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第31話 コイマス

 そして委員長と美羽はそれぞれ『力のアミュレット』と『力のリング』を670k、620kで落札することに成功した。

 何でもみんな今回のボス狩りに向けてシルバー装備へと切替えした直後だったこともあって、入札金額が釣り上がっていくようなことはなかった。

 そして俺は二人からそのアクセサリーを受け取り、後日お金が貯まったら2割増で返すということで許しを得ることができた。ガーターベルトなんてものにお金を全部注ぎ込んだ俺になんて寛大な処置だろう。もちろん後悔はしていない!

 その後、『治癒の指輪』と魔法スクロール『リジェネレーション』は案の定ローズさんが、Exスキルスクロール『高速再生』は黎明のサブタンカーの人が落札していた。

 姫や師匠たちも今回のオークションで『血塗れた布』『プラチナ鉱石』『オニキスの原石』などを落札しており、今回のボス狩りはなかなかに上々の成果だそうだ。

 そして全てのアイテムが無事落札され、ネームレスさんの方から集計結果が発表された。


「集計の結果合計金額は9,436,987Gだ。今回は参加者が60人、協力をしてくれた生産職が6人で一人当たり142,985Gとなる。報酬は各ギルドのギルドマスターに渡しておいたから、そちらから受け取ってくれ。それでは解散とする。みんな、次も生きて会おう!」

「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」


 そしてボス討伐イベントはこの場で解散となり、俺はとりあえず先ほど入手したアイテムを装備してステータス画面を開いた。

 そういえば確か今回のボスから『トロール殺しの』の称号を貰ったんだったな。ちょっと効果を見てみるか。



怪力殺しの 体力+2

取得条件

 トロールボス『ヘルガイズ』の討伐。


《称号を『怪力殺しの』にしますか?(Y/N)》



体力アップか。これで連合メンバーが全体的に死ににくくなることだろう。

俺には今のところ必要ないからこのままでもいいかな。



名前 忍

種族 ダークエルフ

性別 女

職業 一匹狼のソードマンLv62

 HP 514/514

 SP 554/554

 MP 660/660

 筋力 23(+2)

 体力 6

 器用 11

 敏捷 14(+2)

 魔力 13

 精神 12

 魅力 5

スキル 両手剣Lv58 剛脚Lv54 ガードインパクトLv57 ターンステップLv56 ダッシュLv63 Exチェンジウェポン

ストックスキル 回復魔法Lv4 気配察知Lv33

装備

 両手1 シルバーブレード [攻撃力70耐久280/280必要筋力22]

 両手2 銀のドラゴンデストロイ [攻撃力110耐久420/420必要筋力35]

 頭 シルバーサークレット [防御力18耐久度40/40]

 シャツ メッシュシャツ(蜘蛛の銀糸) [防御力4耐久度60/60]

 体 シルバーブレストプレート [防御力32耐久度40/40]

 腕 シルバーライトガントレット [防御力22耐久度40/40]

 足 シルバーライトプレートブーツ [防御力22耐久度40/40]

 マント なし

 リング 力のリング [筋力+1]

 リング なし

 イヤリング なし

 ネックレス 力のアミュレット [筋力+1]

 ファッションアバター1 海賊の眼帯

 ファッションアバター2 漆黒のガーターベルト

所持金 163,967G

貢献ポイント 5554P

所持アイテム

 キャンプセット

 ヒーリングポーション×20

 スタミナポーション×37

 解毒ポーション×10

 麻痺消し×10

 眠気覚まし×10



 今回筋力が上がったおかげで次の武器を作るときにはまた必要筋力を上げられそうだ。

攻撃力はかなり上がってきたと思うけどHPの伸び幅が本当に少ない。確か美羽のHPはもう1000を軽く超えてるって話だから俺はその半分もないことになる。

 それにしてもこのガーターベルトは実にいい買い物だった。

 タイツの部分がライトプレートブーツの膝当ての上まで伸びてその上端が繊細なレースでまとめられ、そこから腰プレートに向かってこれまた上品なレースをあしらった紐が伸びていて大変艶かしい。さすが有名ブランドのデザインだけはある。

 こんな装備の人が街中を歩いていたら思わず視線がその扇情的な太ももに釘付けとなることけ合い。

 まさに魔性の装身具と言えるだろう。


「自分の足を見て何をニヤニヤしているのよ……」


 顔を上げると姫が怪訝そうな表情でこちらを伺っていた。

 だって、男の子だもん。


「いやー、ヴァルキリーヘイムやってよかったなぁと思って」

「はぁ……あなたには恋愛VRシミュレーションの方がよかったんじゃないの?」


 恋愛VRシミュレーションとはヴァルキリーヘイムのようなRPGとは違い、恋愛を目的として仮想世界でアレコレすることができるゲームだ。実際にプレイヤー同士の恋愛はもちろんのこと、NPCとも恋愛することができる……らしい。

 有名なタイトルをあげるとすれば『レンアイマスター』、通称『コイマス』。

 噂によると好感度を上げるためのアイテムやNPCの衣装やグッズなどが馬鹿売れで尋常じゃないほどの売り上げを叩きだしているらしい。

 その影響を受けて風俗業界やキャバクラ業界が拠点を現実リアルから仮想《VR》へと移してきているほどだ。

 何と言っても仮想《VR》の利点はちょっとお金をかけるだけで顔もスタイルも声も自由自在に調整することができること。

 もし彼女に実は私ショタなのと告白されたところで、課金して体を小さくすればいいだけの話だから。

 現にそうやってショタハーレムを築いて、ハーレムが何人いるかを競い合っている女性たちもいる。

 逆に男がハーレムを築こうと思ったらとにかくお金がかかるものらしい。

 俺だってもちろん登録をしたことがある。でも…。


「アレは俺には無理ゲーでした……」


 難易度が悪夢ナイトメアなんてものじゃない。地獄ヘルモードもいいところだった。

 何て言うか俺が話しかけるとみんな困ったような顔をして後退あとじさっていくんだよな。

 あの優しくて愛嬌があってフレンドリーという公式設定がありつつも実は腹黒という初心者用NPC(通称クロビッチさん)でさえ…。


「あ…その…・・なんていうか…ごめんね……」

「ちょっ!姫までそんな困ったみたいな顔して謝らないで!」


 ト、トラ…ウマ…が……。


「このさい忍のコミュしょ…・・人見知りは置いておいて、ボスとの戦いで使ってたアレは何だったの?」


 今コミュ障って言いかけたよね?よね?


「うう、アレは…」


 俺は涙を飲みこみながらも答えた。

 『オーガパワー』により筋力を上げて、必要筋力の高いドラゴンデストロイに持ち替えたこと。『ダッシュ』のレベルを上げ続けると『ソニックドライブ』を覚えたことなどなど。


「なるほど、二人とうまくやっているみたいで安心したわ」

「ああ、これも姫たちの見立てのおかげだよ」

「そんなことはないわ。あなたの努力の結果なんだからもう少し自信を持ってもいいと思うわよ」

「そ、そうかな?」


 そう言われると、何か照れるな。


「とはいえ、さっきのオークションでの醜態を考えるとその努力を自分で潰しているようにしか見えないけど」

「返すことばもございまセン…」

「それじゃあ私と晶はこれからちょっと連合の方で話し合いがあるみたいだから、3人で観光でもしてくるといいわ」


 連合で話し合い?さっきの追跡者のことだろうか?


「それから夜はまたギルドで打ち上げよ」

「いよっしゃ!」


 そのまま姫に見送られ、ギルドホールの出口へと向かうと委員長たちが待ってくれていた。


「夜の打ち上げまでは自由時間だって」

「そうですか。それではさっそくクリスさんとジークさんに連絡を取って合流しましょう。二人ともさっきのログを見てニヴルヘイムまで観光に来ているかもしれません」

「そうだな。どうせ観光するなら大勢いたほうが面白そうだ」

「「……」」


 二人がポカーンとする。

 え?

 美羽がはぁ…と深いため息をつくと、顔を上げ、人差し指を立ててまるで子供に言い聞かせるかのように説明を始めた。


「あのでちゅね、お兄ちゃん。雪の地形から受けるペナルティーを何とかしないと戦いにならないんでちゅよ?そのためには職人の人の意見を聞くのが一番なんでちゅよ?」

「い、いや、当然分かってたよ?でも姫も観光してきたらいいって言うから…」

「はいはいそうでちゅね。忍ちゃんは何にも悪くないんでちゅよね~」

「待ってくれ!それは誤解だ!違うんだよ!違うと言っておろうに!」

「忍さん、言い訳する暇があったらジークさんに連絡入れてください。私はクリスさんに連絡しますから」

「う、うぅ」


 ダメだ。もう何を言っても無駄なんだ……。


「分かりました……」


 俺は諦めてシステムウィンドウを開き、フレンドリストを出してジークにれんら……あれ?



フレンドリスト

 クリス ―ログイン―

 セシリア ―ログイン―

 晶 ―ログイン―

 美月 ―ログイン―

 美羽 ―ログイン―



 ない……心友ジークの名前が…ない…だと…!

 そういえば今まで何か用事があったときも委員長が予定立てて気付いたときには全部連絡済だったから全然気付かなかった。

 ジークも何も言わなかったし……、もしかして俺って数多くいる客の一人でしかないとか?

 馬鹿な……ははっ…そんな…ばか……な……


「美羽さん、あの、代わりにお願いします……」

「ん?別にいいけど」


 真偽を確認するのが怖すぎる。うん、これは見なかったことにしよう。

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