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第36話 剣聖成長ス

 というわけで新たな仲間?である黒竜のニーフェを連れて俺たちは街へ戻った。

 とりあえずよく分からないニーフェのことを姫たちによく分からないまま説明をすると、姫たちもよく分からないといった顔をしていた。


 しかし時間が経つにつれ、次第にギルドのみんながニーフェに慣れはじめ、ギルドのマスコット的存在となっていく。

 そして今では姫や師匠、そしてその他大勢からオヤツをもらってきてはガジガジと齧るようになっていた。

 ちなみに本当に何の役にも立っていない。しかし飯だけはしっかり食う。

 まるで日に日にお金が減っていく呪われたアイテムのようだ。と言ったら頭に噛み付いてきやがった。


 そして自分で言っていた通り、本当に寝るときになったら勝手に俺のベッドへと入ってきた。正直皮が硬くてちょっとざらざらして石でも抱いて寝ているみたいだと言ったら手に噛み付いてきやがった。何でも最高級(笑)の抱き枕を自負しているらしい。

 全くヘソで茶が沸くわ。

 それだけならまだしもときどき寝ている間に顔にへばりついてくることまである。

 そういうときってなぜか足を踏み外して落ちる夢とか誰かに殺される夢とかを見るんだよな。

 そして目が覚めたらニーフェが顔に張り付いていて息ができなくなっている。

 仕方ないからそういうときはニーフェを布団でぐるぐる巻きの団子状にして抱き枕にしてやっている。

 これならニーフェも本望だろう……と思っていたら足に噛み付いてきやがった。

 はぁ……どうせ添い寝してくれるなら姫や委員長にしてもらいたいものだ。ロリコンじゃないがクリスでもいい。ロリコンじゃないが。大事なことなので二回言いました。


 ニーフェに関してはそんな感じだったが、その一方で狩りの方は順風満帆に進んでいた。

 近くにあった凍てついた牢獄というダンジョンでは念願のスノーホワイト(宝石)を入手することができ、自分たちの分をいくつか確保してからはクリスに販売することでそこそこの利益を生んだ。

 装備への宝石装飾スキルを持っているのはジークかと思っていたら実はクリスだったのだ。

 おかげで俺たちはペナルティを受けることもなく戦えるようになっていた。

 そして俺はその稼ぎで難なく借金を返すことができた。


 それから街中でマントの製作レシピを手に入れるクエストが存在することが分かり、それを受注したジークの手伝いもした。

 生産職のクエストであるにも関わらず、なぜかスケルトンナイトと戦闘をさせられ、クエストアイテム『ボロ切れのマント』を入手することになった。

 確かに生産職一人では厳しいクエストであったが、普通のPTなら難なくこなす事のできるレベルで、俺たちもあっさりそのクエストを終えた。

 何でも最初に作ることのできるマントの素材も『ボロ切れのマント』らしい。それにしてもマントの素材がマントということに疑問を憶えるのは俺だけであろうか?


 そして俺たちはコツコツとレベルを上げ、ソードマンがLV70に達した時点で転職クエストが発生した。

 クエスト内容は剣聖レオルギウスからお使いクエストを受け、各地で特定の敵を倒したりNPCを訪ねた後、レオルギウスから剣術指南を受けるというものだった。

 お使いクエストを『ダッシュ』を使って一人でさっさと終わらせると、みんなの見守る中レオルギウスとの直接戦闘へと突入した。

 合格条件はこちらのHPが三分の一を切る前に相手のHPを半分まで減らせばいいというもので、レオルギウスは「まだソードマスターにもなっていない者の力を見るくらいならばこれで十分だ」と尤もらしいことを言って上半身裸のまま木刀を二本持ち、斬りかかってきた。

 恐らく、初心者がここに来るまでのプレイヤースキルでクリアできるようにステータス的にはこちらの方が有利になっているのだろう。

 装備がしょぼいとはいえ、剣聖なんて名乗っているくらいだからどれだけ強いのかと思ったら、ドッペルゲンガーVer1とは比べるべくもなく圧勝してしまった。

 しかもHPを半分まで減らせばいいところを勢い余って殺してしまい、クエスト達成不可能になってしまうという非常事態まで起きて委員長に泣きついたところ、


「クエストを一度破棄すれば最初からやり直せますよ」


 と言われ泣く泣くお使いクエストからやり直すこととなった。

 そして俺は晴れて『ソードマスターLv70』への転職を終え、新たにクラススキルを獲得した。


 今までは『ソードマン』やら『シルバーナイト』やら『サマナー』やら『プリースト』やらHP・SP・MPの補正と自然回復量が違うだけで、結局全ての職業が全てのスキルを使うことができていたからいまいち『ソードマン』であることの恩恵を受けている気がしなかった。

 しかし、どうやら三次職からは自分でセットできる6つのスキルとは別枠で職業固有のエクストラスキルを覚えることになり、職業の個性がはっきりと出てくるような仕様になっているようだ。

 つまり三次職になってようやく初心者を脱することができたということだろうか。


 ちなみに『ソードマスター』のクラススキル|(Cs)は『ラッシュ』というパッシブスキルで、攻撃速度つまり斬速を10%向上させるというものだった。

 これによりインパクト時の斬速が上がり、一発のダメージが上昇するとともに、単位時間当たりの攻撃回数が増えることになったため、俺の火力は格段に上がることとなった。

 そしてこのクラススキルというものは、外すこともできなければLvもなかった。

 この分だと恐らく四次職もありそうだし、そのクラススキルを考えるとワクドキが止まらない。

 実際この情報が知れ渡ることで、プレイヤー全体のLV上げに対するモチベーションが上がり、俺に続いて次々と三次転職が行われていった。


 姫は『シルバーナイト』から『ロードナイト』となり被ダメージを下げるパッシブスキル『フォートレス』を覚え、師匠は『サマナー』から『ネクロマンサー』となり召喚したアンデットのステータスを強化するパッシブスキル『血の契約』を覚え、委員長は『エンチャンター』から『アクセラレータ』となり補助魔法の効果を上げ消費MPを抑えるパッシブスキル『勝利への促進』を覚え、美羽は『シルバーナイト』から『パラディン』となりパーティーメンバー全員へのダメージを40%肩代わりするトリガースキル『絆の盾』を覚えた。

 『絆の盾』が『騎士の誇り(シュヴァリエール)』と何が違うかというと、トリガースキルということでMP持続消費させることで自由に発動状態のオンオフを切り替えることができる点と、転嫁するダメージは食らった仲間の防御力が適用された後さらに自分の防御力も適用されるため、自分に受けるダメージがとても小さくなるという点である。そしてこのスキルの唯一の欠点は弱者を守るためのスキルであり、同じタンカー職には効果を及ぼさないという点である。

 もしこれが同じタンカーに効果を及ぼしてしまえば、バランスが大きく壊れてしまうというのが原因らしい。本当によく考えられている。

 後で聞いた話だが、ローズさんも転職を終え『プリースト』から『ハイプリースト』になり回復魔法の効果を上げ消費MPを抑える『女神の癒し手』を覚えたらしい。


 さらにスキルも成長し『両手剣Lv70』が『破城剣Lv70』に、『剛脚Lv70』が『神脚Lv70』に、『ガードインパクトLv70』が『スキルクラッシュLv70』に、『ターンステップLv70』が『ムーンウォークLv70』に、そして『ダッシュ』がついにLv100を超えた。

 『スキルクラッシュ』は『ガードインパクト』と使い方は同じだが、大きく異なる点が一つある。それはこちらの攻撃ダメージが相手のスキルダメージを上回った場合、その差分のダメージを与えるだけでなく、連撃や多段ヒットスキルをその時点で止めることができるのだ。そしてスキルを潰した瞬間ボスであろうとも一瞬怯むほどの強烈なノックバックが発生する。

 『ムーンウォーク』の方は超有名ダンサーの流れるような後ろ歩き……ではなく、流れるような足運びをする可能とする回避スキルである。『ターンステップ』のように回りながら回避することもできるし、回らずに回避することもできるのでかなり行動の幅が広がったといえる。そしてこの『ムーンウォーク』の最大の特徴はぬるぬると流れるように動く足運びである。これがまさに超有名ダンサーのムーンウォークの如く水平にぬるぬると動くことができるため、視点も重心もブレにくい。しかも身体のキレも上がり、ターンスラッシュも以前よりキレが増したように思える。そしてもちろん超有名ダンサーのような後ろ歩きも完璧である。

 これがまたギルドメンバーに馬鹿ウケで、打ち上げのときのいい余興となってくれた。


 そして怒涛の勢いで攻略が続けられ、気が付けばニーフェが仲間になってから既に二ヶ月が経過し、俺たちはついにとあるギルドクエストへと挑むこととなった。

 ギルドクエストとはクリアすることにより、ギルド又はギルド員全員にプラスの恩恵がもたらされるクエストのことである。

 その日の朝、俺は明け方から目を覚まし、準備の怠りがないかステータスを確認した。



名前 忍

種族 ダークエルフ

性別 女

職業 一匹狼のソードマスターLv88

 HP 816/816

 SP 1016/1016

 MP 980/980

 筋力 23(+5)

 体力 6

 器用 11

 敏捷 14(+2)

 魔力 13

 精神 12

 魅力 5

スキル 破城剣Lv82 剛脚Lv74 スキルクラッシュLv77 ムーンウォークLv85 ダッシュLv109 Exチェンジウェポン Csラッシュ

ストックスキル 回復魔法Lv4 気配察知Lv33

装備

 両手1 断罪のエクスキューション [攻撃力102耐久350/350必要筋力28]

 両手2 暴虐のドラゴンデストロイ [攻撃力165耐久580/580必要筋力45]

 頭 プラチナサークレット [防御力24耐久度40/40]

 シャツ 力の襯衣しんい [防御力4耐久度60/60筋力+1]

 体 プラチナブレストプレート [防御力40耐久度40/40]

 腕 プラチナライトガントレット [防御力26耐久度40/40]

 足 シルバーライトプレートブーツ [防御力22耐久度40/40雪上移動可能]

 マント ギルドマント [防御力4耐久度40/40防寒]

 リング 力のリング [筋力+1]

 リング 力のリング [筋力+1]

 イヤリング 力のイヤリング [筋力+1]

 ネックレス 力のアミュレット [筋力+1]

 ファッションアバター1 海賊の眼帯

 ファッションアバター2 漆黒のガーターベルト

 ファッションアバター3 煉獄の剣気

所持金 2,065,429G

貢献ポイント 8942P

所持アイテム

 中級キャンプセット

 ヒーリングポーション×20

 スタミナポーション×40

 解毒ポーション×20

 麻痺消し×20

 眠気覚まし×20



 武器はマイスタークリス製、防具はジーク製で、アクセサリーは委員長が他プレイヤーとの取引をして手に入れてくれた。

 さらにジークによってギルドメンバー全員に作られたギルド紋章入りマント。真紅のマントに純白のカイトシールドのマークがでかでかと刺繍され、俺たち『イージスの盾』のシンボルともなっている。

 ちなみに姫だけはギルドマスターと分かるように、純白のマントに黄金のカイトシールドが刺繍されている。本人は最後までみんなと一緒がいいとごねていたが、やっぱりギルドマスターだからと俺たちがごり押しして特別なデザインにしてもらった。


 そしてなぜか俺が受け取ったマントもみんなとデザインが違っていて、漆黒のマントに真紅のカイトシールド……それだけならまだいいが、なぜかところどころに血が飛び散った跡のような紅い刺繍が施されていた。

 なんだこの前衛的なデザインは……とジークに詰め寄ったところ、何でもイージスの特攻隊長に相応しいマントにしてくれとみんなからこっそり要望があったらしい。

 いや、それにしても特攻隊長は特攻隊長でも、これだと別の特攻隊長になっちゃうだろう……。


 そしてボスであるスノーマンリーダーがドロップしたユニークアイテム『煉獄の剣気』を装備することにより、クリスにプラチナ鉱石で作ってもらった『断罪のエクスキューション』が黒く禍々しい炎を纏っている。

 さすがにこれを落札するときはライバルが多く、ファッションアバターにしては異例の2Mも出費することになってしまった。


 正直なところ黒と紅で染め上げられた装備に身を包んだ青白い肌をしているダークエルフの女である俺のキャラクターは、どこからどう見てもボスで出てきてもおかしくない程禍々しい格好をしている。

 そして周囲と比べても際立って艶かしい。うむ、実にけしからん。さすが巨匠ジークによる作品だ。

 これで中身が俺じゃなければ完全に惚れていたことだろう。


「なに鏡をみてにやにやしていますかお兄様」

「フフフ、ニーフェよ。俺の姿、実にエロ格好いいと思わないか?」


 そう言ってニーフェの方へと振り返り、腰に手を当ててポーズを取る。


「はいはいそうですね。ほらいきますよ。多分皆さんもう集まってますから」

「何を言っているんだ。まだ日が昇ったばかりじゃないか」

「はぁ……それはもう3時間も前の話です。お兄様が鏡を見てにやにやしている間にもう集合時間5分前ですよ」


 なん……だと……!

 急いでシステムウィンドウの時計を確認すると、既に七時五十五分になっていた。


「なんでそれを早く言わないんだ!というか気付いていたなら途中で呼んでくれよ!」

「いやだってにやにやしてるお兄様に話かけるのがとても気持ち悪かっ……気色悪かっ……生理的に無理でしたから」

「酷い方に言いなおしてどうする!」

「的確に表現しようと思いまして」

「ちょ、おまっ」

「さらに付け加えるなら竜に向かってポージングするお兄様はキング・オブ・ザ・コッケイでした。ビックプルです」

「何だよビックプルって」

「ビックプル。大きく引く。つまりドン引き」

「メニィなお世話だ」

「ルー大○ですかお兄様」


 なぜお前がルー○柴を知っている……。


「そんなことより時間は大丈夫なんですか?」

「そんなことって!……あ、やばい。急ぐぞ!」

「ちなみにメニィはたくさん。余計なはトゥメニィですお兄様」

「ちょ、ダメ出しなんてしてる場合か!ほら、ベリー急ぐぞ!」

「ほいさ」


 ニーフェが肩に飛び乗ったのを確認すると、俺は宿屋を出てギルドホールへと『ソニックドライブ』した。

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