210日目
採掘と調査が概ね終了した。
岩石1つで星系内の全てが分かるわけではないが、貴重な手がかりだ。
資源としてはあまりよくない―――宇宙空間では鉱脈が出来ない―――ので岩石を多少確保して終了となったが、もとよりさほど必要なわけでもない。
機材の撤収はほぼ機械が勝手にやってくれる。
となれば航行を再開する準備に入るか……となるのだが。
その時、船体の上で作業中だったアテナがなにやらみつけた。
「あ、弓張月見て。彗星」
『本当だ。あんな場所でもう尾を引いてるのか』
見れば、遠くに光を発する小さな星。
長い尾が生えている。彗星である。
彗星とは主に氷や塵などでできており、太陽に近づいて一時的な大気であるコマや、コマの物質が流出した尾が観測されるものを指す。
尾を引くまでは小惑星と区別がつかない。
我々の知るそれは太陽からの距離が2・5天文単位を超えて近づいたあたりから尾を引き始める。
「綺麗だね……」
『うん』
彗星の本体は核と呼ばれ、岩石質と有機物の塵を含んだ汚れた雪玉である。
彼女らに見えているのは今は尾だけだが、発光からすると1kmに満たないデコボコした―――重力で球になるには自重が足りない―――小さな星のはずである。
『アテナに見つけて貰ってよかったね……』
「私たちも誰かに見つけて貰えるかな」
『もらえるさ。きっと』
その後2人は作業を再開。
今日も平穏な一日が過ぎ去っていく。
210日目終了。




