第32話 ハーレムエンド(R15指定)
それから俺たちは案の定ニヴルヘイムまで観光に来ていたクリスたちと合流し、雪原フィールドへと出た。
「確かに移動速度とSP減少のペナルティーを受けているのであります」
「なるほどな。移動速度は雪による影響、SP減少は寒さによる影響……といったところか」
「どうだ?何とかなりそうか?」
「ああ。というか何とかするための装備が普通にNPCの店で売っている」
「そうなんですか?」
「ああ。今試しに装備してみよう」
ジークはシステムウィンドウを操作して装備を変更していく。
野暮ったい茶色のマントと靴の底に平べったい金具が付いた。
「それは……『かんじき』ですか?」
「そうだ。雪の上を歩くための装備が『かんじき』なんて全く随分古風なゲームデザインだな。それと『旅人のマント』を装備した」
「ペナルティーはどうなっていますか?」
「移動速度のペナルティーがマイナス50%からマイナス20%まで緩和されているな。SP減少のペナルティーの方は完全に消えている」
「なるほど。作ることは可能ですか?」
「そうだな……かんじきの方はすぐにでも作れるだろう。ただマントの方は製作法を示した『レシピ』がまだ確認されていないから無理だな。もしかするとニヴルヘイムに生息するモンスターからドロップか、クエストで手にはいるのかもしれない」
「そうですか。ならば当面マントの方は店売り装備でいくしかありませんね」
そ、そうなの?それじゃあせっかく装備したガーターベルトが隠れるんだけど…
「うーん……かんじきにしても移動速度が20%も減るのか。これはどうしようもないんだよな?」
しかも『かんじき』って見た目が微妙にダサいし。
しかしそこでクリスの方から別の方法が提示された。
「多分完全に打ち消すことも可能なのであります」
「そうなのか?」
「はいなのであります。水辺での移動ペナルティーは靴にサファイアを付与することで完全に無効化できるとの情報が公開されていたのであります。だから雪によるペナルティーもそれに対応した宝石を付与することで多分無効化できるのであります」
「どんな宝石か分かるか?」
「おそらく『スノウクリスタル』っていう宝石があるはずなのであります」
「スノウクリスタル……雪の結晶ですか。それも存在は確認されているんですか?」
「まだ未確認なのであります。図書館の本に名前だけ載っていたのであります」
「そうですか。ならそれを含めて今後探していく必要がありますね」
「よし!そうと決まればさっさと街へ戻ろうぜ。ここはちょっと寒すぎる」
「そうだね。それでとりあえずはジークに『かんじき』を作ってもらおう」
「おう!任せろ!お前らのおかげでシルバーはまだまだ余ってるからな。もちろん金はもらうが」
それから俺たちは街へと戻り、ジークにシルバー製の『かんじき』を作ってもらい、旅人のマントを買って姫たちと合流した。
何でもギルドメンバーのほとんどがクリスやジークと顔見知りとのことでそのまま二人を酒場へと強制連行、ボス討伐の打ち上げを開催するという流れになった。
しかも偶然隣ではローズさん率いるローゼンクロイツもこれから打ち上げを行うらしい。
「それじゃあ、ヘルガイズ討伐と」
「ニヴルヘイム開放の成功を祝しまして」
「「「「「乾杯!!!」」」」」
そして二人のギルドマスターの音頭により打ち上げが開催された。
最初のうちはみんな楽しく飲んでいたのだが、乾杯から一時間……どうしてこうなった。
俺は自分の体力が低いせいで状態異常への耐性も低く、酒にも酔いやすいことが分かっていたのでジークと女体の神秘について語りながら弱い果実酒をちびちびと飲んでいた。
「忍しゃん!どうしてあなたはしょんなにしゅけべなんでふか!」
最初に壊れたのは委員長。体力もそんなに高くないはずなのに手には結構強い酒を持って俺にもたれかかってきた。犯人は分かっている。だって後ろでクスクスと笑っているのだから……。
「い、いや?俺は普通ですよ?別に俺が特別スケベなわけでは…」
「言い訳なんておとこりゃしくないでしゅ!」
「は、はい……」
「普段からちらちらとわたしの胸や太ももをぬすみみみてましたでしょ!」
「なっ…・ばれてた……だと……!」
「しのぶしゃんは視線が露骨しゅぎましゅ!全部バレバレでしゅ!それで毎晩毎晩いけない妄想をしていたはぢゅでしゅ!そうに決まってましゅ!」
「い、いや、決してそんなことは……」
そ、そのお胸様が今まさに俺の背中にぐいぐいと……やばい、もう俺死んでもいいや。
「言い訳なんておとこりゃしくないでしゅ!」
「は、はい……」
「そうやって普段からちらちらと私の……」
このままだと酔っ払いの永久ループに入ってしまう!……それはそれでありだ。
「そうだったんですのね。だからあたくしの下着まで奪って……」
な、なぜローズさんがここに!?
「いや、あの、これはローズさんの下着ってわけじゃ……」
「言い訳なんておとこりゃしくないでしゅ!!」
「は、はい……」
「あたくしの下着を使って夜にあんなことやこんなことを……うぅ……あたくしのレクサちゃんが変態に汚されるなんて……よよよ」
「アハハッ!眼帯のおねーさんは真性の変態さんなのでありマス。アハハハハハッ!」
クリスまで!?
次の瞬間身体中を電気が駆け巡った。
何が?一体何が起こったんだ!?
「そうだよね。おにーちゃんは苛められて悦ぶ真性の変態さんだよね。はむっ」
ビクッ!
ま、またっ!?
一体何が起こったんだ!?…耳を……噛まれた!?
ちょっ、やばい!
「美羽!やめろ!お前男だろ!俺にそんな趣味ねぇ!」
「あはっ、でも今おにーちゃんは女なんだから男と女で何にもおかしいことなんてないんだよ。はむはむ」
「ちょ!やめ!マジやめて!何でそんなにテクニシャンなんだよ!?」
「アハハッ!眼帯のおねーさんはロリでショタでホモでマゾなのでありマス。アハハハハハッ!」
「人聞きの悪いこと言わないで!俺そこまで変態じゃないよ!?」
「言い訳なんておとこりゃしくないでしゅ!!」
「は、はい……」
「あぁ……あたくしのレクサちゃん……」
そう呟きながらもローズさんが俺の太ももに手を這わせてくる。
「うひゃっ!こそばゆいから!ちょっ、どっちが変態なんだよ!」
ローズさんの手つきが大胆すぎる!既にその手は下着じゃなくて太ももを揉みしだいてるんですけど!
そんなことをしている間にも委員長の豊満なお胸様がぐいぐいと背中を押してくる。
やばい……意識が飛びそう……。
しかしそこへ胸からヘソに向けてすうっと何かになぞられた様な感触が走る。
「そうよね……忍ってば昔からキツイこと言われるほど慶んで、冷たい目で見るほど悦んで……だから私もついついあなたにはきつく当たっちゃうのよね……本当は怒りたくなんてないのに!」
いや、あの、姫?足で踏みつけながらそんなことを言っても全然説得力ないんですけど……。
「そんなことを考えながらマスターに踏まれて悦んでるくせに、あむっ」
「うひっ!お前はエスパーか!ちょっ、マジでやめて!お前はやばいから!」
「あなたがそうやって反応するからみんな悦んじゃうのよ?ほら、ほらほら、こんなことされて悦んでちゃダメじゃない」
そういって姫が胸ぎりぎりのところを足でなぞる様に踏みつける。うひゃっ!え、まさかのじらしプレイ?
「あぁ……いとしのレクサちゃん……」
「ロ、ロ、ロ、ローズさん!手がっ!手がだんだん上に上がってきてますから!」
「そんなことを言いながらどこ見ているんでしゅか!目がましゅたーの股間に釘付けでしゅよ!」
いや、だってもうちょっとで見えそ……。
「アハハハハッ。変態なのであります!真性の変態なのであります!アハハハハハっアハハハッ!」
遠く離れた席では師匠とジークが落ち着いた雰囲気の中、酒を傾けている。
なにその大人の空間?俺も混ぜて?
いつになったら醒めるんだこの地獄(天国?)は…・・まぁお酒が切れたらすぐにみんな醒めるだろう。そう思っていたら、俺は一人の暗躍する影を見つけてしまった。
ローズさんと一緒にPTに入ってくれていたヒーラーの娘だ。
数種類の酒瓶を両手に持ち、本人たちも気付かない間に酒を注ぎ足していく。
なんて野郎だ……。この地獄を影で支えていたのはこいつだったのか……。
俺がその子を睨み付けているとその子も俺に気付いたのかこちらを向いて満面の笑みで親指を立てた。
グッ!
いや、お前何を良い仕事しましたみたいな顔をしてるんだよ!全然良い仕事してないからな!
この恨み……はらさでおくべきか……。
恨みがましい目で見ているとその子がそっと姫に酒瓶を手渡した。
え、まさか……。
「ほら、あなたもしっかり飲みなさいよ。私がお酌してあげるから」
そう言って姫が俺の腹を踏みつけたまま口に酒瓶を突っ込んでくる。
「ングッ」
これは断じて酌じゃねえええええええええええええええ!!!
そしてそのまま瓶を逆さに立てらせ、無理やり酒を飲まされていく。
「ング、ゴクッゴクッ、ゴホッ、ゴクッゴクッ」
口から酒が溢れようとも無理やり飲まされ続ける…なんて…酷い…状況……なんだ……。
そして俺はそこで意識を手放すこととなってしまった。




