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5日目

おっさん書いて元気が出たので女の子書きたい欲がまたむくむくしてきました。

外伝の続きはまたおっさん書きたくなった時に。


2つの連星の間をめぐる気流は止まる様子がない。おそらく数週間はそのままだろう。

「……寒いわね」

『ああ、寒いね』

寒さは彼女たちの肉体を傷つけられはしない。

だが、心はこれ以上ないほど傷つけられる。

宇宙において暖かさとは、快適さであり、人の領域のみに存在する物であり、それ自体が文明の証である。

寒さとは、究極的には文明が及んでいないことの証明だ。

故に人は、古来より環境を改造した。

家を作り、火を焚き、衣をまとい、布団にくるまり、電気を使って熱を作り、しまいにはスペースコロニーすら……

この世界において、暖かいものは互いの肉体しかない。

自然は残酷だ。

数日前まで熱を避けようとしていたのに、今度は上空の寒気にさらされている始末。

「ねえ……生き延びたとして、どうしよう?もう帰れないのに」

『……そうかな?』

抱きしめ合う2人。

『ボクはそうは思わない。自分たちのいる場所もよくわかってはいないけれど、それは裏を返せば、人類の領域に意外と近いことだってありうる、ってことだ』

「だと、いいね……」

『うん。だから、ボクらがやるべき事は、知る事。調べられる事を知りつくそう』

弓張月は、イグルーの外へ目をやった。

氷が飛び交い、雲が広がって視界は最悪。

だが、彼女らの眼前に立ちこめるこの暗雲は晴らさなければならない。

全知と全能を賭けて。

「どうやって?」

『君らしくもないな。まずはボクらの五感で。それでも足りなければ道具で。なければ作って。考えてもみるんだ。人類は2本の手と足だけで初めて、ボクらを作り上げるまでに進化したんだ。ボクらも進化しなくちゃ』

「進化……そうね。いいかも」

『まずは何をつくろうか?』

「うーん。弓張月と一緒に作りたいもの……」

『そうそう。何がいい?』

「……赤ちゃん」

『ぶはっ!?』

ちなみに宇宙戦艦には生殖能力はない。

「ぷっ、ぷぷぷ……」

『もうっ……こんなに真剣に聞いているのに。そんな悪い子には、こうだっ!』

熱い接吻が交わされた。

アテナの口が塞がれる。

「えっ!?ちょっ、待って!?」

でも口がふさがれようとも無線通信だから関係なかったり。

思わぬ反撃に目を白黒させるアテナであった。

―――何やこのイケメン!?

客観的に見てもイケメンの行動である。

でもそのイケメンにイクメンになれと言った犯人は…

「は、初めてが……」

『おや、お嫌だったかな?』

弓張月の舌が、閉ざされたアテナの唇を優しくこじ開ける。

迎え撃つアテナの舌と絡み合い、優しく刺激し合う。

―――あ……

もう駄目だな、と不意にアテナは思った。

―――弓張月がいないと私は生きていけない。

でも、戻ればまた、敵味方に……

宇宙戦艦にも吊り橋効果があるのかどうかは分からない。

でもこれは、ひとめぼれという奴に違いない。

現状、帰れなくても別にそれはそれでいいよね、という気になってくる。

少なくとも戦争が終わる頃までは。

すると、がぜんやる気が出てくる。

「嫌じゃ……」

『ん?』

「嫌じゃない。むしろイイよ……もっと、しよ?」

堕ちた。

完全に女の顔である。

もう言葉はいらない。

無言で、弓張月はアテナに覆いかぶさった。

 

この後、2人がとても熱い想いをしたのは言うまでもない。

 

―――とりあえず作れるもの。

「よし。決めたっ!」

性も根も尽き果てた2人は、体を弛緩させきって、イグルー内を漂っていた。

『何を?』

「まずは名前よ。まだこの星の名前も決めてなかったじゃない」

『そういえばそうだったね。どうするの?』

法的には、新しい惑星の命名権は発見者にあるが、この場合の発見者とは通常「発見した船」単位である。

そして2人は法的には艦艇であった。

「波の星は高くせり上がるヘヴリング=叩き付けるウズ

 ガスジャイアントは、漂流者を弄ぶバーラ、よ」

『キュルヴィたぶらかしかい?』

北欧神話からの引用に、よくもこんなピッタリな名前があったものだ、と苦笑する弓張月であった。

『オーケー、じゃあこれからあの星はヘヴリング=ウズで、もう片方はバーラだ』

 

連星系は、名付けられた感慨を持つこともなく、天地のように二人を挟み込んでいた。

 


5日目終了


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