たちですが、彼女たちは春夏秋冬の季節を司る女神になってもらいました。自分の担当する季節には王国の首都にある塔に籠ってもらいますし、その時まで君たちと付き合っていたとしても塔に籠る直前には別れることになります。


例えば楓は春には塔に籠らなければなりません。夏に君たちの目の前に現れて、秋にデートして、冬の終わりに別れを告げます。長く付き合うのなら別の女の子を選んだ方がいいでしょう。


でも、ちょっと遊びたいだけなら別に付き合ってもいいんです。別れるときに傷付かないようにしてください」


王様も首相もその夢を見ました。しかし、神様がなぜ塔を作ったのかわかりません。王様の宮殿に泊まっていた神様が目覚めた時に、王様と首相は聞いてみました。


「塔作るのになんか意味あったんですか?あれなら塔なんか作らなくっても良かったんじゃないですか?」


「意味か?意味はあるぞ、・・・そうだシンボルがあった方がみんなが夢を疑わなくていい。みんなが安心して俺の夢を信じられるように作ったんだ。別に布教活動に便利とか考えたんじゃないからな。結果的に布教活動に便利になるけど、それが目的じゃない。本当だ」


それを聞いて王様と首相は布教活動に便利になるのが目的だったんだなと思いましたが、神様があまりに真剣に否定するので、取り敢えず信じたような振りをすることにしました。


 ◇


何か神様に騙されたような形で作られた塔でしたが、作ってから数年は上手くいっていました。


女の子たちに振られて悲しむ男の子はずっと少なくなりましたし、女の子たちも永遠の美しさを手に入れるために喜んで塔に籠ります。


いつしか楓は『春の女王』と呼ばれるようになりました。楓は春が大嫌いなので『春の女王』と呼ばれるのは納得していませんでしたが、国民から見ると楓が塔に籠ると春がくるので『春の女王』です。


いつしか深雪は『夏の女王』と呼ばれるようになりました。深雪は夏が大嫌いなので『夏の女王』と呼ばれるのは納得していませんでしたが、国民から見れば深雪が塔に籠ると夏がくるので『夏の女王』です。


いつしか日向子は『秋の女王』と呼ばれるようになりました。日向子は秋が大嫌いなので『秋の女王』と呼ばれるのは納得していませんでしたが、国民から見れば日向子が塔に籠ると秋がくるので『秋の女王』です。


いつしか渚は『冬の女王』と呼ばれるようになりました。渚は冬が大嫌いなので『冬の女王』と呼ばれるのは納得していませんでしたが、国民から見れば渚が塔に籠ると冬がくるので『冬の女王』です。


ところがある冬、いつになく長く冬が続くので首相が原因を調査したところ、冬の女王が拗ねて塔から出てこなくなったことがわかりました。


 ◇


王様である恭平と総理大臣である安倍さんが相談します。恭平は安倍さんの調査結果を聞いて質問しました。


「つまり、あっちゃん。原因は渚が楓にボーイフレンドを取られて拗ねて塔に籠っているってことか?」


「そういうことだ。渚ももう直ぐ別れるつもりだったんだろうけど、自分が振る前にボーイフレンドが楓に乗り換えたのが不満らしい。怒ってそのまま塔に籠ってしまったようだ」


「また、面倒なことをしてくれたもんだなァ。ちょっと、そのボーイフレンド呼んでこいよ」


すると近衛師団のイケメンがひとり、師団長に連れられて王様と首相の前にやってきました。えらく恐縮して項垂れてます。


安倍首相が恭平を睨みながら言います。


「恭平、言いにくいんだけどさぁ。お前んとこの若造なんだわ」


恭平は慌てて安倍首相に謝ります。


「いや、・・・まさか、すまんあっちゃん」


「というわけでさぁ、恭平。今回の一件は内閣じゃなくて宮内庁メインで解決してもらえねぇかなぁ。勿論、補正予算が必要なら言ってくれて構わないし、防衛省は恭平の指揮下にいれて好きにしていいからさぁ」


「いや、勿論・・・しかし、やり方がわからん」


「みんなわかんないんだから一緒だよ。恭平、なんたって勇者なんだから信じてるぜ」


王様は悲しくなりました。勇者だからって出来ることと出来ないことがあります。

でも、勇者が責任をもって解決していくと早々に記者会見で発表されて、王様は引くに引けない立場になってしまいました。


王様は浮気をした近衛兵の若者と楓を呼び出し何があったのか細かく聞き出すことにしました。


何でも近衛兵の若者は渚が『冬の女王』であることを知ってて付き合っていたので、秋になったら別れを切り出されると思っていたそうです。


「冬にひとりってのも寂しいもんだから、誰か新しい女の子探してたんですよね。そしたら楓さんが声かけてくれたんで、『冬の女王』と『春の女王』の両方付き合ったりしたら自慢になるかと思って。まさかこんなことになるとは・・・」


若者が申し訳なさそうに項垂れます。


王様は楓に振り返って聞きました。


「しかし、お前もこの男が渚の彼氏だって知らなかったのか?」


「勿論、知ってたわよ。でも、この夏は不作でかわいい男の子が見つからなかったんですもの。そしたら渚がやたらと見せ付けてくるし・・・。


深雪の彼は夏苦手なのよね。塩振った野菜みたいに元気なくなっちゃうし・・・。日向子の彼は子供っぽすぎてターゲットに入らないわ。でも、こんな面倒になるとは私も思ってなかったわ」


一応、トラブルを避けるためにこっそり近付いたらしいが、クリスマスの夜にデートする約束をしたのがバレたのは不味かったといいます。


『きっと楓はわざとデートする約束を渚に漏らしたんだろうなァ』と王様は思いました。

女の子が結構陰湿な意地悪をすることを王様は良く知っていました。


横で成り行きを聞き耳を立てて聞いていた安倍首相は不安になってきます。無理に押し付けちゃったけど大丈夫でしょうか。恐る恐る安倍さんは恭平に聞いてみました。


「恭平、どんな感じ?冬が終わらないと流石にみんなこまるからさぁ。対策のイメージとか湧いたところで教えてもらえると嬉しいんだけど・・・」


「う~ん、童話だからなァ。取り敢えず『反省と悲しみ』を込めた愛の歌とか近衛兵に歌わせて渚の態度が軟化するかどうか見てみるか」


「歌か・・・、それはいい。童話的には絶対に成功しそうじゃないか」


早速、自衛隊工兵部隊を出動させて、カラオケセットと大型スピーカーを塔の周りに設置させました。


怯える近衛兵の若者に王様が直々に活をいれます。


「いいか?教えた通りに感情を込めて歌うんだ。女なんか単純だから悲しんでる振りしとけば騙せる。君はなにも心配しないで、オジサンたちに全部任せておけばいいんだ」


近衛兵の若者は不安そうにしてましたが、ついに覚悟を決めてレミオメロンの『粉雪』を歌い始めます。

若者はなかなかいい声でかなり女の子の胸に響きそうな歌です。


「恭平、これなら結構いけるんじゃないか?」


「おう、小娘なんかちょろいな。きっとすぐに塔から飛び出してきて・・・」


突然ドカ雪が振って近衛兵の若者が雪だるまにされます。


「まずい、救助しろ。殺されちまう」


王様が慌てて救助命令を出しているところに、塔の窓が開き渚の罵声が響き渡りました。


「ざけたこと言ってんじゃないわよ!あれが『すれちがい』とかの生易しい話だったと思ってんじゃないでしょうね!!」


王様が拡声器をとって説得しようとします。


「渚君、具体的にどうすればいいのか君の希望を教えてくれ。このままじゃ冬が終わらずみんなが苦しむんだ。君の希望とあわせて良い解決策がないか考えたいと思う」


「そういうことじゃなくて私はひどい目にあったって言ってるの」


「わかる。わかるよ。で、何をしたいんだ?」


「なんもわかってないじゃない」


話し合いは平行線をたどり、交わる気配すらありません。近衛兵の若者はレスキュー・チームが救助してくれましたが、余程怖かったと見えて歯をガチガチならしながらメディックに抱き付いたまま離れません。


「まいったなぁ。国民にも広く意見を募集してみるか。女の扱いが上手い男とかいるかもしれない」


王様はそう言うとお触れを出しました


『冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。

ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。

季節を廻らせることを妨げてはならない。』


「こんなもんかな、あっちゃん?」


「問題先送りじゃないか?」


「しかし、まさか自衛隊のレンジャー部隊投入ってわけにもいかんだろ?下手したら冬が来なくなっちまう」


王様と首相があれこれと悩んでいると、首都の都知事のお姉さんがやってきました。


「困っているようね。私で良ければ渚の話を聞いてあげられるけど?」


首相の側近たちの顔が強張ります。実は前回の都知事選の時に、安倍さんの政党からは別の人が立候補する予定だったのですが、突然お姉さんが出馬表明をして選挙に勝ってしまってたのです。


お姉さんも同じ政党だったので、本当はお姉さんがなっても良かったのですが、政党の中は政党の中で順番とかがあって、勝手なことをされると嫌だと思う人が多いのです。


首相の側近達が口々に言いました。


「これ以上、事態を混乱させられては困る。女で困ってるのに新しく女を連れてきたリしたら大混乱だ」


「首相、覚悟を決めて空挺師団の投入をご命令下さい。この際、冬のことはあきらめた方がいいでしょう。かならずしも冬が無くなるってわけでもないでしょうし、冬の女王を確保したあとでしっかり説教してやりゃいいんです」


首相は都知事の話だけでも聞いてみたいと思ったんですが、周りの側近達は許してくれません。

仕方なく、首相は申し訳なさそうに都知事に言いました。


「協力のお申し出は心から感謝いたします。今は混乱しておりますので、いずれご協力いただくかもしれません」


すると都知事は素直に帰っていきましたが、他に良いアイディアは出てきません。結局、空挺師団を塔に突入させて『冬の女王』の身柄を確保する作戦に決まりました。


翌日未明、暗がりに紛れて空挺師団のヘリコプターが塔に近づきます。もう直ぐ隊員たちを降下させようかと思った時、突然恐ろしいほどの吹雪に襲われました。


ヘリコプターのエンジン音が弱まっていきます。どうやらインテークが雪で閉ざされて空気がエンジンに送られて行かなくなったようです。


「総員、緊急着陸準備!!」


空挺師団の隊長が命令すると、直ぐにヘリコプターは塔の手前の広場に不時着しました。隊員たちは次々にヘリコプターから飛び出して撤退してきます。幸い誰も怪我をせずにすみましたが、ヘリコプターは壊れてしまいました。


黒煙を噴き上げるヘリコプターを見て王様と首相がしょんぼりしていると、都知事のお姉さんが再びやってきました。


「どう?一度ぐらい私に試させてみたら?別に話すだけなんだから、何もお金なんかかからないわよ?」


こんどは首相の側近も何もいいません。首相は申し訳なさそうに言いました。


「ありがとうございます。大変面倒な話ですが、ご協力いただけるとありがたいです」


「いいわよ」


都知事のお姉さんは気軽に言って、近衛兵が使ったカラオケセットのマイクのスイッチをいれました。

都知事は大声で言います。


「ねぇ?どうしたの?何かあったの?」


突然塔の窓がバタンと開きます。王様も首相もびっくりして床に伏せます。空挺師団はヘルメットを押さえて身を低く構えました。塔の中から冬の女王の大声が聞こえてきます。


「聞いてよ。彼ったら、私が冬の間は塔に籠ってなきゃならないの知ってるのに、楓と一緒にクリスマスのお祝いする約束してたのよ!」


「何それ、信じらんなーい」


「でしょ?信じらんないでしょ?酷いのよ!」


「ひっどーい。何考えてんのぉ、その彼?楓って女も頭くるー」


「そーよ、それなのに『どうすればいいか』とかオジサン達が聞くのよ」


「なにそれー、うちに来て紅茶でも飲みながら話そうよー。大変でしょー?」


渚はあっさりと塔を出てきて都知事のそばで王様と安倍首相を恨めしそうに睨んできてます。楓はこそこそと塔の中に逃げ込みました。そして、吹雪は止んで和やかな春の日差しが大地を温め始めました。


王様の恭平が膝をガックリついて呟きました。


「そうか。それだったのか。見落としていた・・・」


首相も側近も何のことかわかりません。


「恭平、何も解決してないじゃないか。今の会話に何か意味があったのか?」


「・・・意味はない。女は問題解決を求める生き物じゃないんだ。求めているのは共感だ」


「しかし、我々はあんなに誠実に対応したのに・・・」


「お前ら誠実に女房に接して良いことなんかあったか?」


王様にそういわれると、首相も側近も黙ってしまいました。みんな嫌な思い出を思い出したみたいです。


「結局、女心って何なんだろうね?」


呆然とした顔で安倍首相が王様に聞きました。王様は苦々しそうに答えました。


「昔っから言うじゃないか。永遠の謎だ」

如何でしたでしょうか?もう少し工夫すべきところって幾らでもあるんですよね。


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