第1話宇宙戦争開戦
この小説は前作の宇宙戦争の設定を変えたオリジナル作品です。
西暦2250年に増えすぎた人類は新たな居住先を求めて宇宙へと進出していた。その最初の目的地として人類が移住したのが月である。約300万人が住める人工都市『フォーレ』を月に建設。しかし、月の人工都市だけでは移民を全て受け入れるのは困難なため、今度は太陽系の外に移住先を求めた。そして莫大な費用と数多くの人命を費やし、遂に太陽系から数億光年離れた銀河系に地球に似た惑星を発見。この惑星に他の生命体が居ないことを確認すると、人々は我先にとこの惑星に移住を開始した。この星系の名を最初に発見した地球連邦政府宇宙局職員のダイス氏の名からダイス星系と命名。また、この星系は地球連邦政府直轄のダイス自治区とし、ダイス自治区との交流や物資流通の拠点として月の人工都市『フォーレ』がその役割を担った。
当初連邦政府は自治区移民者に対して、地球に残った人々と同等の権利と富を約束したが、実際は植民地のような扱いを受けており、連邦政府からの開発資金や援助金などは連邦政府から派遣されてきた事務官などの賄賂として使われてしまい、一般市民の下に届くことがなかった。やがてこれらの状況は移民者たちの不満を高めていき、遂に西暦2280年2月に自治区内で大規模な暴動が発生。軍や警察などの治安組織が鎮圧に乗り出したが、暴動の規模が治安組織に対処できないほどに膨れ上がっている上に移民者で作る民兵組織などがゲリラ活動をするために暴動の鎮圧は困難を極めた。暴動発生から2ヶ月後には行政府を含む主要な場所が暴徒の手に落ち、連邦政府から派遣されていた事務官たちは次々に自治区から退避した。この事態を受けて連邦政府は大規模な派兵を検討したが、人類の宇宙進出に伴ってでてきた宇宙海賊の対処に大部隊を投入していることと、地球から遠く離れた星で起こった事件であり、直ちに地球に害はないという事で月の人工都市と自治区との物流を封鎖するだけに留め、大規模派兵は見送られた。
暴動発生から8ヶ月が経ったある日、月に駐留していた連邦軍艦隊が突如ワープゲートから出てきた艦隊に襲撃され駐留軍基地は壊滅。基地に残っていた戦艦や巡洋艦の大半が所属不明の艦隊に鹵獲された。何とか逃げることに成功した兵士からの報告によって、所属不明の艦隊はダイス自治区に配備されていた海賊対策用の巡洋艦や駆逐艦であると判明した。この時点になって初めて連邦政府高官は初動対応のミスに気づいた。自治区から逃げてきた事務官や軍人たちから何十隻かの艦艇を放置してきたとの報告を受けていたが、一般人に扱うことはできないと考えて、政府首脳部や軍部に正確な報告をしなかったのである。この襲撃事件後、ダイス自治区の報道官を名乗る人物から以下のような宣言がなされた。
「我々ダイス自治区は本日を持ってダイス共和国へと名称を変更し、地球連邦政府からの独立をここに宣言する」
この宣言はありとあらゆるメディアを通じて全ての人々に伝わった。この宣言を受けて、地球連邦政府はダイス自治区の独立は認められないとして、ダイス星系に大規模な派兵をすると発表した。直ちに連邦宇宙軍クレナー宇宙艦隊司令長官を総司令官とするダイス自治区暴徒鎮圧部隊が編成された。この部隊に連邦軍は宇宙艦艇300隻中240隻を出撃させると発表。全艦艇の8割を出撃させることで、誰もが連邦軍の勝利を確信していた。ダイス自治区には艦艇30隻しかなく、また、先の月基地で鹵獲された艦艇を合わせても50から60隻ほどしかないためである。
宇宙艦隊はまず初めに月の人工都市の奪還を目指した。この場所を取り戻すことで、ダイス星系へのワープゲートの確保と物資の流通を止めて敵を兵糧攻めに追い込み、早期の降伏を求めるつもりであった。さらにこの部隊とは別に火星の方にあるワープゲートを使い、『カレリア星域』・『シュライク星域』・『ギルテリア星域』を通ってダイス星系に入る部隊と『カレリア星域』・『イサルコ星域』・『ウクイル星域』を通る部隊の3部隊に分かれた。月の攻略を担当する艦隊はクレナー長官率いる艦艇120隻の艦隊であり、シュライク・ギルテリア星域から侵攻する艦隊はマハミル准将率いる艦艇50隻。イサルコ・ウクイル星域から侵攻する艦隊をクレメンソー少将率いる艦艇70隻の艦隊である。作戦は当初順調に進んだ。月の奪還も抵抗らしい抵抗もなく、別働艦隊もカレリナ星域から別々の星域に侵攻するなど順調そのものだった。
ところが、連邦軍艦隊はダイス星系に到着後に壊滅。大敗北をしたのである。この作戦の敗因は、月の駐留軍基地が襲撃された際、敵に鹵獲された艦艇の中に連邦軍イストリアス級試作宇宙空母と最新鋭のラファエル級戦艦、クラーン級巡洋艦など新造艦が敵に鹵獲されていたことと、試作品であった宇宙空母を敵が完成させていたなど旧式艦艇ばかりの連邦軍艦隊には敵艦隊を撃沈するどころか、小破や中破といった損傷しか与えることができなかった。連邦軍艦隊が敗れたことは、直ちに連邦政府に報告された。そして今度は敵の艦隊が地球に向けて出撃してきていることを月の治安維持を担当していた部隊から報告された。その報告を最後に月の部隊との交信が途絶。それから3日後には地球の第1防衛ラインにダイス軍艦隊が展開。迎撃に出た連邦軍艦隊は艦艇60隻中37隻が撃沈。この時点で地球連邦政府はダイス自治区の独立を承認し、ダイス共和国を対等な国家として認めた。これが後に『ダイス独立戦争』や『第1次地球攻防戦』などと呼ばれる一連の戦争である。この後、連邦政府はダイス共和国の再度の侵攻を防ぐべく大規模な宇宙艦隊の創設と各種防衛設備を整え始め、一方のダイス共和国も連邦政府に対抗する形で軍備の拡張を始めた。
独立戦争から25年後の西暦2305年には、連邦・ダイス両国の宇宙艦隊は共に艦艇数十万隻を保有するまでに至った。この間にも両国で星域間での小規模な交戦は続いたが、関係は良好であった。問題が起こったのは9年後の西暦2314年にダイス共和国で軍事予算の削減に反発した一部の将校が首相官邸や議事堂、各省庁を含む主要施設を占拠するなどの軍事クーデターが発生。反乱鎮圧の準備をしていた軍部もクーデターに便乗し、そのまま軍部が実権を握った。この時に国名もダイス共和国からダイス帝国に名称を変更。
地球連邦政府はダイス帝国が自分たちの存在を脅かす存在として宣戦布告なしに月の人工都市『フォーレ』を攻撃。ダイス帝国はこの報復措置として、5万隻からなる大艦隊を地球に向けて出撃。年が明けた西暦2315年に両軍は地球の第1防衛ラインで激突。『第2次地球攻防戦』が開始されたのと同時に長きに渡る宇宙戦争が開戦した。
久しぶりの新作投稿に少し緊張している作者の歩です。宇宙戦争いかがだったでしょうか?前書きにも書きましたが、この作品は前作の宇宙戦争の設定を変えたオリジナル作品です。初めて読む人も前から読んでいる人にも楽しんでいただけるように頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。