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第一話 男は再び生を得た

旧作・王平伝。今ここに復活致しました。修正を加えながらの投稿となります。御承知下さいませ。


それでは、どうぞ。

ある所に一人の男がいた。


その男は戦っていた。平和に見える世の中の裏で、大切な物を……守りたいものを守るために。かりそめの平和の下で、世界に見えない裏側で、その男は何時も勇敢に戦っていた。


しかし現実は非情だった。


その男の上司と思われる人間が、功を焦って無謀とも思える行動をその男と男の仲間たちに命令した。


男は上司に言った。


その様な事、する意味もなくただ犠牲を増やすだけだと。


だが、それがいけなかった……。


男の上司は戦いの狂気に飲まれていた。そしてあろうことか、男を従わせるため男が守りたいものを人質に取った。


だから、男は戦った。


戦って戦って、無謀と思われた作戦を次々と成功させた。


自分がどれだけ傷ついても、仲間がどれだけ倒れても、ただ守りたい者のために人とは思えぬ戦いを見せた。


何時からか男はただ勝利のみを追い求めるようになった。


そしてまた一つ、無謀な作戦に勝利を収めた時だった。男に最悪の知らせが入る。


男が戦っている場のその後ろ……守りたいものがあるその場所が、敵によって襲われたと。


男はすぐさま急行した。そして目にする事となる。


惨殺された人々を。その中に含まれていた、自分の守りたいものを……。


男は泣いた。泣いて泣いて、涙が枯れるまで泣き続けた。


そして男は思った。


ああ、こんなことなら、勝利など求めずにただ愛する人たちを守るためだけに力を振るえば良かったと。


上司などに従わず、戦の勝利など知らず、ただ守るために…戦えば良かったと……。


自分は戦に勝って、本当にしなければならない事に負けたのだと……。


その日以来、男の姿を見たものは誰もいない……。




◇ ◇ ◇




夢が終わるのと同時に目を覚ます。今日はまた、とても懐かしい日の夢を見たものです。


懐かしくて……けど思い出したくない、自分が今の自分になった出来事。消す事の出来ない、自分の過去そのもの。


今日であの日から、どれほどの月日が過ぎたのか。


そんな事を思いながら、自分は寝床からのっそりと起き出す。手早く身だしなみを整えて、荷物を持って部屋から出る。早くしなければ、今日と言う日が無駄になってしまう。


部屋を出て宿の主にチェックアウトを告げる。朝早くと言うには少し遅い時間なためか、町は既に活気があふれている。通りを歩くオシドリ夫婦に、元気に走り回る子供たち。目覚めの光景としてはなかなかに素晴らしい。きっと今日の自分の運勢はかなり良いに違いない。星が五つくらいは固いでしょう。


さて、こんな風に今日一日を普通に迎えている様に見える自分ですが……実はこの状況が既に普通じゃない。と言うか、生きている事自体がおかしい。と言うのも、自分は既に死んだ人間であるからです。


そう、確か死んだはずだった。なのに気づけば、赤子の姿で天井を見上げていたいう……なんとも不思議が過ぎる体験を経て、今のここに自分はいる。”今の〟と言うのは、今の自分の姿が知っているかつての姿ではないから。


転生……と、言うのでしょうか。この、今の自分の状況を説明する言葉は。ちなみに辞書で引けば意味はこうなる。


――生まれ変わる事――


要約のしようも無い、ただのこの一言につきる。


赤子の姿でそれを理解した瞬間、自分はあまりに予想外な現状に思わず大声を上げてしまった。が、なにぶん体は赤子なため、驚愕だろうが悲鳴だろうがどれも同じ声にしかならない。


俗に言う、オギャーです。熟睡していた我が子が当然叫び出したとあって、両親が慌てて駆け付けた時の表情は今でも鮮明に思い出せます。父親は顔を真っ青にしてオロオロし、母親は自分の服をいきなり胸の上まで捲り上げて自分の事を抱き上げたのですが……。


この後にあった事は、自分のそこそこに長い人生の中で永遠に封印したい黒歴史に認定されています。強いて言うならば、柔らかかった、とだけ言っておきましょうか。生まれ変わっても前世の記憶があると言うのは、思いのほか厳しいものでした。


そんなこんなで黒歴史の嵐であった幼少期。物心つき、なぜか恐ろしく強い武人であった両親に日夜鍛錬と言う名の愛情を注がれたまくった少年期。


そしてそれらを乗り越え青年となった自分は、ついに両親から見聞を広めて来いと言われ旅に出されてしまいました。どうやら青年期になっても、苦労する事に変わりは無いようで。


そんな波乱万丈な人生を送る今の自分の名は王名。字を子均。真名を黎明と言います。生れし時は後漢末期。かの三国志時代を目前に控えた時代。


そんな夢物語みたいな、などと思いたくなりますが、残念ながら全て現実。生まれ変わった先でも戦の盛んな時代に巻き込まれるとは……自分はよくよく戦いの神に好かれているらしい。いや、この場合は悪魔と言ったほうがいいでしょうか。戦に全てを奪われた自分をまたもや戦乱の時代に放り込むなど神様がするには悪趣味が過ぎる。皮肉も良いところでしょう。


とは言え、王平として生まれ、厳しくも愛されながら育ってきた今生。殺し殺されが当たり前の時代の中に、自分を愛し育ててくれた愛する両親は生きている。もし神とやらが自分にもう一度チャンスをくれたと言うのならば……今度こそ、自分は愛する存在を守り抜こう。


そのための力が今この手にはある。前世と今生で得た経験と知識。それを利用し振るえるだけの体が。ゆえにこの身に宿る全ては守りたい存在のためだけに。


それが、今生にて自分が己に誓った事。これからの自分の生き方、そして未来の自分が振り返るべき生き様。


とは言え、両親は自分が守る必要がないほど強い。ぶっちゃけその辺りの盗賊など相手にもならない。どこぞの国の兵士でも数が無ければ無理。そして残念ながら今まで修行一辺倒の人生だった自分には好いた惚れたなどの話が有る筈もなく、本当に残念ながら今の自分には両親以外に命を賭けてまで守ろうと思うほどの大切な存在はいない。


生き様だ、などとかっこつけてみたは良いですが、つまりはその生き様とやらの前提条件すらクリアしていないわけで……。


しかも旅に出たは良いものの、旅には当然旅費が掛かる。餞別として両親がいくらか持たせてはくれましたが、それで生きていくにも限界がある。つまるところ、何が言いたいのかと言うと……。


男、黎明。絶賛求職中のフリーな武人をやってます……。



週一、二話のペースで投稿していこうと思います。

調子が良ければもう少し頻繁かもしれません。


それでは、次回も宜しくお願いします。

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