第42話 ベッドシーン(R15指定)
From:晶
タイトル:逃げろ
内容:黎明は神話同盟の無実の証明するために、忍に懸賞金を掛けた。
イージスのギルドメンバーは現在PKである忍を匿っている容疑を掛けられ、まともにフィールドへ出られるような状態じゃない。
黎明のギルドメンバーと懸賞金目当てのプレイヤーがお前を捕縛、もしくは殺害しようと躍起になっている。
これから一週間プレイヤーたちから逃げ回りながら、貢献ポイントを稼いでくれ。
一週間後に姫が復活する準備と、忍の容疑を晴らす準備を整えておく。
いいか、必ず一週間後に街へ帰って来るんだ。厳しいだろうが、それまで街へ近寄ってはならない。そして隠れるよりも派手に逃げ回ってくれたほうがこちらとしても助かる。
当然プレイヤーに対しては決して手を出してはいけない。
もし手を出してしまえばお前がPKであることが確定してしまう。
何か必要なものがあればローズさんを頼るといい。
彼女は今のところ中立の立場を保っているため身動きが取れない状況ではない。忍のサポートに関しては既に話を通している。
今回の件がうまくいけば、姫が復活した際にそのまま式を挙げてもいいとイージスのみんなは言っている。
それでは頑張ってくれ。健闘を祈る。
マジで?
「お兄様、これは……」
「ああ、分かってる」
これはつまり……きっとそういうことなんだろう。
「ついに俺にも春が来たということだな!」
「ちょ、全然分かっていませんよ!?あんな年増のアバズレナイトにお兄様を渡すわけにはいきません!襲ってくる敵をバッタバッタと皆殺しにしてゲーム内を恐怖のどん底へと叩き落としてやりましょう!」
「そうか、ついに俺にも青い春がすぐそばまで来ているのか。むふ、むふふふふふふふふ……」
「お兄様!正気に戻ってください!」
「婚姻届とかってどこで用意すればいいんだ?やっぱり市役所か?」
「お、お兄様!?」
「はっ!そうだ。バラ色の人生を謳歌するためには師匠の言うことを守らないと。ローズさんの方のメールも確認しておこう」
From:ローズ
タイトル:ボス狩りは中止です
内容:晶様から事情は聞いております。何か回復アイテムから装備の修理まで何かご入用なものがございましたらいつでもご連絡くださいませ
そういえば15時間も戦ってたんだから武器もかなり損耗しているはずだ。
……耐久度残り34か。結構危なかったかも。
とりあえず師匠にボスを狩ってポイントがたまったことと、ローズさんに大量のスタミナポーションと武器の修理をお願いする旨をメールで送っておこう。
ぽちぽち…………送信っと。
とりあえずローズさんたちが来るまで『グニパヘリル洞窟』を少し入ったところで待ってようか。
ぱっと見た感じ敵がいないし、ちょっとだけ仮眠を取らせてもらう。
「少し仮眠を取るから、誰か近づいて来たら起こしてくれないか?」
「え、それじゃあニーフェはいつ寝れば良いんですか?」
「NPCだし寝なくても平気だろう」
「酷いですお兄様!」
「分かった分かった。それじゃあ、俺が起きてる間インベントリの中で寝たらいいから」
そうなのだ。何とニーフェはカバンに潜り込む猫の如く俺のインベントリへと入ってくることが可能だったのだ。
「仕方ありませんね。せっかくお兄様の胸の中で寝られると思ったのに」
「すまんな。これから俺の胸の中は姫の指定席になる予定なんだ」
「お兄様……」
「ん、なんだ?」
「寝言は寝てからお願いします」
失礼な……。あー…やばい。もう…おち……る……。
気が付くと純白のウェディングドレスに身を包んだ姫が目の前の天蓋付きベッドに腰掛けていた。
なんて美しいんだろう。この姫の姿を見れば美の女神すら裸足で逃げ出してしまうに違いない。
外は既に日が沈み、ランプの明かりだけが俺たちを照らし出している。
「姫……いや、セシリア……」
「忍……きて……」
俺はゆっくりとセシリアに近づいていく。
次第に顔が鮮明となりいつもの勝ち気な瞳が少し困ったような色を映し出している。
そんな瞳を見ていると男としてリードしないといけないという気に駆られてくるのは当然の成り行きだ。
「セシリア……」
俺はそのままセシリアの隣へ腰掛け、両肩に手を置くと、セシリアはそっと目を閉じて顔を軽く上へと向けた。
そのキスをねだるような仕草はとても愛らしくて、セシリアのその濡れた唇に我慢できなくなった俺はその赤く火照った頬に右手をそえ、少しずつ顔を近づけながら目を閉じた。
そして次に感触を感じるであろう唇に全神経を集中させていく。
そして……。
カシャン。
「え?」
突然金属的な感触を両手首に感じて思わず目を開いてしまった。
するとそこにはどう見ても手錠をしっかりと嵌められている俺の両手がある。
俺は戸惑いつつ姫の方へと目を向けるとそこには妖艶に微笑んでいる美羽の姿があった。
「くすくすっ」
そして次の瞬間首を冷たい感触が包み込んだ。
「違うでしょう?私とあなたの関係は……」
すぐ後ろから姫の声が聞こえて来る。この首に回されてるのは姫の……手?
「ドーーーーン!なのであります!」
そして突然現れたクリスにベッドへと突き飛ばされた。
一体…何がどうなっているんだ?
手錠をされたままベッドへと倒れ込んだ俺のたわわな胸に突然後ろから手を這わされてしまう。
「忍様、よく思い出してくださいませ。あなた様とセシリア様のご関係を……」
俺と……姫の……関係?
確か俺は姫を甦らせてそれから式を……。
しかし姫は俺に思い出す暇も与えず、俺の顔を足で踏みつけてきた。
ウェディングドレス用に用意した白いストッキングに包まれたその御見足による絶妙な力加減で。
やばい……変な気持ちになっちゃいそうだ…。
「忍さん……不潔です」
委員長が悲しそうな瞳に涙を貯めてこっちをじっと見つめている。
ちょ、反則ですその表情!すっげーソソラレてしまいマスよっ。……女の涙がチート武器っていうのは都市伝説じゃなかったんだな……。(注:そっちの武器ではありません)
「どこを見ているのかしら?ほら、しっかりと身体で思い出してもらうわよ。私とあなたの関係を」
姫の足がまるで生き物のように俺の顔を撫であげる。
どこで覚えたんですか……こんな超絶技巧。
「ほら、ほらほら」
やばい……これは何かが目覚めちゃいそう……、でも口も鼻も塞がれてきて段々息苦しくなってきたような気がする……。
うぅ、勿体無くて意識を手放したくない!でも……もう、限界…かも……ハァハァ…ウッ!
「……さま」
何だ?今いいところなんだから邪魔しないで欲しい。
「……いさま」
もうちょっと、もうちょっとだから。先っちょだけでいいから。
「…お兄様!誰かが近づいてきます!」
「モゴ?」
あれ……嫌な予感が頭を過ぎる。
もしかして今のは……夢……だった…のか?
それにしても視界が暗い。呼吸もできないし、まるで顔に何かが張り付いている顔に張り付いているみたいだ。
俺は顔に手を這わせてその原因を探ってみる。
「きゃっ、お兄様のえっち!」
このゴツゴツとした感触……ニーフェ……お前か。
俺は顔にしがみついていたニーフェをぺリっと剥がすとその辺に投げて再び眠りに入ろうと自分の腕を枕にして再び寝転がった。
はぁ……今ので醒めたわ。色々なところが。もう一回寝なおそう。
「お兄様!おきてください!」
「やだ、もう一回寝る。今ならまださっきの夢に戻れる気がする。もっかい姫と逢ってくる」
そうだ。まさにこれからってところだったのに余計な邪魔しやがって。さぁ睡魔よ。俺をさっきの夢の世界へと再び誘ってくれ。
「何をわけの分からないことを言っているんですか!誰かが近づいてきているんですよ!」
「何人たりとも俺の眠りを妨げる奴は許さん」
「お兄様はどちらかというと主人公ポジションです!残念ならがクールなライバルキャラを演じたところで失笑しかもらえませんよ!」
失礼な……。
「くすくすっ、君はよっぽどいい夢を見ていたんだね」
「誰だ!」




