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第5話 デスゲーム

 さっそく『ヒール』を覚えて使って見る。


「『ヒール!』」


 おぉ、身体を淡い光が包み込みさっき受けた傷が治っていく。

 あれ、え?完全回復?HP半分以下だったんだけど……。いくらなんでも回復しすぎじゃないか?

 さすがはオープンベータ……これはすぐ修正されそうだ。


 それから俺は町へと戻った。素材は生産職の知り合いもいないし面倒だから全部店売り。ヒールがあるから下級ヒーリングポーションも店売り。その結果所持金が638Gになった。

 まずは壊れた武器の修理だけど、さすがに初期武器だけあって修理費はたったの10G。そしてバンダナとノーマルシャツを買って防御力を補強。それから俺は現在のステータスを確認した。



名前 忍

種族 ダークエルフ

性別 女

職業 ファイターlv4

 HP 68/68

 SP 68/68

 MP 60/60

 筋力 23

 体力 6

 器用 11

 敏捷 14

 魔力 13

 精神 12

 魅力 5

スキル スキル 剣Lv5 キックLv4 回復魔法Lv1 武器防御Lv1 ローリングLv4 ダッシュLv5

装備

 両手 ツーハンドソード [攻撃力8耐久度30/30]

 頭 バンダナ [防御力1耐久度24/24]

 シャツ ノーマルシャツ [防御力1耐久度24/24]

 体 皮の服 [防御力2耐久度24/24]

 腕 ブロンズガントレット [防御力5耐久度40/40]

 足 皮の靴 [防御力1耐久度24/24]

 マントなし

 リング なし

 リング なし

 イヤリング なし

 ネックレス なし

所持金 428G

所持アイテム

 なし



 システムウィンドウをみるとリアル時間は23時を回ろうかというところだった。一番人が多くなる時間帯だ。町中もその例に漏れず人で溢れかえっている。


「えっ」


 突然目の前のログアウトのボタンが灰色に変わる。

 灰色のボタン……それは押すことができないことを意味する。

 おかしい、街中ならどこでもログアウトできるという話だったはずだ。


「冒険者の皆様、お疲れ様です。このたびはヴァルキリーヘイムのオープンベータに参加していただき、大変ありがとうございます」


 突如男の声が町中に響き渡った。

 嫌な予感が頭をぎる。


「私はゲームマスターのシリウスといいます。このたび皆様にゲームを楽しんでいただくため、我々開発陣は一つの趣向を凝らしました」


 そこら中から歓声が立ち上がった。周りにつられて空を見上げると赤い仮面を付けた男の顔が大きく浮かび上がっていた。そしてその口が町中に響き渡る声に合わせて動きはじめる。


「まず、第一にこれから皆様がゲームをクリアなされるまでの間ログアウトすることができません」


 その言葉で歓声が止んでいった。誰もがシステムウィンドウを開いてログアウトボタンを確認している。


「第二にゲーム内で死亡した場合の措置です。本来VR機では、記憶・経験・意識の空白や断絶を無くすため、プレイ後のデータはプレイヤー皆様の脳へフィードバックされる仕組みになっているのはご存知ですね。そのため本来であれば、安全のため生きている状態で決められた場所でしかログアウトできない措置を取らせていただいております。しかしこのヴァルキリーヘイムの世界で死亡してしまい、そのままゲームクリアが為されてしまった場合には、死亡した状態のデータが皆様の脳へとフィードバックされることとなります」


 死亡したデータが……脳に?!


「もしそうなってしまった場合、心身・身体への障害、植物人間、そして最悪の場合脳が死亡を認識して死に至るといった可能性が考えられます」


 町中を悲鳴が響き渡る。


「何だよそれ!一体何のためにそんなことを!」


 俺の叫び声も周囲の悲鳴に呑まれて消えていき、それを無視したかのようにシリウスの話は続いていく。


「しかしもちろん救済措置も残されています。死亡後5分以内なら復活アイテム又は魔法で復活することが可能です。また、皆様のステータス欄にある貢献ポイントを消費すれば自らが死亡したときに復活、または死亡して5分以上経過してしまった人を復活することが可能となります。貢献ポイントはモンスターの討伐、アイテムの生産、イベントのクリアなど様々な行動で得ることができますが、復活に必要なポイントは一万ポイント。なかなか集められるものではございませんので、他人からの蘇生は期待しないほうがいいかもしれません。もしそれでも他人の復活させたいという方がいらっしゃいましたら、各町の神殿にいるヴァルキリーのところで復活申請を行うことができますし、リスト化された戦死者リストを閲覧えつらんすることも可能です。もしも自分が死亡してしまった場合は、その場で一万ポイント支払うことにより、最後に訪れた町のヴァルキリーの下で復活することが可能です」


 点数を集めて復活……確か昔読んだ漫画に似たような設定の話があった気がする。


「現実世界のことは気にする必要がありません。これから先ゲーム内でいくら時間が過ぎようとも、現実では人が認識できるほど時間が進まないようになっております。とはいえ、だらだらと攻略されても困りますから、期限を今日からゲーム内時間の3年間に区切らせてもらいました。3年以内にクリアできない場合は全てのキャラクターがその場で死亡することとなります。ゲームのクリア条件はヴァルハラに住む最高神オーディンの討伐。クリア得点は討伐隊メンバー全員に送られます。それでは皆様、話が長くなってしまいましたが皆様がよいゲームライフを送れるよう遠くからではありますがお祈りさせていただきます」


 それだけ言い残してゲームマスターシリウスは空から掻き消えていった。

 まじかよ……。あまりの出来事に頭が回らない。俺には相談できる相手もいない。

 本当なら今すぐにでもフィールドへと出て行って少しでも早くレベルを上げるべきだ。頭では分かっている。それでも……。

 俺はまず宿屋へ駆け込んで部屋をとった。

 ひとまず落ち着くべきだ。俺はアーチャーの攻撃一発でHPが半分以下にまで減ってしまった。装備が変わって多少マシになったとは言え、そんな状態で外へ出ればいつ死ぬかも分からない。現実リアルに未練はないが、死ぬのは嫌だ。だったらこのまま町にいるのか?

 それもダメだ。ネットゲームで弱者になってしまえば何もかも奪われてしまう。そう、この命さえも。

 PTはどうだろうか?……ダメだ。面識の薄い人とPTを組んでもいきなり後ろからPKされることももしかするとあるかもしれない。そもそもこんなに耐久力の低い前衛の俺を入れてくれるPTがあるだろうか?……期待はできそうにないな。

 やっぱりソロでいくしかないのか…。

 このデスゲームの世界で生き残るためには何よりも力が必要だ。そう、戦場の最前線に立てるほどの。そうすればどこかのギルドに入れてもらうことができるかもしれない。

 俺は宿屋を出てすぐに武器屋へと向かった。そこで100Gのツーハンドソードを3本購入する。これで例え剣が折れたとしても続けて戦うことができる。

 さらに俺はスキル屋へと向かった。

 一人で戦うなら敵をすばやく見つけることができる探索スキルは恐らく重要になってくるだろう。

 10Gを支払い探索スキルを購入して回復魔法と入れ替える。

 どうせ回復魔法は戦闘中に使う余裕がない。それならば回復するときだけ他のスキルと入れ替えればいいだけの話だ。

 俺は考え得る限りの準備を整えるとフィールドへと飛び出し、できるだけ人のいない方へと進んでいった。


 それからはひたすら戦いに明け暮れる日々だった。


 死と隣り合わせである戦いはデスゲームを強く意識させられるかと思ったが、実際はその逆だった。習慣……とでも言うのだろうか。不思議なことに俺にとっては戦いだけがデスゲームのことを忘れさせてくれる唯一の娯楽だった。

 それに気付いた俺は寝る間も惜しんでひたすら戦いに明け暮れた。

 よくよく考えてみると、一日中ゲームをやっていられるなんて最高の世界じゃないか。

 この時の俺はそんな風にすら考えていた。


 『ファイター』がLv20に達し、転職クエストをクリアして『ソードマンLv20』になった。

 『剣』がLv20に達し、『両手剣Lv20』になった。

 『キック』がLv20に達し、『豪蹴ごうしゅうLv20』になった。

 『ローリング』がLv20に達し、『ターンステップLv20』になった。

 『ダッシュ』がLv20に達し、『縮地しゅくち』にアップグレード可能になったが、『縮地しゅくち』は名前からして発動が終わったところで勢いが停止してしまうことが考えられたため、俺のバトルスタイルには合わずアップグレードするのを見送ることにし、そのまま『ダッシュ』のLvを上げ続けることにした。

 『探索』がLv20に達し、敵の発見のみに特化した『気配察知Lv20』へと派生させた。

 『武器防御』がLv20に達し、『ガードインパクトLv20』になった。

 『回復魔法』は……使う場面がほとんどなかったためLvは未だに4で止まっている。

 そしてログインしてから早くも1ヶ月が過ぎ、俺は自分のステータスを確認した。



名前 忍

種族 ダークエルフ

性別 女

職業 ソードマンLv45

 HP 395/395

 SP 435/435

 MP 490/490

 筋力 23

 体力 6

 器用 11

 敏捷 14

 魔力 13

 精神 12

 魅力 5

スキル スキル 両手剣Lv38 剛脚Lv35 気配察知Lv32 ガードインパクトLv41 ターンステップLv32 ダッシュLv37

ストックスキル 回復魔法Lv4

装備

 両手 クレイモア [攻撃力32耐久度60/60必要筋力13]

 頭 鉢金はちがね [防御力8耐久度60/60]

 シャツ ノーマルシャツ

 体 アイアンブレストアーマー [防御力15耐久度60/60]

 腕 アイアンガントレット [防御力10耐久度60/60)

 足 アイアンライトグリーブ [防御力10耐久度60/60]

 マント なし

 リング なし

 リング なし

 イヤリング なし

 ネックレス なし

所持金 665,412G

貢献ポイント 3506

所持アイテム

 クレイモア [攻撃力32耐久度60/60] ×10

 キャンプセット



 うん、見事なくらい店売り装備だ。


 待ってくれ。先に言い訳させてくれ。


 だって仕方がないじゃないか。生産職の知り合いどころか、普通の知り合いすら一人もいないんだから。

 敵を倒しても素材とお金しかドロップしないし。一人じゃ怖くてボスになんて近づけないし、人のいない方いない方へと進んでるから、危なくなったPTを颯爽さっそうと助けて知り合いになる!なんて都合のいいイベントも発生するわけがない。

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