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第4話 独りでできるもん!

「素晴らしい腕前だな。まさか一撃も食らわないとは」

「そいつはどうも」


 これでも昔からゲームだけはかなりやりこんでいた。特にアクションゲームや格闘ゲームが好きでそこそこ強い方だったとは思う。

 だからこの極意(笑)が使えるようになってからは面白いくらい勝てるようになっていた。


「景品という約束だったな。これをやろう」

「これは?」

「ブロンズガントレットだ。装備することで腕を守ることができる」

「おお、ちょうど腕の装備がなかったんだ。いいイベントが追加されたものだな。それにしてもお金をもらわずに景品なんか出していてやっていけるのか?」

「はははっ、いらん心配をするな。こういったものに関しては全て国から支給されている」

「血税かよ……」

「それだけ国王はお前たち戦士に期待しているということだ」

「まぁありがたくもらっておくよ」


 ブロンズガントレットを装備スロットへ入れると腕にガントレットが装着された。

 格好いいな。腕だけ。

 金属装備はおとこのロマンだろう。


「それではファイターへの転職を認める。貴殿の今後の活躍を期待する」

「ああ、任せてくれ」


 俺は笑顔で答えた。相手がNPCであれ人から期待されるのは悪くない。

 転職が済んだところでステータスを確認してみる。



名前 忍

種族 ダークエルフ

性別 女

職業 ファイターLv1

 HP 47/47

 SP 47/47

 MP 30/30

 筋力 23

 体力 6

 器用 11

 敏捷 14

 魔力 13

 精神 12

 魅力 5

スキル 剣Lv2 キックLv2 回復魔法Lv1 武器防御Lv1 ローリングLv2 ダッシュLv2

装備

 両手 ツーハンドソード [攻撃力8耐久度30/30必要筋力12]

 頭 なし

 シャツ なし

 体 皮の服 [防御力2耐久度24/24]

 腕 ブロンズガントレット [防御力5耐久度40/40]

 足 皮の靴 [防御力1耐久度24/24]

 マントなし

 リング なし

 リング なし

 イヤリング なし

 ネックレス なし

所持金 50G

所持アイテム

 なし



 少しだけスキルレベルが上がってるな。

 とりあえず無事転職も済んだし、さっそく武具屋にでも行ってみよう。

 俺は武具屋に行き、店員に話しかけ、販売一覧リストを出してもらった。

 次に買うとしたら…ツヴァイハンダー。これってツーハンドソードのドイツ語読みだったっけ?まぁ今持っているツーハンドソードよりは攻撃力高いけど1k(1,000G)か。先は長いな。

 防具はブロンズ装備でも全部1k(1,000G)近いなぁ。正直序盤の敵くらいじゃ攻撃受けないだろうから防具は後回しでもいいんだけど、見た目にはこだわりたいから皮の服は早く脱ぎたい……。

 頭のバンダナ100Gとノーマルシャツ100G。この辺りが当面の目標でいいな。

 さて、そうと決まればさっそく狩りだ。確か町の周りには雑魚がたくさんいたと思うんだけど……。


 そう思って町の外へと出てきたものの人の多さに唖然あぜんとした。

 しかもどこもかしこも数人でPTを組んでいて、わいわいと楽しいそうである。

 なんてうらやま…いや、羨ましくなんてない。きっとこの目から溢れる熱い水は気のせいだろう。

 仕方がない……とりあえず人がいなさそうなところまで歩いていこう。

 俺は町の周囲に広がっているゴブリンエリアを抜けてウルフの出るフィールドへと足を踏み入れた。しかしそこも既に人が溢れかえっている。

 ちょっと見て回った感じ旧作のリメイクとはいえ、フィールドの配置や敵のポップ《沸く》範囲なんかも一新いっしんされているみたいだ。

 それはそうか、全く同じなら新鮮味が薄いし、新規組との間に不公平感が出るしな。

 仕方がない……ちょっと離れたところに森が見えるからそこに行ってみよう。

 森の中へ入るとすぐに敵が見えた。ホブゴブリンだ。

 普通のゴブリンと違い青色の肌をしていてちょっと強そうだけど、勝てない敵じゃないだろう。

 よし、『ダッシュ』で近づいて先制攻撃だ。


「おっらあああああああああああ」


 叫びながらのダッシュ斬りで相手を一気に押し込む。そこからは一方的にコンボに次ぐコンボで敵を切り刻んでいく。


「はっ!せいっ!おらっ!ふっ!」


 前へ前へと踏み込みながら剣を振り回す。

 重量のある両手剣はノックバック判定が高く、相手に立ち直る隙も与えない。他のゲームでもそうなのだが、ノックバック判定に重要になってくるのが武器の重さとインパクト時のスピードである。だから両手ハンマーのように非常に重量のある武器なら腕で振り回すだけでも敵を簡単にノックバックさせることができる。

 しかし逆に両手剣のような武器だとかなり勢いを付けて叩きつけなければならない。そのために重要になってくるのが全身をバネのように使って武器を振り回すことだ。さらに移動の勢いまで加わればなおよい。

 もし俺が剣の達人だったなら全身を使いつつも小さな動きで剣を振るうことができたかもしれない。しかし残念ながら俺にそんな技術はない。全身を使って剣を振るっていれば視点が目まぐるしく動くし、剣を振り抜いた後、剣の重みで身体が後ろを向いているなんてこともよくある。その状態からさらに相手へ向かって切りつけるわけだ。はっきり言ってゲームや漫画にあるようなめちゃくちゃな動きをしている。

 普通なら敵がどこにいるか見失ってしまうところだが、そこに俺の極意(笑)が生きてくるというわけだ。クルクルとフィギュアスケートでも滑っているかのように目まぐるしく変化する視界にも惑わされず、俺のゲーム脳は自分と敵の位置と状態をしっかり把握できている。まさにキャラクターの少し後ろからコントローラーで操作しているような感覚……と言ったらいいのだろうか。

 しかしこんな風にノックバック無双ができるのは身体の軽い雑魚かメイジ系の敵相手にだけだろう。


 ホブゴブリンを三匹倒したところで俺の身体から青い光が立ち昇る。レベルアップした証拠だ。

 よし、この調子でどんどんレベルを上げていこう。


 30分ほどするとこの周りに人が少しずつ増えてきた。このままじゃ敵の取り合いになりかねない。

 しかもどいつもこいつも仲間とわいわい楽しみやがって……ぺっ。


 ソロの俺がまるで『ぼっち』みたいじゃないか。


 こんなところでやってられるか。もっと奥に行こう。


 森を抜けると再び草原が広がっていた。

 このエリアの敵は……オークか。それもプレイヤーのように逞しいオークじゃなくて、ちょっとぽっちゃりした感じで雑魚ざこいオーラが全開である。

 最初に見つけたのはオークファイターとオークアーチャー。

 アーチャーに距離を取られるとちょっと厄介だなぁ。先にアーチャーを仕留めるか。

 いつもどおりの先制ダッシュ斬り!


「ダッシュスラァァァッシュ!!」


 そんなスキルないけどな。

 ノックバックしたところへ追撃コンボ。


「はっ!はっ!せいっ!たぁっ!」


 敵の腹部を剣で薙ぎ払い、ノックバックしたところへ大きく踏み込んで袈裟懸けに切り裂く。

 強い人と戦うのも面白いけど、雑魚モンスター相手に無双するのも嫌いじゃない。特に搦め手(からめて)を使ってこない雑魚との戦いはストレスがなくてすごく気持ちいい。


 オークファイターが近づいてくる前にアーチャーを撃破。俺の身体から再び青い光が立ち昇る。またレベルが上がったみたいだ。


「ははっ!まだまだいくぜ!パワーインパクト!」


 そんなスキルもないけどな。

 オークファイターとの僅かな距離を一瞬『ダッシュ』して一息で詰めた、ただのダッシュ斬り。

 やっぱり声をあげながら切りかかるのは気持ちがいいなぁ。早く本当の技スキルを覚えてスキル名を叫びたいところだ。


「せい!たぁ!おら!ハァッ!ハァッ!砕け散れっ!」


 蹴りを混ぜつつ兜割り|(ただの縦斬り)で止めを刺す。

 今のはリプレイにとっておきたいくらいの改心のコンボだった。あぁ、いつの日か仲間ができたらせてやりたい。

 それから俺はさらにオーク狩りを続けた。いつの間にか剣のスキルレベルも5になり、剣技スキルを覚えていた。

 そしてちょうど10匹目のオークに斬りかかった時……。


「ヒャッハァァァー!!!」


 パリンッ!


「え」


 手の中のツーハンドソードが砕け散って消滅した。


 唖然あぜんとする。

 その隙を突いてオークアーチャーの放った矢が俺に突き刺さり、HPが一気に半分以下イエローゾーンへと突入する。


「なっ!」


 いくらなんでも弱すぎだろ!

 目の前で体勢を立て直したオークファイターが切りかかってくる。

 俺はそれをローリング回避で避けると、アーチャーの弓を避けながら『ダッシュ』を使ってその場を離脱した。


「武器が砕けたのか……」


 このゲームの武器には耐久度が設定されている。その耐久度が0になると今みたいに武器が砕け散るのだ。左手でシステムウィンドウを操作してインベントリ(アイテム欄)を開くとそこには砕け散った武器が収められている。これを鍛冶屋にもっていけばお金はかかるが修理してもらうことができるというわけだ。


「町に帰るか……ちょうどいいから『ダッシュ』のスキルレベルを上げながら帰ろう」


 今回の成果として418Gと下級ヒーリングポーション1個、ゴブリンとオークの素材数個、そして『ヒール』の魔法スクロールをゲットしていた。

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