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185日目

超光速航行によるショックは大したことはなかった。

外宇宙船マルコ・ポーロは、恒星系の隅っこから無事に、恒星から2天文単位―――地球から太陽までの平均距離が1天文単位―――程の位置まで移動することに成功した。

ここまで来ると星系の中心と言っていいくらいにぎやかだ。

星間粒子は密度を増し、小惑星や準惑星もゴロゴロと見つかる。

ここから楕円軌道をたどって、マルコ・ポーロは当初少女たちが漂着した連星にまで航行する予定であった。

その過程で星系内の観測情報を増やし、資源採掘したり、あるいは条件がいい星があればそちらに移り住むというのも考慮のうちにある。

「……船は異常なっしん」

『位置も予定通り。―――壊れなかったね』

一通りのチェックを終えて、脱力するアテナと弓張月。

いつもならこのタイミングでどっか壊れるのであるが、今日はそんな事もない。珍しい。

「んじゃ、こっから先も予定通りいこっか。二日かけて前方の6kmくらいの小惑星まで行って、降りて、よさそうなら採掘基地設営」

『いいと思うよ』

本来何百人で動かす船である。

情報処理能力が強化されている宇宙戦艦と言えども、移動させるだけで一苦労だ。これが身一つなら一発で分かるのだが。

とりあえず自動制御に変更すると、二人はそのまま床にごろん。

ちなみに着ているのはまた謎のダサTである。

今度は「天下繚乱」と「お腹がすきました」だ。

どういうセンスなのか。

「……よし。2日間暇ね」

『いやこの後目視チェック……』

「それまでに時間はあーる!いい加減ダサTにも飽きて来たしなんか服を作るわよ!」

『まぁいいや。付き合うよ』

弓張月は苦笑。

「そうと決まれば採寸よ!デザインするから!!」

『アテナは元気だね』

「空元気だけどね」


採寸と言っても大したことをやる必要はない。

「アテナアイは目視力~!」

『意味がよくわかんないや』

宇宙戦艦として搭載された各種センサーで互いの肉体を隅々まで見つめ合う二人。

戦闘用レーダーで無意味にマイクロメートル単位まで把握するアテナ。

ちなみにレーダーは波長が短い(=周波数が高い)方が物体の細かな点を認識する能力が高くなり、かつ小さなアンテナで発信することが可能になる。

また宇宙戦艦のそれは空間戦闘用レーダーのため、縦軸と横軸、二種類の電波を発信するようにできている。1次元だけだと物体の断面積しか分からないからだ。

というわけで、武装解除状態の弓張月の3次元モデルを徹底的に、そう、徹底的にアテナは構築した。

気合入ってる。

あ、ちなみに戦闘用レーダーの照射は攻撃とみなされるので、真似をするなら事前にちゃんと相手の許可を得ましょう。

一方の弓張月も、レーダーとレーザーセンサーを巧みに用いて丹念に丹念に、ダサTを脱ぎ捨てたアテナの体を測定していく。

その視線はまさしく舐め回すかのよう。

『アテナはやっぱりわがままボディだと思うな…』

「そう言う弓張月こそ、腰の括れとか素敵……」

そうこうしているうちに、互いの測定が終了。

「終わっちゃった……」

『さてさて、じゃあ船体の確認するよ』

「へ~い」

しぶしぶと言う体で弓張月に連行されていくアテナなのだった。


というわけで船外活動である。生身の船員なら大変な労働であるが、身ひとつで宇宙を飛翔し、各種センサーを備える宇宙戦艦には大した手間ではない。

「船体も程よく冷えてるねえ」

『こっちの歪みは誤差範囲。そっちは?』

「せーふせーふ。どこも壊れてない」

『そうか、よかった。―――服、どんなデザインにしてくれるの?』

「え?うふふ、ひーみーつー。後で同時にプレゼントし合いましょ」

『楽しみだね。じゃあボクも気合を入れないと』


大した手間ではないとはいえ、それなりの時間はやはりかかる。

数時間を作業にかけた2人は、また船室に戻ると、パジャマに身を包み、弓張月の毛髪と古い毛布にくるまって寝るのであった。


185日目終了。

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